先生の言葉 全集
25.番狂わせの予感
どうもどうも。皆さんこんにちは。そういえば久しぶりにお遭いしましたね。その後調子はいかがですか。
おや? 皆さん。以前お会いした時と、なんか少し顔つきが変わったように見受けられますね。大きな心境の変化でもあったんですか?
……ほう、あなた君主になられたんですか。それはめでたいですねぇ。え? あなたは侍に? なるほど。これから迷宮のさらに深層へと踏み込んでいくために、上級職の方を増やして万全の体制を整えてきたというわけですね。で、そちらの方が戦士になって、こちらのお二人がそれぞれ盗賊と司教になった? ……それは、いささかやりすぎなんじゃないでしょうかねぇ。
転職の仕方自体は、各々よく考えられているなぁと、僭越ながら思うんですよ。そしてもちろん、転職することそれ自体も悪くないことだと思います。さらに、転職後のパーティも戦君侍僧盗司。かなりバランス良いと思います。けれど、僧侶の方以外の5人が一気に転職しちゃって、ほんとに大丈夫なんですか?
いや、だってですよ。今は転職したてですから、皆さん確実に身体能力が低いでしょう? 魔法の使用回数もかなり少なくなっていると思いますよ? あと、加齢もしていると思いますが、元々皆さんお若かったのでそれはいいとして。まあ、HPは以前のままだと思いますが、パーティ全体の力が落ちている今の状況なら、上手く長期戦に持ち込めれば、私が皆さんの体力を削りきって勝利、なんてこともあるかもしれませんよ。
皆さんは、道場にでも来るつもりで気軽にこの場にいらっしゃったんでしょうが、私だってこれでも、最下層の玄室を守ることもあるモンスターなんです。あんまりなめてもらっては困りますからね。
さあ、久しぶりにやる気になってきました。これはいわゆる、ジャイアントキリングのチャンス到来といった所でしょうか。
いざ、尋常に勝負といきましょう!!
え? でも、別パーティが迷宮から拾ってきた、刃が回転する剣や侍専用の「ぶき」を大枚はたいて商店で買ってある? だから、パーティの力は確かに下がっているかもしれないけど、それでもたぶん攻撃が1、2回当たればやっつけられるはず? それに、元魔法使いが覚えているアンデッドを倒す魔法はまだ少しは使えるし、転職してない僧侶のディスペルも……。
そ、そうですよねぇ。そんなに上手くいくわけないですよねぇ。ええ。それじゃ、あまり痛くない程度によろしくお願いいたします。