先生の言葉 全集
22.テレポートの副作用
いやぁ皆さん、ほんとにラッキーですねぇ。この玄室を越えることができれば最後の通路に行くことができます。すなわち、あの魔術師の元へあと一戦でたどり着けるというわけですよ。
そしてその一戦の相手は私です。今日は師匠が不在ですので、この玄室を守っているのは本当に私だけです。私が言うのもなんですけど、これはもう絶好の機会なんじゃないですか? さあ、私との戦闘なんぞチャッチャと終わらせて、いざ最終決戦といきましょうよ!
なに、それどころじゃない? 皆さん、そんなに満身創痍でここにたどり着いたんですか? なになに……。玄室から次の通路へとテレポートして迷宮を進んでいくたびに、吐き気が止まらなくなっていくんだ、と。
なるほど、そういうことですか……。それはあれですね。きっと、乗り物酔いならぬテレポート酔いというやつでしょうね。おそらくは空間を転移する際の視覚の揺れが原因なんじゃないかと思いますよ。
ん? 原理はわかったから、解決方法を教えてくれ? うーん。そう言われてもここ10階なんで、私友好的じゃないんですよ。こうやって冒険者と話をしているだけでも魔術師に叱られてしまうかもしれない立場なんです。そういうことですので、今回は表立って助言はできません。ですが、戦いながら独り言を口走ることにします。ですから皆さんは私の独り言を良く聞いて、最後一回だけ我慢して10階入り口にテレポートして引き返し、準備を整えてまたいらっしゃってください。
それじゃ、戦闘を始めましょう。
まずですね、酔う原因は視覚の揺れなんでグワッ! テレポートする時にサングラスをかけると良いんじゃないかと思うんでガハッ! ……なに? そんなもんをかけていきなり敵に襲われたらたまったもんじゃない? そりゃもっともでドガッ!
それならば、たしか手首の内側を押すと良いという話を聞いたことがありまバキッ! ……え? 小手を装備しているからそんなところ頻繁に押せない? それもそうでズゴォ!
じゃあ、ウメボシとかいう食べ物を持ってくるというのはどうでしょボゴォッ! とても酸っぱい食べ物で、二日酔いにも効くという話ですから、きっと効き目がありまドゴォッ! レシピは多分、東洋の国の食べ物なので忍者や侍の方が詳しいと思いまズガン!
……とりあえず知り合いの忍者に話をしてみる? ええ、ぜひそうしてみてくださグフッ!
それじゃ、またのご来訪をお待ちしておりま……ガクリ。