先生の言葉 全集
19.力自慢の野望
こんにちは。ずいぶんマッチョな方ですね。一階とはいえ、ここまで一人で来ることができるのも頷けますよ。
悩んでいることがあるんですね。ええ、お伺いいたしますよ。どういったお悩みなんですか。
まず、この筋肉を見てほしい? も、もう嫌と言うほど見てますよ。もしかして筋肉がつきすぎて悩んでいるんですか? まあ、そんなことはありませんよね。
ふむ……。あぁ、なるほど。あなたは魔法使いなんですね。確かに魔法使いの方が筋骨隆々だと、少し違和感がありますね。でも、困ることばかりでもないでしょう。むしろ長所も多いんじゃないですか。例えば、構成員の生命力にもよりますが、パーティの中で最も体力が低いのは大体魔法使いのはずです。その魔法使いの方がマッチョならば、とりもなおさずパーティの体力の平均を押し上げることになると思いますよ。同様に、魔法使いに非常に重視される能力に素早さがあります。いわゆる、相手よりも速く魔法を唱える魔法合戦。それに勝った側が、その戦で有利になることは、あなたも魔法使いならば実感していると思います。これも筋肉(だけではありませんが)が重要なファクターになる能力です。ですから、そんなに悩むことなく……、え、そこじゃない? じゃあどういったことで困っているんですか。
あぁ、最奥の魔術師に次ぐあの大魔術師、いますねえ。彼がどうかしたんですか。彼と、どっちがよりマッチョな魔法使いかマッチョ対決をしたい? な、なんなんですかそのマッチョ対決ってのは。
どちらがよりマッチョかを決めるために、筋トレで対決するんですか?
まあ、確かにあの方は魔法使いの癖に熱心に体を鍛えていますから、下手な盗賊や忍者より体力はありますけれども……。
だから、10階のモンスターにも顔が利く私に、まず始めに間を取り持ってくれと。
うーん。正直、私たちは敵味方の間柄なんですから、このような方法でなく、普通に戦って決着をつけたほうが良い気がするんですけどねぇ。
えーと、どうしましょうか。
ええい。わかりました。ちょっと面白そうでもあるんで、一肌脱ぎましょう。でも、私ができるのは、あの大魔術師と会わせるだけですからね。交渉その他諸々はご自身でお願いしますよ。では、シュートの出口。10階のあの長ったらしいメッセージのとこまで来てください。あそこなら、仮に何かあっても、すぐお城に帰れますから。
はい、お願いいたします。お待ちしております。