先生の言葉 全集
11.ふくよかな憂鬱
おや、大きな方々が続々と。どうもどうも。しかし皆さん、すごい恰幅の良さですね。力士もかくやというくらいの立派な体躯ですよ。
ん? そのおかげで今困っているんだ? ふむふむ。生存者が女性一人の遭難パーティを助けに行ったら、キモいから別の人をよこしてくれって言われて……。
せっかく助けに行ったのに、そんな言い草をされるなんてひどい話ですね。遭難パーティの救出はかなり大変なんですが、その辺、分かっているんでしょうか。はっきり言ってしまえば、その女性ちょっとどうかと思うんですけど、そんなこと言ってる場合じゃありませんよね。早く別の方に救出をお願いしましょう、って別の人にお願いできないんですか? そりゃ、困りましたね……。だから、手っ取り早く彼女が俺達を不快に思わなくなる方法はないだろうか……ですか。
もう救出者を嫌がる遭難者なんて見放せばいいと思いますが、それは私が腐ってもモンスターの立場だから思うんでしょうかね……。うーん。やっぱり、体の大きい方ってのは、どうしてもたくさん汗をかくというイメージがあるんじゃないでしょうか。実際皆さんも、かなり今汗かいているようですし。最近はスメハラなんて言葉もありますから、皆さんも多かれ少なかれデオドラントには気を使っていると思います。ですが、ここは一つ思い切った改革をする必要があるように思えるんですよ。
実は、この迷宮の深部では氷でできた鎖帷子が手に入るらしいです。極まれにですけど。この鎖帷子なら暑がりの方も、常に涼しく過ごすことができるそうです。今身に付けている鎧よりも防御は手薄になりますが、清潔感が出ますし、汗臭いイメージも減ると思いますので、ぜひこれを着て再び彼女の所に行ってはいかがでしょうか? その鎖帷子ならお店に在庫がある? ああ、なら時間もかかりませんね。
ところで、その方はそんなにも助けないといけない女性なんですか? お話を聞いているだけだと、めんどくさい女としか……ってこれはさすがに言い過ぎですね。え? 実は某国の姫が退屈しのぎで冒険に参加して、従者に戦闘任せっきりで遭難した?なので、多額の懸賞金がかけられている?
……なるほど、そういうことですか。そりゃ他人には救出任せられませんし、汗臭そうってだけで賞金ふいにはできませんよね。それなら、ぜひ頑張って下さい。他言はしませんからね。
まあ、でもやっぱり私にはめんどくさいお姫様としか思えませんけどね。