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先生の言葉 全集

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7.吸われたいの



 どうも、こんにち……うわぁ! ちょ、ちょっとなんですか。いきなり抱きつかないで下さい。あの、この方なんなんですか? なんか耳元で「吸ってぇ、めちゃめちゃに吸ってぇ」って色っぽい声で囁いてくるんですけど。

 はぁ? こないだ一度ドレイン攻撃を受けたら、どうやらクセになっちゃったらしい?

 いやでも、そんな人いるんですか? 目の前にいるだろうって、まあそうですけど……。

 それ以来、不死族に出遭うと自分から絡み付いて、噛みつかれるのをねだる様になっちゃったと……。うーん。すっかり相好が変わってしまったので全然気がつきませんでしたが、よく見たらあのとても凛々しかった尼僧の方ですよね? ちょっと、私はドレインできないのでいい加減離れてください。ドレインできていたらこんなカモにされていませんよ、全くもう。

 え? 最近は、最奥の吸血鬼の王に吸われたくて勝手に最下層の奥を目指して潜っていっちゃうんですか?

 そりゃ、危険な事この上ありませんね。パーティのみなさんの命がいくつあっても足りません。……そうですね。どうしようって言われましても。折角相談していただいたのに申し訳ないのですが、さすがにこんな症状は始めてみるので、私もどうしたらいいのかわかりません。

 あぁ、なるほど。直らないならいっそ本人の希望通り、吸血鬼の王に思う存分吸い尽くしてもらって手向けにしてあげようと……。

 ふぅむ。もしかしたらそうしてあげる方が、彼女も本望かもしれませんね。かなり残酷ではありますけれども。……いやまあ、吸血鬼の王とは懇意ですし、会うこともわりとありますよ。でも、彼はなかなか迷宮の上層には来てくれないと思います。ですから、ここは皆さん力を合わせて、彼女を最深部まで連れて行ってあげてください。それだけの経験を積めば、彼女亡き後も冒険を続けていくあなた方の糧になりますし、彼女も得た経験の分だけ、甘美な時間を長く味わう事ができるわけですから。

 ……おや、どうしました。なんかいきなり顔つきが変わりましたね。

 はい? そういう事なら、私は吸血鬼の王様に吸われるその瞬間を、永遠に感じられるほどたくさん経験を溜めることにしよう? その手始めにまず、このドレインもできない木偶の坊を血祭りに上げてやろうって?

 ……まあ、冒険者の経験になるのは仕方がないですし、理由はどうあれ貴女がシャキッとしたのは良い事ですが、ちょっと木偶の坊は言い過ぎなんじゃないですかねぇ。


作品名:先生の言葉 全集 作家名:六色塔