先生の言葉 全集
4.青ざめた悪魔
では、師匠。行きましょうか。
ちょっ、何ですか。服を引っ張らないで下さい。ただでさえボロなんですから。
え、相談がある?
そんな事言われても、これから私、道化師の師匠と玄室を守りに行くんです。それが終わってからでも良いですかね。
どうしても今が良い?
うーん。じゃあなるべく早くして下さいね。というか、あなたいったい誰ですか。暗くて見えないし、話もしづらいんでこっち来て下さい。……驚きました。青い悪魔の方じゃないですか。あなたが私に相談なんてあるんですか?
「戦うのが怖い」って、あなた何を言っているんですか。
並みの剣を通さぬ皮膚を持ち、高確率で魔法を打ち消して、毒と麻痺の爪を振るい、冷気の魔法を操るあなたがそんなんだったら、大半のモンスターが戦うのが怖くなってしまいますよ。
最近、それが通用しない? 気が付くと魔法を唱えても何も起こらなくなってて。爪を振るおうにも敵は防御を固めてる。仕方がないので仲間を呼ぶと、相手がニヤニヤしながら、呼んだ仲間を殺してく?
うーん。それは、前衛に君主が居るパーティですか? はいはい。あー、メンバーの特徴的にもあのパーティでしょうね。それは、多分経験を犠牲にする事で唱えられる魔法を使っているんでしょう。あの魔法は最後の手段のような存在ですが、あなたがたを仕留めたら得られる物が大きいですから、リスクを承知で唱えてくる者が居てもおかしくありません。しかし、理由がわかっても対処するのは難しいですねえ。どうしたら良いでしょう……。あ、そうだ。最下層ではなく、一つ上の階に居れば良いかもしれませんね。あなたを容赦なく狩るような冒険者なら、最下層にしか興味はないでしょうし。
9階でも出遭う可能性は0じゃないだろ?
そういう時は、友好的になってやりすごせば良いんですよ。ずっと最下層にいると知らないかもしれませんが、最下層以外ならば、魔術師の眼も届かないので、少しは冒険者と馴れ合うことも可能なんです。あのパーティ、君主が居るくらいですし、他にも善の人員が多かったはずですから、きっと立ち去ってくれると思いますよ。「チャンスを逃したな」って舌打ちしながらね。
というわけで、ほとぼりが冷めるまで、赤い悪魔の方や土の巨人辺りと仲良くしてくると良いかもしれませんね。しかし、悪魔とはいえ生命を嬉々として屠る輩が善だというのなら、善悪ってのは一体なんなんでしょうかね。
あ、師匠待ってくださーい。