先生の言葉 全集
59.お誘い
おやおや、皆さんおそろいでどうしたんですか。
えっ、あの司教のおじいさん、冒険者をやめることになったんですか。ここの最年長の冒険者で、お金の管理と鑑定を専門としていた方ですよね。何かあったんですか。
はあ。さすがにもう年なんで、隠居をすることになったんですね。それは残念です。私はそれほどお会いすることはありませんでしたが、名物冒険者の方でしたから、これからは寂しくなりますね。
で、冒険者のみんなでお金を持ち寄って、盛大にお別れ会をやろうってことになったんですか。確かあのおじいさん、どんなものでも鑑定してくれるんで、商店の主がずいぶん目の敵にしていましたよね。おかげでずいぶんお財布が潤った冒険者もいたと思いますよ。既にリボンを持っているのにセンターを行き来するパーティもいたなんて話も聞きますし、ここで少しぐらい還元してもバチは当たらないでしょうね。
え? そのお別れ会の会場がここ? いやいや、なんでですか。1階とは言え、危険な迷宮でやる必要はどこにもないでしょう。何?、どうせなら、みんなの話が弾む思い出の場所でやりたいし、もう一人、ついでと言っちゃ何だが、労をねぎらってやりたいやつがいる? 他でもない、あんただ?
……いや、あの、お気持ちはとてもうれしいんですが、一応、私、モンスターでして。皆さんと敵対する立場なんです。そりゃあ、基本的に友好的なんで、雑談ついでに相談にのることもありますし、皆さんの糧になっていることも分かってます。また、感謝してくれるのもすごくうれしいです。ですが、労をねぎらわれるようなことは何もしていないんです。あくまで敵である皆さんを倒すためにここにいるんです。
それに私、ゴーストですから飲酒も飲食もしないんですよ。そんなやつがお酒の席にいたらつまらないでしょう。皆さん、街に行きつけの酒場があるじゃないですか。今からでも、そこでやったほうがいいと思います。
って、よく見たら酒場のマスターもいるじゃないですか。マスター、今、後ろに置いた大きなたる、それ、お酒ですよね。もう完全にここでやる気じゃないですか。何? お代はもうもらってるから、幽霊さんも存分にやってくれ? ですから、私は飲めないんですってば。
ああ、司教のおじいさんもやって来てしまいました。これはもう止められません。仕方ない、私もお別れはしたいので、今回は開催を許可しますが、今後は事前に言ってからにしてくださいね。