先生の言葉 全集
55.擬態
どうも、ごぶさたしてました。
久しぶりに会いたくなったので、お伺いしました。お元気でしたか。いつものように柱の上にいるところを見ると、相変わらずのようですね。やっぱり元気が一番です。
そういえば、聞きましたよ。先日、冒険者をうまく追い払ったって。リボンを手に意気揚々と下階へ臨む彼らを、お得意の魔法無効化でさんざん手を焼かせて、仕方なく撤退させたらしいじゃないですか。彼ら、あまりにも悔しかったらしくて、私でもう一回修行していくなんて言っていました。まあ、私は案の定、そこでこてんぱんにされてしまいましたがね。うらやましいです。私もあなたがたのように、仕事ができるようになりたいです。
それと、少し前にも、モンスター配備センターのところで待ち構えて、大戦果を上げたらしいじゃないですか。こちらも、お得意の奇襲攻撃と魔法無効化で冒険者を悩ませて、彼らのレベル5の魔法使い呪文を尽きさせ、センターへの侵入をあきらめさせたって、近くで見ていたニンジャさんが話していましたよ。
最近、連戦連勝じゃないですか。やはり勝利のコツは、その彫像への擬態からの奇襲攻撃ですか? それとも高い魔法無効化能力ですか? 私も魔法無効化なら結構できるんですけどね。そもそも魔法を使う必要があまりないんですよね、私の場合、悲しいことに。
……そろそろもったいぶってないで、勝利のコツを教えてくださいよ。ずっと黙りっぱなしで、私だけがしゃべっている状態じゃありませんか。あ、もしかして照れているんですか? いいじゃないですか、この世知辛い迷宮で、たまには仲間を褒めることがあったって。さあ、久しぶりに会ったことですし、旧交を温めながら、その強さのコツを存分に教えてくださいよ。味方の私にも教えてくれないだなんて、そんなケチくさいことは言いませんよね? ガーゴイルさん。
……ねえ。そろそろ、何か言ってくれてもいいんじゃないですか。ここまで来て黙ってるのは、さすがに水臭いですよ。もしかして、最近調子がいいんでお高く止まってしまったんですか。ああ、おまえとはもう格が違うと言いたいんですね。おまえは冒険者のカモだから、もう話をする価値もないということですか。
……はい? なんで、ただの彫像に話しかけてるんだって? あれ、ガーゴイルさん。え? ってことは、あれは? ああ、あれは、本物の彫像ですか。
はあ、こんなぼんくらだから、冒険者にカモにされるんだろなあ……。