先生の言葉 全集
53.Show
おや、皆さん、どうもどうも。先日は10階の玄室でお会いしましたね。いやいや、あのときは素晴らしい戦いぶりでした。でも、やっぱりうちの師匠のほうがほんの少し上手でしたね。ブレスと全ての状態異常が付いた攻撃で、どうにか皆さんを、追っ払うことができてよかったです。
え? 聞きたいことがある? 必勝法とかは教えてあげられませんけど、それ以外なら、どんなことでもいいですよ。どのようなことでしょうか。
はい? あのとき、私が複数体いたのは、いったいどういう原理なんだって?
ああ、そのことですか。確かにまあ、10階などでは、師匠のお供のときとか、複数で皆さんの前に現れることがありますけども……。
あれ、白状してしまうとただの分身の術なんですよ。道化師の師匠が戦闘の前、私に唱えてくれるんです。あの魔法は魔法使いや僧侶の方がどんなにレベルを上げても覚えられないんです。忍者と道化師の両方の職を極めたものでないと、習得はできないなんて言っていました。まあ、師匠はそれ以前に正体不明ですし、道化師だけあってホラ吹きなので、あんまり当てにはできませんけどもね。
え、そうならば、お供の幽霊ではなく、自分をたくさん分身させたほうが恐ろしいんじゃないかって? ええ。実はそこが、師匠が大変こだわっているところなんです。あの方は、戦闘をショーのようなものだと考えていて、主演は自分一人だけでいいという考え方の持ち主なんですよ。だから、日によって私を分身させたり、状況次第では、私を連れて行かなかったりするんです。そのような考え方なので、あの方は絶対に自分は分身しないんです。いうなれば私は、師匠のショーのバックダンサーみたいなものですね。まあ、すぐやられてしまうので、バックダンサーの価値があるかどうか疑わしい気もしますけれど。
ええ。それも、その通りです。冒険者の皆さんは、本物の私を探し当てるのが下手なので、いきなり私本体にとどめを刺して、分身が全部消え去ってしまうってことはまずありませんね。私もこう見えて、道化師の端くれでございますからね。
あ、でもこの話、一応、内緒にしておいてください。師匠は謎の多いキャラで売っているので、あんまり冒険者のかたがたに情報を与えたくないんですよ。よろしくお願いしますね。
って、何ニヤニヤしてるんですか。あっ、負けたからって、今の話、バラそうとしてるんですね。ほんと、そういうのはやめてくださいよ。全く。