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先生の言葉 全集

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49.意味のない部屋



 おや、どうも。こんにちは。

 皆さんは、先日、4階のモンスター配備センターに向かうと言っていた方々でしたね。無事に生きて帰ってこられたところを見ると、順当にリボンを手にしてきた、というところですか。まずは、おめでとうござ、えっ、違う? わけがあって、引き返してきた? ははあ、怖気づいてしまったんですね。でもまあ、気持ちは分かりますよ。では、またここでしっかりと訓練して、十分、自信をつけて望んでくださいな。いや、それも違う? どうしても分からないものがあったので、みんなで考え込んでしまったから戻ってきた? うーん。そんなところ、ありましたっけ? 道もそんなに複雑では、ないのですが……。

 え? 何ですか? 宝物庫? ああ、確かセンターの近くにありましたね。あの宝物庫がどうかしたというのですか。ええ。そうですね、入ってももう何もないでしょうね。私たちモンスターが、お宝は全て運び去った後ですから。
 確かにあそこの部屋は、かつて私たちモンスターが、宝物庫として使用していました。しかし、狂王があそこにセンターを開設する際に、邪魔になるということで無理やり撤去させられてしまったんですよ。でも、撤去こそさせられましたが「宝物庫」の看板は残りました。その理由は、少しでも冒険者が寄り道をしそうな場所を作って、センターでの試練を困難にさせてやろうという狂王の判断なんです。
 実際の話、4階から先は、強さだけで切り抜けられる場所ではありません。居場所を分からなくさせたりする卑劣なトラップや、強大な敵がたくさん出現するのですから。ですから、宝物庫の看板の誘惑を退けるのも狂王の試練の一つなんです。

 あなた方が念のため引き返してきたのは、ある意味正解と言えるでしょう。何もない宝物庫の存在を考えながら、あるいは宝物庫の中身を気にしながら戦いに挑んだら、あっという間に死体になっていたことでしょうからね。でもあなた方はもう、宝物庫の中に何もないことを知り、さらに宝物庫自体に意味がないということを知りました。疑念が晴れてスッキリした今なら、今度こそセンターの試練に立ち向かえるはずです。宿屋で体調を整えるなどして仕切り直して、次こそは頑張って挑んできてください。

 いや、念のためもうちょっと訓練していきたい?

 ……やっぱり怖気づいていたんですね。でもその慎重さこそ、この迷宮で生き抜くのに必要な能力だと思いますよ。じゃ、訓練を始めましょうか。


作品名:先生の言葉 全集 作家名:六色塔