先生の言葉 全集
48.情報屋の話
少し前、1人の悪の魔法使いがいたそうです。
その魔法使いの性格の悪さは筋金入りで、悪の者もパーティに加えるのを嫌がるほどでした。しかし実力は確かだったので、仕方なく、ある善のパーティが仲間に加えていたそうです。
ある日、そのパーティが、主戦場である10階に向かうときのことでした。1階の通路で、2匹のバブリースライムがその行く手をふさいだのです。
そのパーティの大半は善の者な上、10階で戦えるようなパーティです。ここでスライム2匹をやっつける意味はありません。さらに、殺すのはかわいそうだという意見も出始めます。それならば、逃げようかという話になり、それで意見がまとまりかけました。
そのときです。件の魔法使いが反対します。彼は舌なめずりをして言うのです。
「弱さは罪だ。弱きものは死ぬべきだ」
結局魔法使いの意見が通り、彼はその2匹のスライムを惨たらしく、いじめ殺してしまったそうです。
それからしばらくして。待ち合わせのため、迷宮の入口近くにいたその魔法使いは、突然バブリースライムに襲われました。
「ふん。雑魚がいくらかかってきても無駄だ」
彼は低レベルの魔法でスライムどもを焼き払っていきます。しかし、奇妙なことにその日に限って、やけにたくさんスライムがやってくるのです。
「…………」
魔法使いは、魔法を駆使してスライムどもをやっつけていきます。しかし、倒しても倒しても、まだまだ数え切れぬほどやってくるのです。
魔法は唱えられる回数に限りがあります。どんなに偉大な魔法使いだろうと、永遠に魔法を撃つことはできません。もちろん彼にも、魔法が尽きる瞬間がやってきます。しかし、それでもスライムが尽きる気配は全くしないのです。
「……何なんだ、おまえら」
魔法が尽きた彼は仕方なく、つえで殴り始めます。しかし、この大群の前では焼け石に水です。
味方がたどり着いた頃には、魔法使いは大量のスライムによって体を溶かされ無残な姿となり、もはや蘇生することもできなかったそうです。
……なるほど。貴重なお話、ありがとうございました。やっぱりスライムだからって、ばかにしてはいけませんよね。それぐらいの大群ならば、私も今までカモにされた皆さんに、報復できるかもしれませんね。でも基本、1体だけでしか出現できないんですよねぇ。
今日はこの話でおしまいですかね。ええ、新しい話を仕入れたらまた来る? ありがたいです、ぜひよろしくお願いいたします。