先生の言葉 全集
33.武器の意味
魔法使いの方が、折り入って相談があるですって?
ええ、私でよければ何なりとご相談ください。ええ、はい。大して意味がないのに、われわれ魔法使いが、杖や短刀を持つ意味はあるのだろうか、ということですか……。確かに、難しいところですねえ。後衛の装備をどうするかは、パーティによってさまざまですしね。
ただまあ、どのパーティでもまず、前衛の装備を優先することが基本でしょう。そして次に、たまに前に出ることもある僧侶や盗賊の装備を増やしていって。どうしても魔法使いは、最後にならざるを得ませんねえ。しかもその装備も、杖か短刀にローブときたら、全裸でいいんじゃないのっていう意見が出るのも仕方ないのかもしれません。開き直っちゃってるパーティなんかは、後衛3人とも全裸で歩いていたりしますしね。そういう意味では、持たない、という選択肢もありなのかもしれませんね。
それでは、魔法使いであるあなたにお伺いします。正直に答えてほしいのですが、何にも持たずにこの危険な迷宮に入りたいと思いますか?たとえ、前衛のかたがたが攻撃を受けてくれるとしてもです。……考え込んでますね。いくらあなたが魔法を専門としていても、少しは不安があるんじゃないかと思います。この迷宮には、私のような気の小さいモンスターばかりじゃありません。獰猛、狡猾、残忍な魔物どもがうようよいますからね。そんなモンスターたちに、前衛が皆、倒されてしまった。あなたが頼みとする魔法も、もう回数が尽きている。行き着く先は同じ死だとしても、やはり武器を持っていたほうが、気持ちは違うのではないでしょうか。
それだけではありません。杖や短刀には、魔力が施されているものもあって、使用することで特定の魔法の効果を現すものがあります。これは、上記のようなピンチのときの切り札になり得ます。まあ普段、先制攻撃などのときに、戦いを優位にするのに使うものですがね。
それと……、これからが本題なのですが。あなた、「もっとたくさんアイテムを持ち帰りたいから杖を手放せ」なんて他の5人から言われたんじゃないですか? ……どうせ、そんなことだと思いました。そういうことならば、答えはあなたの胸先三寸でいいんです。得物を持たなくともいいくらい、彼らを信頼しているのであれば、持たなくていい。いざというとき、あいつら信用ならないなと思うのなら、護身用に持っておけばいい。
それだけのことなんですよ。