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遊戯王 希望が人の形をしてやって来る

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…結局僕自身が、フェイカーとの友情を、家族の愛を信じられなくなったっていうのにね。
悔恨と共に、静かにトロンはため息をつく。

「でもトーマスは僕の教えたその言葉を、信じた。
なのに、僕はあの子のそんな想いを踏みにじって、信じないって言ったんだよ?
WDCのあの時だ。そうアストラル、君も聞いていただろう。
あの子が僕を心の底から裏切れない事実に胡坐をかいて、無意識に特にきつく当たっていた事に後から気付いたよ。」

瞑目するトロンのまぶたの裏には、過去の己と息子の姿が映っているのだろう。
苦しくて堪らないという表情と共に、言葉をようよう吐き出す。
「こんな酷い父親を、あの子は姿すら変わっても心の底で信じ続けてくれた。」

赦されたように、深く、深く、息をつく。
「そして、今度は敵になって姿も変わった凌牙を信じ続けて、立ち向かったね。
そんなトーマスを、クリスもミハエルも信じて、そして遊馬に全てを託して戦った。
息子たちは僕なんかよりずっと信じる意味を知ってる。
まったく、ほんとうに自慢の息子達だよ。愛している。もちろん、3人とも同じくらいね。
僕はもう、息子たちの幸せを祈らずにはいられない。祈らずには、いられないんだよ。」

トロンは歩み始める。
「ミハエルとクリスの話ももっとあるんだ、ああ、伝え足りないな。ミハエルが4つの時に描いてくれた絵の話とか、クリスが昔父の日にくれた贈り物の話とか、話したい事が山ほどあるんだ。けれど、そうだね。そろそろ時間だ。
続きは、そうだな、再び会うことがあったら聞いてくれないかい?」
「ああ。ぜひ聞かせてくれ。」
「ふふ。やっとテンプレじゃない言葉が聴けたね。」
そうしてトロンは、まるで愛しい家族のお茶会を楽しみに部屋を出るような、あふれる幸福を抱えた足取りで、橋の向こうへ消えて行った。