遊戯王 希望が人の形をしてやって来る
天城カイトの章
のちにアストラルはごちる。
「Vの注文が一番難しかった。まったく『弟達の幸福』と簡単に言ってくれたが、その実Ⅲの望みもⅣの望みも叶えた上でカイトの安全の保障をしろというのだからたまったものではない。
Ⅲの望みもⅣの望みも、僅かなズレで叶わない可能性がいくらでもあった。それでは全てが無駄になってしまう。
トロンに至っては息子全員と来た。もはや論外だ。しかも彼に関してはそれが解った上で言っているのだからもうどうしようもなかった。本当に神経を使ったんだ、少しぐらい愚痴らせてくれ。
…しかし、彼らの願いがあったから、全ては叶えられた。Ⅳはシャークを引き留め、Ⅲは遊馬の幸せを願い、Vがカイトを呼び戻し。その全てに、トロンの願いが力を貸した。
とても、とても素晴らしいことだ。それがなければ、特にカイトは帰って来れなかった。」
「そもそもカイトを単純に蘇らせるのは不可能だった。彼はデュエルによって吸収されたのではなく、宇宙空間でスーツが破損したことによる本当の死亡だったのだから。
カイトにだけは『橋』を架ける事が不可能だった。」
「だが、一つだけ抜け道があった。オービタル7が積んでいたバリアライトだ。」
──────『オイラハ カイト様 ガ ハルト様の前デ 微笑マレル未来を 所望するでアリマス!』
「オービタル7もまた、『バリアンの力を持つもの』。そういう抜け道だ。
その願いによって、オービタル7はカイトの生命維持を残せるギリギリのエネルギーと破損状況を手に入れて現世に帰った。
ゆえにカイトは生き残り、救援の宇宙艇で仮死状態からかろうじて息を吹き返した。」
「Ⅲ、Ⅳ、Ⅴの3人は、本来ならヌメロンコード無しでも現世に帰れたのだ。
それを巻き込み、危険に晒してまで範囲を拡大しなければならなかったのは、カイトの帰還にオービタル7がどうしても必要だったからだ。
デュエル以外の要因の死者を蘇らせるのは不可能だった。
けれども、オービタル7が生存を願い、Vが帰還を願い、ミザエルが復帰を願ったことによって、カイトを蘇らせるのではなく命を繋ぐ道が創り出された。」
ミザエル、クリス、オービタル。3人の願いが、カイトの命を繋いだ。
今のカイトの命は、3人の命をかけた願いで出来ている。
作品名:遊戯王 希望が人の形をしてやって来る 作家名:ふれれら