二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

セブンスドラゴン2020 episode GAD

INDEX|10ページ/15ページ|

次のページ前のページ
 

 ドラゴンは体を麻痺させ、その場に崩れ落ちた。
 リアンの攻撃はまだ終わらない。再びマナを変換し、今度は溶解毒をナイフに纏わせ、ドラゴンの首をかっ切った。
「これは隠し味だよ」
 神経毒によって動きを封じられ、溶解毒で深傷を負ったドラゴンは、そのまま生命活動を停止した。
「倒し、たの……?」
 シュウは、リアンのあまりの速業に唖然とするしかなかった。
「こいつァ……さすがのオレでも予想できなかったぜ。リアン、お前やっぱりトンでもねェ力持ってたんだな!」
「リアン、そんな力があるなら、どうしてさっきの戦いで出さなかったの?」
 シュウがそう思うのも無理はなかった。リアンは、明らかにマーダーベアーよりも強いと思われるドラゴンを、たった二回の攻撃で倒してしまった。
 マーダーベアーとの戦いで苦戦しているように見えたのは、何故だったのかと不思議に思ってしまったのだ。
「あー、えっとね……」
 リアンは、さすがに本気を出しすぎたと後悔した。先の戦いでは、シュウが本当に戦う力があるのかどうかを見定めようとわざと立ち回っていた。
「なァリアン、お前ひょっとして、こいつとの戦いを見越してたのか?」
「えっ!?」
 リアンは、ガトウのふとした言葉に驚き、ガトウを見た。
 ガトウはリアンに、ウィンクを送っていた。どうやら助け舟を出してくれるようだった。
「そ、そうだよ! 実はその通りなんだよ。あの力を使うのは結構消耗しちゃうからね! さすがガトウさん、よく分かったね!」
 異能力を使うのに、マナを消費するのは確かであり、リアンの言葉は全てが嘘というわけではなかったが、どうにか口裏合わせすることができた。
「なるほどな。やっぱり思った通りだったぜ! リアン、お前も力を持ってたんだな、ガハハ!」
 事情を知るガトウは、シュウをあざむくため、リアンと共に口裏を合わせるが、シュウはかえって怪しく感じてしまった。
 騙されている、という気はなかったが、何やら二人で何か企んでいるのではないかと思ったのだった。
 シュウがその事について問いかけようとした途端、部屋のドアが開けられた。
「おいナガレ、誰も入れるなっつったろ? ってなんだ、トウジじゃねェか」
 ナガレと共に部屋にやって来たのはトウジだった。
「このマモノは……」
 トウジは、リアンによって倒されたドラゴンの死骸に目をやった。
「ドラゴン……?」
 トウジの心の中にもやはり、この生物の名前らしきものが浮かんだ。
 何故か、ずっと昔からこれの存在を知っているような、不可解な感じがしたものの、トウジはそれを振り払う。
「そんなことよりガトウ、緊急事態だ。本部が観測したのだが、この都庁を中心にマモノと思しき敵対反応があったそうだ。それも数が非常に多い、試験の続行は危険だ」
 都庁三階に咲き出した謎の花も、今や都庁の外にも突如として発生していた。
 謎の花は、リアンの言っていた通りに強い毒性を持っており、自衛隊の隊員が数多く体調に異変を来していた。
 トウジが要請した救護班がなかなか到着しなかったのは、そのためであった。
「もう一つ異常事態がある。都庁周辺を哨戒していた隊員が、何者かによって気絶させられていたらしい。侵入者がいる可能性がある」
 その侵入者によって、このような事態が引き起こされているのか、因果関係は定かではないものの、ムラクモ機関の機密が暴かれる危険があった。
「なんだって! それは本当かトウジ!? うーん、こいつァ、いよいよキナ臭さが増してきやがったな……」
 トウジの報告を受け、ガトウはすぐに決断する。
「シュウ、リアン、お前らはトウジと一緒に屋上にいる奴らを連れてきてくれ! ナガレ、オレらはこいつらの退路を確保するぞ!」
「了解です、ガトウさん!」
 ナガレは応じる。
「待てガトウ、候補者を呼びに行くのに、何故二人も連れていく必要がある?」
「そのマモノ、ドラゴンとかいったか? 二人、特にもリアンはそいつを倒す力がある。なんかあっても切り抜けられるだろうさ。早く行け、この先のエレベーターから直通で屋上まで行ける!」
「なに、本宮が……?」
「鴫原君、急ごう! 大変なことになってるんでしょ? 助けに行かなきゃ!」
 シュウは、先に駆け出してしまった。
「シュウちゃん、待って!」
 リアンも後に続いていった。
「待て! 勝手に動くな!」
 トウジは制止するものの、無駄であった。
「トウジ、お前も早く行きな! 作戦はもう始まってんだからな!」
「ちっ……!」
 仕方なくトウジも後を追う。
「行ったか、よし、オレらも作戦開始だ!」
 三人が屋上へと向かうのを確認し、ガトウはナガレと共に、階下へと向かった。
 ガトウは、この時既にこれから引き起こされる災いの予感を感じていた。
 都庁周辺のみならず東京、ひいては世界にも及ぶ危機が迫っている。そんな予感がしていた。
 都庁の屋上は、阿鼻叫喚の地獄と化していた。
 一匹のドラゴンによって、候補者はほぼ全滅していた。
「う、うわあああ!」
 かろうじて生き残った者がいたが、恐怖に気が狂い、ドラゴンに向かって銃を乱射した。
 単なる弾丸がドラゴンに通用するはずもなく、頑丈な鱗によって弾かれてしまう。
 ドラゴンにとっては、虫が止まる程度の刺激であったが、攻撃してきた者を捉えた。
「あ、あああ……!」
 生き残りは、既に銃弾の無くなった銃をカチャカチャ鳴らすしかできなかった。
 そして生き残りは、ドラゴンの牙によって首を引き裂かれた。
 やがて、シュウたちが屋上にたどり着いた。
「これは……!」
 トウジは、顔をしかめる。
「……遅かったか」
「ひっ!? いやっ!」
 シュウは戦慄し、その場に崩れ、頭を抱えてしまった。
 ドラゴンによって作り出された惨状は、とてもこの世のものとは思えなかった。
 ドラゴンの周辺には、たくさんの屍が転がっている。
 原型を止めている死体は少なく、そのどれもが四肢を欠損している。首と体が離れている死体もあり、首が体から数メートル離れた所に転がっている。
 臓腑を撒き散らされた死体が多く、辺りは鼻を刺すほどの血の匂いが広がっていた。
 いくらマモノやドラゴンと戦える力を持っているシュウであっても、この惨状を目の前にして、平静を保っていられる心は持ち合わせていなかったのだ。
ーー四季……やはりそうなるかーー
 戦いの世界に身を置いてきたトウジは、死屍累々の惨状を前にしても落ち着いていられたが、それでも若干の震えを感じていた。
 この状況下で全く心を乱していないのは、やはりというべきか、リアンであった。
「シュウちゃんは……しょうがないね。トウジくんは戦える?」
「侮るな。お前ほどではないが、人死にには慣れている」
「そう、それならよかったよ。あのドラゴン、さっき戦ったのに比べると強そうだよ?」
「余裕だな、ふん、職業柄と言ったところか」
「失礼な! わたしは人の体をぐちゃぐちゃにする趣味はないよ!」
「し、職業柄? 人の体をぐちゃぐちゃ……!? な、何を言って……」
 シュウは戦慄していたが、まだ二人の会話を聞き取る余裕があった。
「話は後だ、来るぞ!」