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セブンスドラゴン2020 episode GAD

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「バカな、これほどとは……!? うおおお……!」
「わあああ!」
 大火球は爆発し、トウジとリアンは吹き飛ばされた。
「ぐ……かはっ!」
 二人は命に別状は無かったものの、受けたダメージは大きかった。
 まだ二人に息があるのを知ってか、深紅のドラゴンは再び口を開き、火球を作り始めた。
「……し、四季……!」
 トウジは、ずっと後ろで震えていたであろうシュウに向けて声を振り絞る。
「お前……だけでも……身を、隠せ……! ここで、全滅するわけには……いかん……!」
 唯一の退路であった屋上の入り口には、例の毒花がびっしりと咲いており、越えていくことなどできそうもなかった。
 故にトウジは、シュウに隠れてもらい、自らを囮とする事で、彼女だけでもこの場から生き延びさせようとした。
「四、季……?」
 しかしシュウは、トウジの意図と反する動きを見せる。
 シュウは、腰を抜かしていたはずだったが、すっと立ち上がり、刀を抜いていた。そして一歩、また一歩と深紅のドラゴンに向けて歩みを進める。
「シュウ、ちゃん……?」
 リアンは、シュウの姿を見て驚いた。
 異能力の根源たるマナを溢れさせ、全身を青白いオーラで包み込んでいる。抜いた刀は構えることなくだらりと持ち、俯き気味で表情が窺えない。
 深紅のドラゴンは、向かってくる謎の力を持つ人間に戸惑いを覚えたのか、しばらくの間ただ静観しているだけであったが、やがてしびれを切らし、口を開けて火球を作り始めた。
 ドラゴンが攻撃しようとしているというのに、シュウは歩みを止めない。
ーーバカな、死ぬつもりか!?ーー
 トウジは、シュウを制止すべく声を上げようとするが、全身の痛みにむせる事しかできなかった。
 火球を作るのを見せても歩み続ける相手を見て、深紅のドラゴンも焦りを見せたのか、先にトウジたちを吹き飛ばした火球よりも一回りほど小さい球を放った。
「シュウちゃん!」
 大きさこそ控え目となったが、人間を一瞬で灰にする事くらいは容易い熱量を持った火の球が、シュウに襲いかかる。
 トウジとリアンは、シュウは髪の毛一本残さず焼失すると思った。次の瞬間、二人は驚くべき現象を目にすることになる。
 シュウは、構えることなく持っていた刀の切っ先を、迫り来る火球に向けた。すると、ただの刀が、凄まじい熱量と勢いの火球を受け止めたのである。
「な……に……!?」
 トウジは、目の前で起きている事が信じられなかった。シュウの持つ刀は、ムラクモ機関特製の品ではあるが鉄でできており、あのような熱量を持った物を受ければ熔けるはずである。それにも関わらず、刀は熱を帯びて赤色することもなく、火球を受け止め続けている。
 それからシュウは、刀を斜め上に振り上げ、火球を受け流した。
 軌道をぶらされた火球はそのまま宙を進み、空中で爆発した。
「ぐおっ……!」
 爆風が辺りを包み、砂塵が舞った。
「…………!」
 リアンは、首に下げたゴーグルを装着し、砂塵の先で起こっている事を見届ける。
 シュウは、これまでだらりと持っていただけの刀を構え、一気に深紅のドラゴンとの間合いを詰めた。そして空高く跳躍し、深紅のドラゴンに向かって斬りかかった。
 深紅のドラゴン応戦すべく、腕を上げ、爪を振るおうとした。
 剣閃が煌めき、二つの何かが地に落ちた。片方はシュウ、もう片方はシュウによって斬り落とされた深紅のドラゴンの腕であった。
「ガアアアアア!」
 深紅のドラゴンは、斬られた所から虹色の血を噴き上げ、苦悶の咆哮を上げた。
ーー行ける、シュウちゃんが押してる……!ーー
 リアンは、この状況に勝機を見出だしていた。しかし、その勝機の要因たる人物は、突然に動きを止めてしまった。同時にカラカラと刀を地面に転がした。
 そしてシュウは、纏っていたオーラを消失させ、膝を付いて地に伏した。終始相手を圧倒していたというのに、シュウは急に倒れてしまったのだ。
 深紅のドラゴンは、片腕をはね飛ばされるという深傷を負わされたが、まだ戦意を完全に失っておらず、急に敵であるシュウが倒れたことを好機と捉えたようだった。
 この場にいる敵を全て焼き払うべく、深紅のドラゴンは三度火球を作り出し始めた。
 深紅のドラゴンの火球を謎の力によって受け止め、弾いたシュウは気絶してしまい、ほとんど抑えられなかったとはいえ、衝撃を吸収するバリアーを出せるトウジはマナが残っていない。
 今大火球を放たれれば、間違いなくリアンたちは焼き殺される状態にあった。
ーーここまでのようだね……ーー
 死期を悟ったが、リアンは騒がない。迫り来る死の瞬間を静かに待つのだった。
 しかし、その瞬間は訪れなかった。
「ぬううん! ……てりゃあっ!」
 側方から何者かが出現し、深紅のドラゴンへと詰め寄り、アッパーカットをしかけて火球を上空にそらさせ、崩れた所を蹴り飛ばした。
 現れたのは色黒で、身体中に刺青を施し、癖の強い髪を後ろで一つに束ねた筋肉質の男であった。
 完全に不意を突かれた深紅のドラゴンは、どちらの攻撃もまともに受け、地に転がされる。
「ネコ、フロワロを!」
 リアンは、後ろに気配を感じ、振り返った。後ろには、剣を背負う猫耳パーカー姿の少女がいた。
「ほいほーい」
 見た目そのままにネコと呼ばれた少女は、背中の剣を抜き、出入口を塞ぐ毒花に向けてかざした。
 全てが黄金色の剣が一瞬輝くと、毒花は全て散っていった。
「これでよしっ、と!」
 ネコは、剣を納めた。
「けど知らないよーダイゴ? こんな勝手な事してあとでタケハヤに怒られても」
「……お前が黙っていれば済むことだ」
 ダイゴという男は、転がった刀を拾い上げ、倒れたシュウの鞘に納めるとシュウを担いだ。
「いや、絶対怒られるよー? タケハヤの剣まで持ち出しちゃってさ。しかもアタシに持たせるなんて。エレベーターも止まっちゃってるし、疲れたよー」
「運動不足のお前には丁度いい……」
「ちょっと、それ遠回しにデブって言ってない!?」
「天堂(てんどう)、有明(ありあけ)、どうしてお前らがここに……?」
 トウジは、二人と顔見知りであった。
「……ムラクモ機関がまた何か企んでいると仲間が知らせてくれたのでな。その内容を調べに来たのだ」
 ダイゴは、答えながらトウジを脇に抱えた。
「企み事を暴くだけのつもりだったが、このような事になろうとはな……ドラゴン、その群を率いる帝竜、そしてその支配下に咲く毒の花、フロワロ。全てアイテルの言った通りだ……」
「何を言っている……? まさか報告にあった侵入者はお前たち……」
 話している間に、深紅のドラゴンは起き上がり始めた。
「長居はまずいな。ネコ、退くぞ。そいつは頼んだ」
「はいはーい。ねぇ、キミ、歩ける?」
「わたしなら大丈夫……あいたっ!」
 リアンは、立ち上がろうとするが、足首に激痛を感じて動けなかった。
「あらあら、足を痛めてるみたいだねー。ほら、掴まって」
 ネコは、足を挫いて立ち上がれないリアンに肩を貸した。
「あ、ありがとう」
 そして一同は、深紅のドラゴンがまた何かし始める前に屋上を後にした。