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セブンスドラゴン2020 episode GAD

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 彼女ほどではないが、トウジも白黒付けたい性分であった。
 即死は免れない大事故に巻き込まれたというのに、無傷で生還した身体能力が本物なのか、トウジはそれが知りたかった。
 そうこうしている内に、選抜試験開始まで五分を切った。
 会場となる都庁前広場に、ムラクモ機関の代表のナツメが姿を見せた。傍らには、彼女の右腕的な研究者、桐野礼文(きりのあやふみ)も控えている。
「お集まりいただいた皆さん! お待たせしました。間もなく選抜試験を開始します。広場中央部に集合してください! 関係者も集合をお願いします!」
 キリノは、拡声器を使って一同に集合を促した。
ーー始まるか……ーー
 ついにムラクモ選抜試験開始の時刻になってしまった。トウジの待つ少女は、ついに現れなかった。
 仕方なくトウジは、ガトウと共に中央部へと向かった。
 広場中心に集められた若者たちは、キリノから点呼を受けていた。
「えーっと、次は……本宮君、本宮莉杏(もとみやりあん)くーん!」
「はーい! います、わたしだよー!」
 底抜けに明るい返事がされた。
 トウジは、この声音に覚えがあった。あの最強の暗殺者、ターゲット『D』のものだった。
 トウジは、一瞬でこれが偽名であろうと見当がついた。欧州一の殺し屋がこんな所で本名を晒すはずはない。
「……これで全員かしら?」
 ナツメは訊ねる。
「待ってください、さっきは返事はありませんでしたが、こちらのリストにはあと一人残っています。えっと……四季君! 四季秋くーん!」
「……はーい!」
 遠くから大声での返事が聞こえた。後ろからの声に、若者たちは振り替える。
「この声は……!?」
「んァ? トウジ?」
 トウジがこの返答に一番の驚きを見せていた。
 少女が一人、こちらに向けて駆けている。
 白いセーラー服姿の少女が、腰元までありそうな長い髪を揺らしながら走って近付いてくる。
 やがて少女は、集団のもとにたどり着いた。
「ふう……すみません、電車が遅れました。まだムラクモ選抜の受付はしていますか?」
 現れた少女は、それなりの距離を全力疾走してきたわりに、ほとんど息を切らしていない。
「え、ええと……君が四季君?」
 キリノは、おずおずと訊ねた。
「はい、私が四季秋です。遅くなってすみませんでした!」
 身体能力S級と思われる少女、シュウが、ついに姿を見せたのだった。

 Phase3 現代のサムライ

 シュウの登場と共に、この日、若者らが何故ここに集められたのか、その説明がナツメによって行われた。
 マモノの存在、それによる被害、そしてそれを討ち取る組織、ムラクモ機関について、全てが語られた。
「……あなたたちは、マモノを倒す力があるS級能力者。その力を是非私たちに貸してもらいたいの」
 若者たちは、そこまで語られてもまだ半信半疑といった状態であった。
「その話、マジなのか!?」
「いや、でも聞いたことがあんぞ。化け物が出て人が襲われたって」
 若者たちにざわめきが広がる。
「お静かにお願いします」
 キリノが注意すると、ざわめきは一旦収まった。静かになった瞬間を見計らい、ナツメは話を続ける。
「マモノとの戦いは当然、命の危険が伴うものになる。こうして呼び出しておきながら言うのもなんだけど、拒否権はもちろんあるわ。恥じる必要は全く無い、棄権するなら今名乗り出てちょうだい」
 若者たちは再びざわついた。
「ムラクモ機関に入ったら戦いの日々なのか? ちとキツくね?」
「でも、政府のお墨付きでしょ? かなり高給取りじゃん」
「お、オレはやるぞ! 人知れず異質な存在と戦うとか、ヒーローじゃん!」
 戦いを主とする仕事に若干の難色を見せる者もいるが、自分が特別な存在であり、その特別な力を活かせる場に興味がある者が多かった。
「……拒否する者はいない。そう捉えてもよさそうね。では……」
 ナツメは、腕時計を見る。
「ただいま、十五時十分を以て、第七十三回ムラクモ選抜試験を開始します。キリノ、ガトウ、試験の説明を」
 ナツメは、二人に説明させる。
「はい、ではここからは私、キリノが説明いたします。これから皆さんには三人一チームを作っていただきます」
 若者の中から一声上がる。
「なんでチームなんか組まなきゃなんねーんだよ? こん中から合格するのは少しなんだろ?」
「判定はチーム単位で行います。それに、マモノを相手にするのに慣れていない人が単独では危険です。必ずチームを組んでください」
 もう一つ質問の声が上がった。
「危険が伴うのなら、三人以上でチームを組んだ方が良くないですか? 五人組くらいがいいと思うのですが」
「それについては後で通信機を渡す時に説明するつもりでしたが、申し訳ありません。機器の都合上、三人以上のチームを登録できないようになっています。こちらのターミナルも、一度にナビできるのは三人分が限界なのです。ご理解をお願いします」
 キリノの回答に納得したのか、それ以上は質問は上がらず、若者たちはチームを組もうと周りで話し合いを始めた。
 試験開始前に既にある程度打ち解けていた若者たちは、すぐにチームを作れた。ある少女を除いて。
「あの、一緒に行きませんか?」
 最後に現れた候補者、シュウは共に行ってくれる仲間を探していた。
「ごめんね、もう三人で組んじゃったんだー」
 既に周りはチームを組んでおり、シュウが入れる余地がなかった。
「参ったな、どうしよう……」
 シュウは困り果てていた。誰に話しかけても、既に満員であるという返事しか返ってこなかった。
「…………」
 シュウの様子を観察していた少女がいた。先程の点呼でリアンと呼ばれていた者である。
 この場では、ムラクモ機関の中でもトウジしか知らないが、欧州最強と言われる暗殺者、ターゲット『D』本人でもある。
 トウジをして、S級能力者と判定された彼女は、相応の観察眼があった。
 暗殺のターゲットの力量を推し測り、如何にしてかかればターゲットを殺せるか、その判断ができるのもリアンの腕が欧州一とされる所以であった。
 そんなリアンの眼には、シュウがただならぬ力があるように写っていた。
 これから先に待ち受けるは、マモノという、人外の不確定要素との戦いである。少しでも力のある者と組んでおいた方が生き延びられると、本能的に察したのだった。
「ごめん、わたし抜けるね。あの子チームが決まってないみたいだから」
 リアンは建前を言い、組もうとしていたチームを抜けた。リアンのいたグループは四人組で、丁度誰が抜けるのか話し合っていた所だった。
「えー、リアンちゃんが抜けちゃうの? リアンちゃん頼りになりそうなのになー」
「みんななら大丈夫だよ。それじゃね」
 リアンは、当たり障りの無い言葉と共にグループを外れた。
「ねえねえ、キミ、シュウちゃんだったよね?」
 リアンは、まだチームを決めかねて困っているシュウに声をかけた。
「えっ、はい! ……そうだけど」
 シュウは突然声をかけられて驚いたが、声をかけてきた少女は同年代と判断し、言葉を砕けさせた。
「わたしと組まない? いや、組もうよ!」
 リアンは、シュウの手を取った。
「えっ、いいの?」