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セブンスドラゴン2020 episode GAD

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「もちろんだよ、一緒に行こ!」
「そろそろいいですか? チームを組んだなら試験を開始します」
 試験者たちの様子を窺い、キリノは開始を促した。
「そろそろ時間みたい。行こ、シュウちゃん」
「ええっ? でも私たちまだ二人しか……」
「大丈夫、大丈夫! わたしには分かる。シュウちゃんはすごく強い。わたしも強いから二人でも問題ないよ」
「でも……」
「心配しないの!」
 リアンとシュウのやり取りを、トウジが終始見ていた。
 彼女らは、規定を違反してまで強引に二人で試験を受けようとしていた。
「おい、トウジ」
 ガトウが話しかけてきた。
「さっきからどうしたんだ? ずっとあのシュウとかって奴を見てんじゃねェか。なァんだ、やっぱ気になるんじゃねェか!」
 気にかかっているのは確かだが、それはガトウの思うような事ではない。
 立場上ガトウにも言うことができないが、欧州最強の暗殺者が単なる女学生のシュウに接触しているのが気になっていた。
「んん? ちょっと待てよ、一、二、三……」
 ガトウはふと気が付き、候補者の若者の数を数え始めた。
「やっぱりそうだ、一チームだけ二人になるじゃねェか。ん、丁度シュウがいるところか。よし、トウジ、手伝ってやりな」
 思いがけない提案がされた。
「どうして俺が……俺は既に機関の人間だ。公平性に欠けるだろう?」
「二人チームの時点で公平もクソもねェだろ。いいから手伝ってやれって。教官役はオレとナガレで十分だ。それに助っ人やるにしても、お前の方が奴らと歳も近ェしな」
 ガトウの言うことももっともであった。
「そうかもしれんが……」
「おーい、そこの嬢ちゃんたち!」
 ガトウは、話がまとまる前に、大声でシュウたちに声をかけてしまった。
「ガトウ!?」
 シュウとリアンは、トウジたちを見る。
「お前ら二人しかいねェだろ? こいつが手ェ貸してやるってよ!」
「ガトウ、貴様勝手に……!」
「鴫原君が……?」
 こうなってはもう逃れる術はなかった。
「全く……」
 トウジはついに観念した。
「四季、それと本宮、だったか。俺はムラクモ機関機動班の鴫原トウジだ。役に立たん事はないだろう」
 トウジは、シュウ、リアンともに顔を知っているが、リアンとは少しばかり複雑な経緯で知り合っている。
 故に、リアンに対しては、辺りに知れ渡らぬよう、初めて会った体を保った。
「トウジくん、だね? よろしくね!」
 リアンは、人懐っこくトウジに接した。演技なのであろうが、まるで違和感を感じさせない。
「……あの、皆さん準備はよろしいですか? そろそろ開始したいのですが」
「おう、そうだなキリノ! てなわけでここから先はオレが仕切らせてもらうぜ!」
 ガトウが半ば強引に進行役を担う。
「オレはムラクモ機関機動十班のガトウだ! ハハハッ! 心配すんな、オレの言う通りにしてりゃ大丈夫だ!」
 ガトウはやたらと豪快な態度で若者たちに接する。
「さて、おーい、自衛隊の兄ちゃん! あれ持ってきてくれ!」
「はい、ガトウさん!」
 ガトウらの後ろに控えていた自衛隊員が、側に停車しているバンから荷台を降ろす。
 隊員は、荷台を覆うブルーシートを取り払った。
「ま、マジかよ……!?」
 若者たちは驚きにざわめいた。
 荷台の上にワゴンセールの如く置かれていたのは、ナイフや刀剣といった刃物、金属製のナックル、オートマティック式の拳銃であった。
 隊員はもう一つ、こちらは一回り小さい荷台も降ろした。こちらに置かれていたのは、端末が組み込まれた籠手である。
「ガハハ! まあ、驚くのも無理ねェわな! ここにある武器は全部本物だ。銃刀法なんざ、マモノの相手には通用しねェよ」
 ガトウはやはり、豪快に笑いながら言う。
「おい、おっさん、その銃もホンモンなのか? モデルガンとかじゃなくてか……?」
「あン? 小僧、教官に向かっておっさんはねェだろ……?」
 ガトウは突然豹変し、台の上の拳銃を手にした。そして、ガトウをおっさん呼ばわりした若者に銃口を向けた。
「ひっ! な、何する気だよ!?」
「そォいうやつァ、うちにはいらねェ。けど、秘密を知っちまった以上、このまま帰すわけにもいかねぇし、消えてもらう!」
 ガトウは引き金を引いた。銃声と共に弾丸が打ち出され、若者の眉間を撃ち抜いた。誰もがそう思っていた。
「……空、砲?」
「ガハハハハ……!」
 ガトウはまた大笑いした。
「なんつってな! こいつはムラクモ機関の特注品でな、照準にターゲットの生体反応を感知するシステムがあるんだよ。その生体反応がマモノ以外の時は、こんな風に弾は出ねェようにできてんだ。すげえだろ? ガハハハ!」
 ガトウは銃を置いた。
「……ガトウさん、心臓に悪いことは止めてくださいよ」
 キリノが注意する。
「まあまあ、こうやって実際にやってやりゃ、人に向けるようなバカな真似はしなくなるだろ? それに、これに完全にビビって動けなくなるようじゃ、マモノ相手の戦いにゃ付いてけねェよ」
 ガトウは、先ほど偽の発砲をした若者を見た。
「その点で言やァ、小僧、お前は及第点だ。試験、頑張れよ? ガハハ!」
 若者は、まだ茫然としていた。
 その後、ムラクモ選抜試験の受験者は、めいめいに武器を選んだ。
 トウジがあらかじめ分けた能力タイプによって、受験者たちの得意とする武器は決まっていた。
 ここに集った若者のほとんどが、身体能力に優れてはいるが、突出した力を宿してはいない。しかし、一応の種別はできている。
 リアンのような敏捷性に優れたタイプ『トリックスター』。この場にはトウジしかいないが、超常現象を自在に引き起こせるタイプ『サイキック』。他にも徒手空拳といった自らの体を武器とするタイプ『デストロイヤー』、身体能力よりも超人的な演算能力を持つタイプ『ハッカー』がある。
 そして、それらに比べると、特殊な能力は持たないまでも、類稀なる身体能力を持ち、剣技に優れるまさに現代に生きる侍、名前もそのままに、タイプ『サムライ』がいる。
 ここに集められた若者のほとんどは、スピードに特化した『トリックスター』、もしくはパワーに特化した『デストロイヤー』であった。また、ごく一部に『サムライ』と『ハッカー』がいた。
 タイプごとに武器の適正があり、『トリックスター』はアサルトナイフ、『デストロイヤー』はアイアンナックルを装備する事で能力を最大限発揮することができる。
 ムラクモ機関特製の対マモノ用の拳銃は、武器の適正としては『トリックスター』の物であったが、自分の適正武器が使えなくなった時の非常用として、全員に支給された。
「わたしはぁ、確か『トリックスター』だからこれだね!」
 リアンは、ターゲット『D』として仕事をしていた時から得物をナイフとしていたが、今初めて手に取ったかのように振る舞った。
「ねね、シュウちゃんはどうするのー?」
 シュウは、ワゴンに並ぶ武器を眺めていた。
 ナイフ、ナックル、拳銃、刀剣が並んでいる。シュウは、一つ一つ手に取って構えてみた。
「シュウちゃんもナイフにするの?」
「うーん……」