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セブンスドラゴン2020 episode GAD

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 シュウはナイフを振るってみる。小太刀術を習ったことがあるため、似たような丈のナイフでも型は一応できた。
「これはパスね。取り回しは効くけど、リーチがないわ」
 続いてシュウは、ナックルをはめてみた。柔術における当て身を試してみる。しかし、やはりこれも馴染まない。
「これも違うわね。そもそも、私程度の腕力じゃ、こんなのはめても変わらないような……」
 続けて手に取ったのは拳銃であるが
、シュウはすぐに置いた。
「鉄砲なんて、お祭りの射的でしか触ったことがないし、だいたいこんな形じゃなかったし……」
 最後にシュウの目に入ったのは、刀剣であった。その中でもシュウが一際引き付けられたのは、本格的な日本刀である。
「これって……」
 シュウは、引き寄せられるように打刀を手にした。
「ほォ、嬢ちゃんお目が高いじゃねェか!」
 ガトウが近寄った。
「そいつァかの名刀、加賀清光だぜ?」
「えっ? 加賀清光って、あの……!?」
 シュウは、武道、特に剣術を嗜む者として、有名な刀はある程度把握していた。
 加賀清光、もしくは加州清光と呼ばれる刀は、幕末のかの有名な剣客集団、新撰組の一番隊組長であった者の佩刀とされる名刀である。
「まっ、つってもレプリカだけどな! けど、レプリカでも真剣だ。それもそう簡単には折れたり、刃こぼれしない特製だぜ! ムラクモ機関の技術力をもってすれば、名刀の再現、それどころか、そいつを超える事だってできる。どうだ、すげェだろ? ガハハ!」
 ムラクモ機関特製の名刀は、シュウの手にとても馴染んでいた。
「ちょっと素振りしてみてもいいですか?」
「おう、いいぜ!」
 シュウは、すぐ近くに人がいないことを確認してから、刀を抜いた。
 鞘はそっと地面に置き、刀を正眼に構える。
「はああっ! ……せぇいっ!」
 刃がヒュンヒュンと空を斬り、剣閃が煌めいた。
 シュウは、前後左右の四方を斬り、八相構えにすると、袈裟斬り、斬り上げと続け、最後に鋭い突きを放った。それを一息に行ったのである。
 シュウは、地面に置いた鞘を拾い上げ、しっかりと血振りをして納刀した。所作は全て完璧である。
「こいつは驚いたぜ。シュウって言ったか? お前かなりの使い手だな!」
 ガトウの称賛にシュウは謙遜する。
「そうですか? ただ型通りに振っただけですけど」
「いやいや、剣ってのは、型こそが大事だ。ただ闇雲に力込めてブンブン振り回すもんじゃねェ。型通りに確実に振れる事が大事なんだ」
「おじいちゃんと同じ……」
「あン? 爺さん?」
「あ、ごめんなさい! えと、ガトウさんでしたよね? あの、言ってることがおじいちゃんと同じだなって、思ったんです」
 シュウの祖父は、武芸者であった。
 古武道を得意とし、特に剣術に秀でていた。シュウが武道を始めたのは、祖父の影響が大きかった。
 実戦にて剣が使われることがない今の時代にこそ、剣の型を大切にするというのが、彼の生前の修行の目的であった。
「へェ、そうだったのか。さぞかしひた向きな爺さんだったんだな。爺さんの名前は何て言うんだ?」
「えと、四季伝五郎(しきでんごろう)です」
「ほォ、なかなか男らしい名前……って四季伝五郎だとっ!?」
 ガトウは再び驚いた。しかも、今度の驚きはかなりのものだった。
「あの、何をそんなに驚いているんですか?」
「四季伝五郎っていやァ、オレらの若い頃は鬼教官で有名だった。警察や自衛隊の格技の指導者だったんだが、それはもう凄かったぜ……」
 シュウの祖父、伝五郎は、武道の指導者でもあった。あらゆる武道に通じていたために、その腕を重用され各地で技の指導を行っていた。
 時代的なものもあったが、その指導方法は苛烈であり、生徒に当たる警察官や自衛官一人一人と対峙し、相手が立ち上がれなくなるまで動かしていた。それなのに、伝五郎自身はまるで息を切らしていなかった。
 その厳しすぎる指導故に、立ち上がれなくなったふりをするものもいたが、彼にはお見通しであり、無理矢理立ち上がらせて、やはり倒れる寸前まで打ち込まされていた。
 伝五郎は、シュウが誕生する数年前に指導者を辞めており、指導者をやっていた頃の彼を知るシュウの親も事故で亡くなっているために、シュウには知る由もない事だった。
「どっかで聞いたような名字だとは思ったが、そうか、あの先生の孫か。なら、その実力は疑うまでもねェ、シュウ、お前は『サムライ』だ」
 シュウの能力タイプも『サムライ』であったが、ガトウは彼女の持つ力から『サムライ』と呼んだ。
「『サムライ』、ですか……?」
「ちょっとちょっと、ガトウさん、だよね? 『サムライ』ってあれだよね? 変な髪型して、刀を提げてる。それに、シュウちゃんは女の子だよ」
 リアンが口を挟んだ。リアンの知っているそれは、かつての武士そのものだった。
「あァ? お前は確か、リアンだったか? お前の言うのは武士のこったろ。オレが言ってんなァ、そうじゃねェ、『サムライ』ってのは、本当に力を持ってるやつの事を言うんだよ」
 ガトウは言うものの、日本生まれではないリアンには理解できなかった。
「それによ……」
 ガトウは続けた。
「力を持つ者に、男も女も関係ねェ。そうは思わねェか?」
「それは……」
 これは理解できた。リアンには特殊な能力が宿っている。
「例えば、お前の力は……」
「その辺にしておけ、ガトウ」
 トウジが止める。
「教官のお前が浮き足立っていてどうする? さっさと試験を始めるぞ、四季、武器はそれでいいんだな?」
「え? あ、うん、これにする。やっぱり剣がいいから……」
「やれやれ、オレとしたことが、鬼教官の名前を聞いて懐かしくなっちまったぜ。まあ、コイツらがどんだけ強いかは、試験すりゃ分かることだな。おーし、お前ら、試験を始めるぞ!」
 こうして、いよいよ試験が始まろうとした。
 トウジは、見逃していなかった。
 シュウはやはり、能力タイプに合った刀を選んだが、銃以外全ての武器を扱って見せていた。
 彼女のやった事は、前例の無いことであった。
 シュウの持つ力は、果たしてこれまでの例に倣うものであるのか、はたまた未知の力を見せるのか。
 それはこれから明らかとなるのだった。

 Phase4 異能力者の戦い

 都庁内は、異界と化していた。
 マモノと呼ばれる異形の存在が、ムラクモ機関により、この場所に集められていた。
 都庁は数ヵ月前から閉鎖されていた。この日の選抜試験のためというのもあるが、どういうわけか、マモノの出現はこの都庁周辺に集中していた。
 出現が集中していたが、大型のマモノは出ることはなく、せいぜい犬くらいの大きさのものが、人を驚かせていたくらいであった。
 そのため、死傷者は出ていないが、危険性を考慮して都庁はムラクモ機関によって封鎖された。
 混乱を避けるため、都庁は改修工事中とされ、都庁としての役割は、霞ヶ関の議事堂に移っていた。
 都庁は今、政府公認の極秘機構であるムラクモ機関に所有権があり、ムラクモ機関は都庁にマモノを集めて選抜試験を開いていたのだった。