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セブンスドラゴン2020 episode GAD

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 選抜試験の内容は、キリノから説明がなされた。三人一チームで都庁に巣くうマモノを退治しながら、都庁の三階を目指す、というきわめて単純なルールである。三階まではエレベーターは停止されており、候補者は自分の足で三階を目指すことになる。
 小型犬ほどの大きさの兎が、廊下を駆けた。
「そっち行ったぞ!」
「囲んじまえ!」
 三人一組となった候補者たちが、走り回る兎のマモノを追いかける。
「うわっ!? なんだこりゃ、でっかいチョウチョ!?」
 恐竜がいた頃よりも、遥か昔の時代に存在していたような、一メートルを超える大きさの青い蝶が、その羽から鱗粉を飛ばす。
「げほっ、ごほっ……!」
 近くにいた候補者が、巨大な蝶の鱗粉を吸ってしまった。
「おい! 大丈夫かよ!?」
 チームメイトが、咳き込む仲間に寄る。
「くっ、苦しい……!」
 蝶のマモノの鱗粉には、吸った者を麻痺させる効果があった。
 獲物が痺れて動けなくなっている瞬間を見ると、マモノは生き血を吸い取るべく、その口吻を突き刺そうとする。
「ひ、ひいっ!?」
 チームメイトは、仲間を捨てて逃げ出した。麻痺した候補者は蝶の口吻に貫かれようとした。
「燃え尽きろ!」
 炎が空を走り、一瞬にして蝶を巻いた。
 火に巻かれた蝶は、一瞬で燃え上がり、灰になることなく霧散した。
 炎を発したのは、トウジであった。トウジはマモノの消滅を確認すると、麻痺した候補者に駆け寄った。
 トウジは、ジャケットのホルダーから簡易注射器を取り出し、候補者の首に打った。
 そして、左腕の籠手に埋め込まれた端末を操作する。
「キリノ、俺だ、聞こえるか? 要救護者が出た。蝶のマモノ、ブルーグラスの鱗粉で麻痺したようだ。『パラエル』は投与した。救護班を寄越してくれ」
『了解しました、すぐに派遣します。オーヴァ』
 キリノとの通信は途切れた。
「おーい、トウジくーん! こっちは片付いたよー!」
 リアンが駆け寄ってきた。シュウも後に続いている。
「鴫原君、その人どうしたの!?」
 マモノの毒によって麻痺した候補者を見て、シュウは驚愕した。
「大したことはない、薬は投与したからな。全く、お前たちの手伝いをしつつ、試験の運営もしなければならんとは、骨が折れるぞ……」
 トウジはため息をついた。
「じゃあ、ほっとけばよかったんじゃない?」
 リアンは言う。
「本宮さん、どうしてそんな……」
 シュウは、リアンがどうしてそう冷たいことを言うのか、分からなかった。
「お前の言う通りだ、本宮。俺も運営側の立場でなければ、捨て置いている」
「鴫原君まで、そんな……」
「四季、お前は随分とお人好しなようだな。その質を否定しないが、大局を見る目は持て。俺たちのいるこの場所は、生きるか死ぬか、いや、殺るか殺られるかの戦場だ。足手まといを抱えて生きられるほど、生ぬるい世界ではないのだ」
 トウジは、これまでもマモノとの戦いという、命に関わる危険な場に赴いてきた。幸いにして、まだ仲間の死に立ち会うことはなかったが、戦場に立つことの非情さは自然と受け入れられていた。
「わたしもそう思うよー」
 リアンもまた、相手は人間であるが、生きるか死ぬかの世界にいた者である。暗殺者として生き抜くために、どのような手も使い、確実にターゲットを始末してきた。
 戦闘経験の豊富な二人に対し、シュウには人に怪我を負わせるような真似すらもしたことがなかった。そんな彼女には、二人の考え方が易々と受け入れられるものではなかった。
 突如、廊下の先から銃声と共に、候補者らの叫び声がした。
「う、うわー! なんだこいつ!?」
「に、逃げろー!」
 恐怖におののく候補者たちが、シュウたちの側を走って逃げていく。
「待て、何があった!?」
 トウジの止める声が届くことはなかった。しかし、一体何が起きたのか、その答えたるものが姿を見せる。
 地の底から響くような唸り声を上げる、巨体を誇るマモノが出現した。
「く、熊!?」
 マモノは熊の姿をしていた。自然界に存在する熊とは大きさがまるで違い、特に目立つのは、人の頭ほどはありそうな長さの爪であった。
「……マーダーベアーか。確かにこいつが相手では、銃弾もまともには通用せんな」
 トウジにマーダーベアーと呼ばれたマモノは、都庁に出現するマモノの中でも一回り格の違うマモノであった。
 ここに集められた候補者の能力ランクでは、束にならなければ傷も負わせることができないほどの屈強さを持っている。
ーーこれは……ふむ、好機かもしれんなーー
 トウジは、巨大なマモノを前にして、あることを思い付く。
「四季、本宮、ここはお前たちに任せる。奴を倒せ」
「任せるって、鴫原君は!?」
「俺は一応お前たちを評価する立場の人間だ。故にお前たちの力を見定める必要がある。それに、こいつの保護をしなければならんしな」
「それなら、私がやるから……!」
「四季、お前が戦わなくてどうする? お前の力を見せてみろ」
「で、でも……!」
 二人が問答している所に、一発の銃声が響いた。
「シュウちゃん、やるしかないよ。このマモノ、すごく強いよ」
 リアンの銃撃は、マーダーベアーの眉間に確実に当たっていた。しかし、そこを穿つまでに至らず、銃弾は地に転がっていた。
「……トウジくん、この銃はムラクモ機関の特注品だったよね? それなのに、肝心のマモノを倒せないのはどうしてかな?」
「銃の性能は確かだが、弾丸が普及品なのでな。なにぶん、マモノ用の弾丸は製造に手間がかかるので、試験での使用許可が下りなかったそうだ」
「ずいぶん適当だね」
 普通の弾丸では、眉間を貫いても仕留める事はできないが、マモノを怯ませる事ならできていた。
 リアンは更に数発発砲し、マモノの動きを止めた。
「本宮、お前の能力を最大限に利用できるのはそのナイフだろう? 銃撃に頼るなど、お前らしくもない」
「はて、なんの事かな?」
 リアンは、銃をホルダーにしまい、ナイフを手にした。
「待って、リアンさん! そんな短刀であんなのと戦うつもりなの!?」
 シュウは驚く。
「大丈夫だよシュウちゃん。シュウちゃんも力を貸してくれれば、すぐ倒せるよ。いくよ!」
 リアンは、ナイフを片手にマーダーベアーに駆け寄った。
 マーダーベアーは、向かってくる敵を薙ぎ払うべく、その長い爪を振るった。
「遅いね」
 マーダーベアーの爪はリアンに掠りもしなかった。リアンは、一瞬で身を翻し、マモノの背後に回っていた。
「そこ!」
 リアンは、マモノの背中にナイフを突き立てた。しかし、マモノの肉は厚く、急所の位置を突き刺す事はできたが、急所まで届かなかった。
 マーダーベアーにとっては、蚊に刺された程度のダメージでしかなく、上体を揺すってリアンを振り落とした。
「よっと」
 リアンは、後方に宙返りしながらマーダーベアーから距離を取った。
「あの動き、さすがは『トリックスター』と言ったところか。だが、攻撃力が足りん。本宮一人では荷が重たいな」
「なら助けないと、鴫原君!」
「いや、俺は手出しせんぞ。あやつを助けたいと思うならば、お前が行け、四季」
「そんな、でも……!」