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セブンスドラゴン2020 episode GAD

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 二人が話している間にも、リアンは戦い続けている。
 リアンは、持ち前の能力による俊敏な動きでマモノを翻弄しているように見えるが、攻撃一つ一つの威力が低く、有効なダメージを与えられていない。
 このままでは、リアンの方が先に消耗する事になるであろう。
「さあ、どうする気だ、四季? このまま仲間がやられるのを見ているだけか?」
 シュウは選択を強いられる。しかし、トウジの『仲間』という言葉が、ついにシュウを決意させた。
「そうね、私たちは仲間。仲間を見捨てるなんて、私にはできない!」
 シュウは刀を抜いた。
「私にどこまでできるか分からないけど、やってみる!」
 リアンは、壁際に追い込まれてしまった。
 今までマモノの爪での攻撃を、後ろに飛び退いてかわし続けてきたが、壁を背負ってしまってはそれができない。
 横に飛び込もうとしても、マモノの長い爪からは完全には逃れられない。
 追い詰められたリアンだが、まるで慌てている様子がなかった。
ーーわたしの見込み違いだったかな。まあ、マモノなんて言ってもこの程度なら、あれを使えば倒せる……ーー
 リアンは、マモノという人外の存在との戦いに備え、少しでも力のある者と組んだつもりであったが、想定外があった。
 一つは、マモノの相手が思ったよりも簡単な事である。今こうして対峙しているマーダーベアーでさえも、リアンにとっては他愛ない相手だった。
 もう一つは、シュウから感じた力が本物ではなかったのではないか、というものである。
 リアンはわざと、マーダーベアーに対して苦戦しているように立ち回っていた。
 シュウは見たところ、正義感の強そうな少女であった。故にこのようにして立ち回れば助けに入り、トウジではないが、その力を見せてくれるだろうと考えていた。
 しかし、ついにシュウは助けに入らなかった。こうなれば、もう演技の必要はない。
ーー……やっぱり、仲間なんて信用できるものじゃないね。ムラクモ機関、退屈しのぎにはなるかと思ったけどーー
 リアンは、ムラクモ機関をも見限り始めていた。人間を相手にするか、マモノを相手にするか、違いはその二つだけであり、リアンのやることは殺しであることに変わりはない。
ーー適当にやってさよならしようかーー
 リアンが目の前の敵を例の能力で葬ろうとした時だった。
「やあああああ!」
 シュウが大声を上げながら、抜き身の刀を手にマーダーベアーの背中を斬り付けた。
 マーダーベアーは一刀の元に倒れ、その身を霧散させた。
「リアン、大丈夫!?」
「シュウちゃん!? う、うん、大丈夫だよ……」
 リアンは、完全に呆気に取られていた。手を抜いていたとはいえ、能力を使わなければ打開できない状況に自分を追い込んだマモノを、たったの一太刀で倒してしまったシュウに驚きを隠しきれなかった。
 驚いていたのはリアンだけではない。トウジも驚きに目を見開いていた。
ーーあのクラスのマモノを一撃だと……? バカなーー
 戦闘経験の豊富なトウジでさえも、マーダーベアーほどの相手を倒すにはそれなりの能力を使用しなければならなかった。
 しかし、誰よりも驚くことになったのは、シュウ本人であった。
「よかった……って、えっ!?」
 シュウは、今になってマモノが霧散した事に気が付いた。
「あの熊が消えた……!? ていうか私……」
 リアンを救うため、無我夢中で刀を振るったが、一回りは大きな相手を倒してしまった事が信じられなかった。
「ガッハハハ!」
 三人がそれぞれ驚いている所へ、大きく、豪快な笑い声が階段の上からした。
 笑い声の主、ガトウが上の階から降りてきた。
「見てたぜシュウ! さすがはあの四季教官の孫娘だな、まさかあのマモノを一太刀とはな!」
「ガトウ、まさかあのマモノを放っておいたのか? 選抜試験の受験者では手に負えないのは分かっているだろ?」
「怒るなよトウジ。オレもやつに気付いて倒しに来たんだが、お前らが来たのが見えたからな。ちょっと様子を見てたのよ。それに、それを言うんならトウジ、お前も新人二人に任せてんじゃねェか」
「それは……」
「おおかたこの二人の力量を計ろうとしたんだろ? その要救護者の面倒を見るのはお前じゃなくてもできるしなァ、トウジ?」
 トウジの考えはお見通しとばかりに、ガトウはニヤリと笑う。
「あの、ガトウさん……」
 シュウは、おずおずと訊ねる。
「私に特別な力があるって、本当なんでしょうか?」
「あァ? 何言ってんだよ、あのマモノをぶった斬って見せただろ? それが証拠だよ」
「でも、あの時は無我夢中で、たまたま当たり所が良かったとかじゃ……」
 シュウは、リアンを救う一心で刀を振るっていた。マーダーベアーを倒そうという思いから剣を振ったわけではないために、まぐれ当たりで倒せたのではないかと思えて仕方がなかった。
「あいつは、ド素人のまぐれ当たりで倒せるようなマモノじゃねェ。もっと自信を持ちな」
「そうだよ! シュウちゃんのおかげでわたし助かったんだよ? やっぱりシュウちゃんは強かったんだね!」
 リアンは言った。シュウの事も見限りだしていたリアンであったが、こうして力を見せられた事で、再び利用価値を見出だしていた。
「なァリアン、ちょっと耳貸してくれ……」
 ガトウはリアンに耳打ちする。
「お前、さっきの戦い手ェ抜いてなかったか?」
 ガトウは気が付いていた。リアンには、マーダーベアーを一捻りにしそうな力があるというのに、苦戦していたような立回りを見て不審に思っていた。
 ガトウは返事を待つことなく話を続けた。
「あァ、気にすんな、別に責めてるわけじゃねェよ。おおかたお前も、シュウの力を見ようってつもりだったんだろ? だがな、油断は禁物だ。マモノとの戦いは、人との戦いと違ってまさかがありうる。せっかく力を持ってんだ、ちゃんと使わなきゃ危ねェぞ?」
 リアンは、心を読まれているような気になった。考えをまるっきり言い当てられたわけではないが、ガトウの言葉はかなり近かった。
 人との戦い、という言葉が一番引っ掛かった。まるでリアンが暗殺者として戦ってきた事を知っているようだった。
「ガトウ、何をこそこそと話している?」
「なんでもねェよ、トウジ。シュウ、リアン、お前らは合格だ。お前らより先に来た合格者は屋上に集まってもらってる。お前らもすぐに……」
 ふと、ガトウの籠手の端末が鳴った。
「あァ? なんだってんだ……」
 ガトウは応答した。
「オレだ、どうした?」
『ガトウさん、オレです、ナガレです。大変です、とんでもないマモノが現れました! オレだけじゃとても……うわっ!?』
 通信越しの声は、慌てた様子の青年のものであった。
「おい、ナガレ! どうした!? 返事しろ、おい!」
 通信は既に途切れた後だった。
「……ったく、教官が慌ててちゃ、世話ねェだろ」
 ガトウも通信を切った。
「ちょっとした非常事態だ。シュウ、リアン、お前らも来い、どうにもキナ臭ェ感じがする」
「ちょっと待てガトウ。どうして連れていくのがその二人なんだ? これは俺たち機関の人間の仕事ではないか」