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灼青と珀斗

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「ふふ、、そんなに羨ましいものなのか?。皇宮にいた頃とは、手続きやら、諸々の勝手が違うし、小殊が思ってるより、雑事が多くて、煩わされるぞ。」
「うん、それでも。」
「これだけは、今までみたいに、小殊に譲れる物じゃないよ。、、ふふ、、。」
━━小殊は、祁王兄上が選んだ、あの靖王府が気に入ったんだ。━━
 これまでも、祁王から、送られた物は欲しがったが、今回はそれとは違う様だった。
━━まさか、靖王府を譲る訳にはいかぬしな。それこそ断れない人間だと、失笑されよう、、、。━━
「、、、だよなぁ、、、無理だよなぁ、、。」
遠い目をして、林殊は、湖の遥か向こうの空を、ぼんやりと眺めていた。
 ついさっきまで、きらきらとしていた目が、途端に曇り、寂しげな横顔になる。
━━小殊、、、そんな顔をするな。私まで切なくなる。そんな顔をされると、私は手元の物に未練など無くなり、全てお前に差し出してしまうのだ、、、、いつもそうやって、、。
 小殊は、祁王が選んだ屋敷だから、羨んでいるのか、それとも、家を出て、煩い両親から離れたいだけなのか。━━
どちらにも解釈出来た。或いは両方の理由か。
 靖王は暫く考えて、口を開いた。
「、、、、、ならば、、それなら、小殊。靖王府に移ってくるか?。靖王府に、お前の部屋を作ればいい。靖王府に、一緒に住んでしまえばいいのだ。」
━━何も王府を譲らなくても、小殊が靖王府で暮らせればいい事なのだ。そうすれば小殊だって納得する。それに、、私だって、、、。━━
「えっ!、私が靖王府に!。」
「ああ、別に、差し障りは無い、、、とは思う。」
 見る見る林殊の瞳が明るくなり、頬が紅潮する。
━━そんなに嬉しいのか。━━
林殊の喜び様を見て、靖王の心も喜びで溢れる。
「ひゃっほ───!。」
「あっ、、こら小殊、、苦しい。」
 嬉しさのあまり、林殊は靖王に飛びついて、ぎゅっと抱き締めた。
 そして、靖王を離し、馬達がいる方を向いて、喜びいっぱいに叫んだ。
「珀斗ぉ───!。」
 珀斗は林殊の声に気が付き、こちらに駆けてくる。

 珀斗は林殊に、鼻を擦り付けた。呼べば来たり、このように懐く様は、靖王が飼っていた時には、見せなかった行動だ。林殊と珀斗の間に、信頼の関係が、しっかり出来ていたのだ。
「よしよし、珀斗〜。靖王府に住めるぞ。ま、里帰りだな。靖王府の厩は、立て替えたばかりだから、綺麗だもんなー。嬉しいだろ?。」
「珀斗もか?。」
「当然だろ!、こんな可愛いのに、林府なんかに置いて行けるか。
 私の部屋はー、、、そうだな〜、、書坊がいいな。何でも揃ってるから、身一つでいける。荷物、いらないや、はははは、、、。」
「おい、私の書坊に住まう気か?。」
「え?、駄目か?。あの部屋、良いよなぁ。日当たりといい、風の入り具合といい、静かさといい、、、。」
「ならば、蔵書や、私の物を移さねばな、、。」
「あ、いいよ、そのまんまで。私の夜具さえ運んだら、それで大丈夫。景琰も、書坊としてそのまんま使えば、何も面倒なことは無いし〜。楽ちん楽ちん。」
「何?、小殊が寝てる隣で、庶務をしろって言うのか?!!。いくらなんでも、それはちょっと、、。」
「硬いこと言うな〜。何なら景琰も書坊で寝泊まりしたら?。、、、何だよ、眉間にシワ寄せて、、嫌なのか?駄目なのか?私がいると何かあるのか?。」
━━えっ、、小殊と同じ部屋で寝泊まり、、。━━
靖王の渋い顔とは裏腹に、どこか、痺れる様な甘美な響きを、持っていた。
━━小殊と、、、。━━
「いや、そんな事は無い、嫌とかそういう事じゃ、。」
「じゃ、決まり!。」
「あ、、。」
━━決まってしまった、、。━━
「珀斗、、何してんの?。」
 二人、楽しげに話しているのに、珀斗はイタズラを始めていた。
 、、、珀斗は林殊の髷を食んでいる。
「小殊、、、珀斗がお前の髪を、、、。いつもなのか?。」
「あー、、時々な。珀斗、髪の毛ごわごわになるから止めろって。」
林殊は手で珀斗を退けようとしたが、中々珀斗を払えない。
「珀斗は、こんないたずらな馬だったのか?。」
「ただ構って欲しいだけ、なんだと思うんだけど、、。
私が誰かと話し込んでたりすると、衣の裾を噛みに来たり、こうやって、いたずらするんだよ。この間、させっぱなしにしたら、衣がぼろぼらになってた、、。」
「痛くないのか?。」
「いや、、全然。痛くはないんだけど、、、やっぱ、珀斗のよだれがなぁ、、。きもちいいもんじゃ無いよなぁ、、。珀斗、ほら、止めろって。」
「お?。」
珀斗の動きがぴたっと止まった。
━━こんなに人の言うことを、聞くようになったのか?。珀斗は、私の言うことは、あまり聞かなかったし、こんな風に、甘えもしなかったなぁ、、。━━
林殊の馬扱いの上手さに、改めて感心と、少しの嫉妬と。
「凄いな、小殊。珀斗が言う事を聞いてる。」
「えっへん、どうだ!、すごいだろ?、私は!。都の怪童だからな。ふっふっふっふっ、、。」
 だが、次の瞬間、、、、。

、、ぶっ、ちっっっっ、、、。

 靖王にも、聞こえる程の音がして、、、、。
「痛っっっっ、、、、てぇぇぇぇぇっっっっ!。」
 珀斗に髷を毟り取られた。丸まま、無くなった訳ではなく、髷は無事だったが、幾らか髪を毟られた。
 林殊は、頭を抱えて蹲った。
「し、、小殊、、だ、大丈夫か?。音がしたぞ。」
「こんのぉ、、、バカ馬!、禿げたらどうすんだ!。」
知らん顔で、口を動かしている珀斗。
「返せ!、私の髪紐、取っただろ!、コラ!。」
更に『馬相手に何言ってんのぉ?』的な態度で、もひもひと、口を動かすのを、止めない珀斗。
「珀斗!、返せ!。」
林殊は珀斗を睨みつけ、強い口調で言う。
そこで珀斗の、口の動きが止まった。
しばらく林殊と馬は睨み合い、、。

、、ぺっ、、、、。

 珀斗は、紙紐を地面に吐き付けて、くるりと尻を向けて、去っていった。ヨダレまみれの髪紐がその場に残る。
「うは────、汚ね────。」
「、、、、良く躾られた馬だな。」
靖王はくすくすと笑っていた。
「くそ─────っ、景琰に、嫌味言われた。」
林殊は、じろりと靖王を睨みつけ、珀斗が吐き出した髪紐を、指で摘んで拾う。
「酷ぇ、、、べっとべと、、。これからは、髪紐は、馬皮で作ってやる、、。」
 林殊の髪はざんばらになり、髪を掻き分けながら、湖の方へ向かった。
 湖のほとりで膝を曲げて、髪紐に付いた珀斗のヨダレを洗っていた。
 珀斗はいつの間にか、林殊の側に戻っていて、林殊が膝を屈めている背中から、林殊が何をしているか、覗いていた。
 靖王は、こんな珀斗の姿を、可愛らしいと思うのだが、『少し、何かが違う』、直感的にそう思った。
「小殊!!!、後ろ!!!。」
「ん?、。」
洗いながら、林殊は振り向いた。だが、、、、。

どぼん。

珀斗は、無防備になっていた林殊の背中を、鼻で押したのだ。
 林殊は、湖の中へ顔から『のめって』しまった。
「げほっげほっげほっ、、、、珀斗ぉ!!、、。」
「ぶっ、、、あはははははは、、、。」
「冷た〜〜〜。珀斗め!。こんなイタズラ、いつ覚えたんだ!、全く!!。」
「はははははは、、、、、。」
作品名:灼青と珀斗 作家名:古槍ノ標