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終わりのない空5

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「そんな事分からないだろう?ああ、やはり君も連れて行こうか…」
ブツブツと呟くクワトロに、更に苛立ちが込み上げる。
「ほら!そろそろ時間ですよ!准将をお待たせする訳には行かないでしょう?僕は大丈夫ですから、いってらっしゃい!」
クワトロの背中を押して部屋から追い出す。
「分かった。何かあれば直ぐに連絡をするんだぞ」
「分かってますって!」
後ろ髪を引かれる想いで渋々と出掛けていくクワトロを見送り、大きな溜め息を吐く。
「あんな人だっけ?心配し過ぎだろう」
どっと疲れが出て、ゴロリとベッドに寝転ぶ。
顔を埋めたシーツからは、薄っすらとクワトロの香りがして、昨夜の事がフラッシュバックする。
「うわ…僕…あの人と…」
思わず両手で熱く火照る顔を覆い隠し、昨夜の事を思い出す。

まだ、身体中に残る感触。
思い出すのはシャアの熱い吐息。
ラグナスには何度か抱かれたが、薬の影響を受けず、素面で抱かれたのは昨夜が初めてだった。
「あんなに激しくて…熱い感情を持った人だったなんて…」
思わず身体を抱き締め、熱くなり始めた身体を鎮める。
「はぁ…ベッドメイクに来るよな…」
このホテルにはもう一泊し、明日のシャトル便で月に帰る予定だ。
アムロは起き上がると、軽くシーツを直して一息つき、ミニバーからミネラルウォーターのボトルを取り出して飲み干した。
「少し治まったかな…」
頬の火照りを確かめながら思わず呟く。

その後、荷物を軽く整理して気を紛らわし、ようやく落ち着いてソファに腰を下ろす。
と、それを狙ったかの様にドアがノックされた。
ドアの前にいる人物の気配を感じ、アムロは少し思案した後、立ち上がった。
「はい」
ドアを開ければ、思った通りラグナス少佐が立っていた。
「准将から君の護衛を仰せつかったからな。不自由はないか?」
「はい、大丈夫です」
このまま部屋に招き入れては後でクワトロに何を言われるか分からない。
アムロはドアを半分程開けただけで応対する。
「クワトロ大尉に何か言われたか?」
「え?…いえ…その…」
その対応にラグナスがクスリと笑う。
「そんなに警戒しなくてもいい。無理やり君をどうこうするつもりはない」
「…はい…」
そうまで言われて門前払いする訳にもいかず、少し迷いながらもラグナスを部屋へと招き入れた。
「クワトロ大尉から今後の日程についての説明は受けているか?」
「…いえ」
一応、飲み物を用意しながらアムロが答える。
「准将は月末の連邦議会でティターンズの解体を訴えるつもりだ。そこで議会の同意が得られなければ反連邦組織エゥーゴの設立を宣言する」
「反連邦組織エゥーゴ…」
「おそらく議会がティターンズの解体を受け入れる事は無いだろう。そうなれば、クワトロ大尉達は来月の頭にはエゥーゴの一員として新造艦に乗艦する事になる」
「来月?」
思ったよりも早い展開に、飲み物を用意するアムロの手が止まる。
今の穏やかな生活が永遠ではない事は分かっていた。
しかし、こんなにも早く終わってしまうとは思っていなかった。
唇を噛み締め、俯くアムロにラグナスも憐みを感じる。
「すまないな…」
「少佐が謝る事では…」
アムロは止まっていた手を動かし、飲み物をラグナスの前へと置いた。
「クワトロ大尉は何と言っていた?」
「…クワトロ大尉は…一緒に来るようにと言ってくれました。パイロットが嫌ならばメカニックとしてでもと…」
「メカニックか…、しかしあまり乗り気ではないようだな」
昨夜、クワトロに一緒に来て欲しいと請われ、考えると答えたが、正直迷っていた。
「はい、…こんな中途半端な僕が参加するのは…いけない事だと思うんです…」
「いけない事?」
「はい、昔ある人に言われた事があるんです。守るべき故郷も、愛する人もいない僕が戦うのは不自然だって…」
「不自然か…」
「一年戦争で、ジオンの兵士達はみな、祖国の独立の為に戦っていました。それに連邦の兵士だって地球や家族を守る為に…でも、あの時の僕は、ただ流されるまま、言われるままに戦っていただけです。そんな僕が、志しを持った多くのジオン兵の命を奪ったんです…」
哀しげな視線を向けるアムロに、ラグナスは何も言う事が出来なかった。
自分は連邦の兵士ではあったが最前線で戦っていた訳ではない。
激戦を戦ってきたアムロの想いは、想像は出来ても共感は出来ないのだ。
「ブレックス准将の志しは素晴らしいと思います。けれど…今の僕には、そこまでの想いは抱けない…」
まだ自分の事だけで精一杯なのだと、正直に訴えるアムロにコクリと頷く。
「そうか…そうだな」
「お力になれなくてすみません…」
「しかし、クワトロ大尉達と離れてしまって良いのか?」
「…っ」
「アムロ大尉?」
「…良く…ないです…本当は…まだ一緒にいたい…」
俯き、膝の上で両手の拳を握りしめ、絞り出すように答える。
そんなアムロの拳をラグナスが上から包み込むように掴む。
「クワトロ大尉が好きか?」
「え?」
思わず顔を上げれば、目の前にラグナスの顔があった。
そして、その翡翠色の瞳に見つめられ息を飲む。
「どうなんだ?」
「僕が…クワトロ大尉を…好き?」
驚いた様に目を見開くアムロに、ラグナスがクスリと笑う。
「彼に抱かれたのだろう?」
「え⁉︎何で…!」
動揺するアムロの襟に指を掛け、少し下ろしてそこに残る紅い痕を指でなぞる。
「見えているぞ」
「えっ⁉︎」
咄嗟に首を押さえて隠すが、ラグナスには全て見透かされているのが分かる。
「彼は随分と独占欲が強い様だ。私を牽制する為に、態と見える所に痕を残したのだろう」
「えっ!あっ…え…」
顔を真っ赤にするアムロの髪を、ラグナスがクシャリと撫ぜる。
「彼も若いな。今までずっと我慢して来ただろうに、私に煽られてタガを外すとは」
「ラ、ラグナス少佐!」
「アムロ大尉、君はどうなんだ?彼と肌を重ねてどう思った?」
「どうって…」
「嫌悪感は無かったのだろう?」
確かに、嫌悪感は無かった。
ラグナスとの時の様に薬でおかしくなっていた訳ではない。本当に嫌ならば力の差があったにしても逃げ出せた筈だ。
しかし自分はそれをしなかった。
何故ならば、決して嫌ではなかったからだ。
いや、寧ろクワトロに求められて嬉しかった。
『そうだ、僕は嬉しかった。“あの人に”求められて嬉しかったんだ…僕はあの人の事を…』
昨夜の事を思い出し、アムロの頬がかぁっと赤く染まる。
「ようやく自覚したか?」
「え?あ…えっと…え…僕…」
熱くなった頬を両手で押さえ、潤んだ瞳をラグナスに向ける。
「ふふ、そんな顔を私に向けて良いのか?私は君を彼に譲ったつもりはないぞ」
「え?」
そう言うと、アムロを引き寄せて抱き締める。
「私とのキスも嫌ではなかっただろう?」
「少佐⁉︎」
「一度素面で私に抱かれてみるか?クワトロ大尉とどちらが良いか比べてみると良い」
「待って下さい!さっき無理矢理はしないって!」
「無理矢理ではないだろう?」
首筋に唇を這わせるラグナスに、アムロが動揺する。
「ダ、ダメです!」
必死に抵抗するアムロに、ラグナスが首元でクスクスと笑い出す。
「少佐⁉︎」
「冗談だ」
顔を上げ、笑顔を向けるラグナスに驚く。
作品名:終わりのない空5 作家名:koyuho