宇宙に虹、大地に黄昏
「続けよう。これまで、スペースコロニーの各政庁は連邦によって管轄されてきた。それは問題ではない。
しかし、奴らは市民に圧政をしき、権利などは認めなかった。市民を都合で宇宙へ追放しておきながら、なんの保障もせず、腫れ物同然の扱いをしたのだ。
そんな存在に一方的に管理され、搾取されるのはコロニーの意思に反する。だからコロニーは地球から独立させて、スペースノイドによって統治されていかねばならない。
すでに宇宙だけで完結できるという事実は時間が証明しているのだ」
「階級闘争を起こして、コロニー国家の建国を目指すのですか?」
瞋恚《しんい》の念というのは尾を引くものである。
だからフォルティスは、この時代になってもジオンの思想がまだ生きているという現実を認知することができた。
平時であれば、一義的な意見として取材していたところだろう。
「そうだ。経済、政治はもちろん、軍事、領域の管理等、これまで地球で行われてきたすべてを宇宙で完結させる」
「その支配権を握るつもりですか?」
「いや、それは君のような後進に一任する。しかし、務めを果たせていなければ
私が代わりに実権を握ることになる」
(無能であれば、姿だけ偉そうにして指導者気取りをやらせるというのか? そんなことで・・・!)
この男は、目的のために動けるし、信用もできる。
だが、そのためなら何であろうと切り捨てる。これは、狡猾だ。武人などとんでもない。
それがフォルティスが感じた印象だった。
作品名:宇宙に虹、大地に黄昏 作家名:アスキー