宇宙に虹、大地に黄昏
アニゴザントス
戦闘を終えたモビルスーツが工作ブロックに入港すると、待機していたデッキ・クルーが簇々とモビルスーツにとりついていった。
そのノーマルスーツ達は帰還した機体をプラットホームに接舷させ、点検作業へと移っていった。
そうなれば、パイロットなどは邪魔者として放り出されるのである。
「逃げたい・・・」
その中、フォルティスの意識はそう急かしていたが、現実にはできないからこそ、思うだけで留まっているのである。
だから今回も、上機嫌なクルー達から祝福されるのは避けられなかった。
フォルティスは自室に早帰するつもりでいたが、リディアとジャックが肩を並べて居住ブロックへ流れて行くのが見えたから、武装が解除されていく自機を傍視して時間を潰すという選択肢をとることにした。
クルー達の自分本位な賛嘆に耐える時間が増えたのだから、傍迷惑な話である。
だが、死と隣り合わせになれば、生物的な欲求が高まるというのは仕方ないことだし、それを糧にすることで恐怖を打ち消しているというのは理解ができた。
だから、その関係は尊重してやりたいのだ。
作品名:宇宙に虹、大地に黄昏 作家名:アスキー