宇宙に虹、大地に黄昏
フォルティスは暫くプラットホームに居残っていたが、ノーマルスーツの1人は、
ただ言葉を投げてくるだけではなかった。
「おつかれさまです。また撃墜したってききましたよ」
その青年は慇懃な態度をして、経口補水液を手渡してくれた。
「ありがとう。きみはリゼルの整備員だったよな?」
「ユータ・クレステスといいます。今度からパイロットをやることになったん
です」
「パイロット志望だったか。整備員から転向とは珍しいんじゃないのか?」
「同年代のフォルティスさんがうまく戦ってるって知って、僕もパイロットやりたいなって、そう思って」
「そういう理由だから、フォルティスも気を引き締めてけよ?」
「ああ・・・セドリックも同じ担当だったものな」
見知ったメカニック・マンが後方から会話に参入してきたので、フォルティスは
無意識的に安堵していた。彼とは、結構馬が合うのだ。
「ユータは俺の後輩なんだよ。こいつが戦えるようになるまできっちり面倒見てくれよ?」
「ユータ次第さ。もしかしたら、才能があるかもしれないからな」
「敵を撃破して、無傷で帰ってくる奴よりもか?」
その場の3人が笑いに包まれた。フォルティスはこれまでとは一転して、何ものにも代えがたい気楽さをおぼえた。
自分に感化されて、多望の人間が戦場に身を投じる。
そんな彼の気合は嬉しく、頼もしいものだが、同時に危うさも感じるものだ。
そんな懸念事項に気付くのは、あと少し先の話だ。
けれど、それがわかるフォルティスは、既に先輩だといえた。
作品名:宇宙に虹、大地に黄昏 作家名:アスキー