宇宙に虹、大地に黄昏
「誰かに幸せになってほしいって気持ちは本当だね。人を思いやることはできるのに、どうして手を伸ばそうとしないの?」
「俺も、嫌われたくはない。これに尽きるんだよ」
「それで何も愛せないんじゃ、残酷だよ」
「豊かさというのは、脆さなんだよ。だから、ぼくは・・・」
ここへきて、フォルティスはついに言い訳を発してしまった。
実際、生《せい》に近いものよりは、死に近い方が世界が広く見えるものだ。
眼前を直視する必要がなくなると言い換えてもいい。
そんな考えを持っているのだから、すり替えようとしたのである。
素直に、人を愛賞することができないとは言えなかったからだ。
「だから関わらないというの? その稀薄さがあなたを苦しめているというのに・・・」
「物事の難しさは人によって違うということは、君ならわかるだろう」
「けれど、あなたには高邁な理想があって・・・・・」
「ぼくは世論に唆されただけの卑しい人間だよ」
消沈しきったフォルティスには、自分を卑下する言葉が心地よかった。
「そうやって自分を縛っているから、いつも独りになるんでしょ」
「そうだね・・・そうなんだよ・・・」
最早、反論などは出なかった。
作品名:宇宙に虹、大地に黄昏 作家名:アスキー