宇宙に虹、大地に黄昏
凍て空の行方
フォルティスが居住ブロックの自室でまどろんでから、2時間ほどが経過していた。
そこには、暗澹とした思惟が充満していた。
その邪悪で仄暗い空間に、フォルティスは浮いていた。
(一歩踏み込めば、応えてくれるかもしれない。それだけの関係を得られるかもしれない。充実した生活が待つかもしれない。わかっているだろ? すべて諦めて、
感じる心を断ち切るのでは駄目なんだ)
かすかな希望が、胸をえぐった。だから、空虚だけが残った。
(それは希望的観測にすぎないんだ!!そんな曖昧で無責任な考えに絆されるほど、簡単な立場じゃない・・・・・)
向こうに行っては駄目だ。戻せ!
肉体による、善意で理性的な叫声を起点として、彼の我は精神から離脱した。
そのまま顔にかかった汗を拭って、シャツを脱ぎ捨てた。
(俺の人間的欲望は、ほんの僅かでも認めたくはない・・・でなければこれまでの生活はおかしいじゃないか)
そう思うから、一切の迷いは捨てるのだ。えぐられた胸をおさえて・・・・・
作品名:宇宙に虹、大地に黄昏 作家名:アスキー