宇宙に虹、大地に黄昏
次いで、閉じたエア・ハッチの方角へ流れる。
あるはずのない緊張感に包まれ僅かに焦ったが、ここまでは上手くいっていると自分に言い聞かせ忘れる、ということをする。
その道中で1人のメカニック・マンとすれ違い、他愛ない会話を演じたが、短く切り上げられたのは幸運だった。
そのまま流れて、遂にリゼルへ流れ込めたとコクピット内部を諦視する。どうやら、シートの裏に張り付けておいた備品は取り外されていないようだ。
これなら、ベースジャバーの常設品と合わせて1週間は生活できるだろう。
シートに座り込み、ディスプレイを操作すれば、滅多にないほどの安堵を味わえた。
慣れた環境に落ち着いたのだ。そこには安心感がある。
様々な準備のおかげで少し忘れていたが、これから機体とともに脱走するのだ。
そして、その先の命運は天に任せるというものだ。それは恐ろしいほど怠惰な決定だが、そのやり方が1番マシと思うのである。
これがフォルティスの甘さとなり、死神が避けて通る所以である。
作品名:宇宙に虹、大地に黄昏 作家名:アスキー