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宇宙に虹、大地に黄昏

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寒色の宙域


「すまないな、苦労をかけて」
「いや、俺もこの機体の構造は気になってたからさ」

スペース・シャトル用のハンガーに固定されたモビルスーツを見上げ、従容そのものといった会話をする二人は、パイロットとメカニック・マンで、友人という間柄であった。
パイロット、フォルティスは眼前を流れていく木箱をクレーンの方角へ返しつつ、横にいるメカニック・マンを見やった。

整備員は、バスケットコートにでもいるほうが似合うんじゃないか、という相貌をもつ、明朗な男であった。対してフォルティスは、美術部員をやっているかのような大人しめな外見だった。
フォルティスの方は、自身の憂身がさせる雰囲気なのであるが、それに気付く人間は僅かである。
この2人はお互いに正反対の色気というか、魅力を放っていたのだから、誰も割って入ることなどできない様子であった。
「リゼルだっけか?ゼータ系の機体なんて、どこで手に入れたんだ?」
まさかこんな組織にいる一個人が、モビルスーツを発注できるわけがない、という態度が感じとられた。
これに気付くことはできるのがフォルティスという青年なのだから、そりゃそうだよな、と苦笑をもらした。
事実、彼の、その一般的な認識は間違ってはいなかったからだ。

「インダストリアル7宙域だ。あの辺りは、ネオ・ジオンに襲撃された歴史があっただろう」
「正規品ってことかよ。改修前にデータのコピーだけさせてもらうぜ?」

相好をくずし、平然と言えるあたり整備士の青年が歩んできた道は平坦なものではなかったのであろう。
フォルティスは宇宙での生活を始めてから日が浅いということもあり、彼らの事情などには詳しくなかった。
そうなのである。フォルティスは元々、地球の出身であった。
それが、1枚ばかりのプラスチックのプレートを持っていない、という理由で
コロニーへ移送させられたのだ。
このプレートとは、地球の居住許可証《アイデンティフィケーションカード》のことである。
時には不法居住者というだけで死刑にされるケースもあるのだが、それは避けられた。
しかし、逮捕されるという状況は免れなかったのである。
フォルティスは移送前に、拘留所でサイド4へ行きたいという希望を出していた。
フリーのジャーナリスト始めたばかりで、フロンティアコロニーの情勢が気に掛かっていたからだ。
連邦にもその程度の良心は残っていたようで、まだ人口の少ないフロンティアⅢへの入植が言い渡されたのである。
作品名:宇宙に虹、大地に黄昏 作家名:アスキー