二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

Angel Beats! ~君と~ 夏休みのユイ編

INDEX|6ページ/8ページ|

次のページ前のページ
 

カーペットの上を転がり、靴を履く場所までやって来た関根。日向はうげぇと嫌な顔をした。綺麗にしたからとはいえカーペットにゴロゴロと転がりたくはない。


「別に良いけどよ、どうした?」


「冷やかしに行くのさ!」


胸元とお尻を払い、自分を綺麗にする。

それでは心もとないと思った日向は棚にあったクシを手渡した。

それを受け取り、髪の毛をといた。といても関根の跳ねた癖毛は直らなかった。


「止めろ…、ってっつっても行くんだろうな。ま、ユイも関根が来るの喜ぶだろうし付いてきてくれ」


「あーい」


関根の背後では入江がお菓子を、小枝に上げているのを知る由はない。

日向は右手を差し出す。


「あ、ユイにゃんとどこまで進んだん?」


「進んだって何だよ?」


関根はクシを片付けてくれると解釈し、日向の右手に置く。

置かれたクシを日向は元あった所に片した。


「AからZどこまでだって聞いてるんだーよー」


「どこまで行くんだよ…」


適当に促して、ドアを開ける。

これでも関根には感謝はしている。ユイを立たせてくれたのだから。

しかし日向はこう描いていた。キスをすれば歩けない呪いから解かれて歩けるようになると。

ゆり達が邪魔したのでそれは叶わなかったが、もししていたら日向は王子になれていたのかもしれなかった。


「ほれほれー、ちゅーくらいしたんじゃろ~。言えよ~」


「お前だけには絶対言いたくないな」


「お、したんだな? 否定しないのはした証拠だ!」


「うるせえな、行くぞ」


後ろを見ずに手で閉める。湿気た空気が肌に纏わりついて気持ち悪かった。ユイに場所をメールで教えて旧校長室に来させるのが良かったが、会いたい気持ちのほうが強かった。


「だからそうしなかったんだね」


「何を言ってるんだか…」


訳の分からない関根を放っておき、歩く。関根はそれに付いて行く。

この後驚くことは二人は知らなかった。





「あ、習字できないや」


今更ながら大山が気付いた。

机の上にある半紙はもう乾いている。


「良いじゃんこのままでも。ほらーお菓子どんどん吸い込んでくよ」


「…ぅ~」


次々にグミを口に放り込ませ、その様子を楽しんでいるが小枝は苦しそうだった。


「おし、終わったー!」


「よくもまあ桃太郎で書けたもんだよ…」


「終わり良ければ全て良し!ところでひさ子は何書いたんだ?」


「ん?坊っちゃんだよ」


「夏目漱石かあ」


我輩は猫である書いた人かと適当なことを思い、シャーペンを筆箱にしまった。何もする事がなくなった岩沢は寝転がり、鼻歌を歌う。


「あたしも終わったし、何すっかなー」


竹山を見るとパソコンをいじりだしている。岩沢とひさ子より早く終わったのだろう。高松は相変わらず腕立て伏せをして筋トレに勤しんでいる。各々好きなことをやっているのを見ていつも通りだと思ったひさ子はある事に気付いた。


「…松下、居なくねえか?」


「あん、松下? あいつ柔道の遠征だってよ」


岩沢は自分に向けられて質問されると鼻歌を止めた。


「へー、じゃあTKは何か聞いてる?」


ここがいつになく静かで、視界がごちゃごちゃになっていない。リズムに乗って踊るバンダナをしている男が居ない。そう、TKだ。


「実家だってさ」


「いつ聞いたんだか分からんけど、そうなんだ」


いつも何か踊り、英語を話す(?)TKがどこのクラスに所属しているのか見当も付かない。クラスメイトとはちゃんと日本語を話しているのだろうか。

いつも見掛けていて身体を動かすのが当たり前で、そんな疑問を抱く者はここに居なかった。


(…外国と日本どっちの実家なんだ?)






























旧校舎から出てしばらく歩き続けた日向と関根は暑さ対策をしてこなかったことを後悔した。猛烈に暑い。白いコンクリートが照り返し、日差しが顔に来る。

暑い。

もう暑くて溶けてしまいそうだ。

関根は日焼け止めクリームを予め塗っておくのを面倒臭がってやっていない。自分に甘やかす性格を恨んだ。衣服に吹き掛けたら冷えて楽になるスプレーをするのもやっていない。

蒸し蒸しした空気が汗と融合した気がする。制服が肌にくっついて気持ち悪かった。


「…」


関根は暑いとは言いたくなかった。

余計暑くなりそうだからだ。それに喋ることに体力を使いたくはない。さっさとユイを見付けて涼しい旧校長室に帰りたい。


(思ったより静かなもんだな)


額に汗かいて舌を出している関根を見る。いつも空調が整った教室でバンドの練習をしているから、この環境に慣れていないのだと思った。

日向は野球で慣れているつもりだが、やはり嫌だ。


「あれユイじゃね?」


「あー、傘さしてんねぇ」


砂漠でよくある蜃気楼でなければユイだ。

紫外線対策でもしてるのだろう。

まだ使われていない棟、予定では教員棟になるらしく、ユイはそこの日陰に居た。


「やっほー! ほい、さっさとこっちに来てー!!」


関根は力を振り絞って手を振った。さっさと帰りたいからだ。

声に気付いたユイは振り向いた。


「へー、うちの夏服と似てね?」


段々こっちに向かってくる。

日向に会えて嬉しいのか、笑顔で走ってくる。


「…いや、絶対うちらのせいふ…え?」


「ひなっちさんに関根さーん!」


半袖のセーラー服、青に白い線が二つだけ入った膝が被る程のスカート。


「編入してきましたよー!」


ここの学校の制服を着てこっちに来た。


「え!?」


「あれー?ユイにゃん、お前さんあたしらと同じ学年だったのね!」


暑くておかしなテンションになった関根は、ユイを下から上までジロジロ見る。


「え? 一学年上じゃなかったんですか?」


「ユイのことずっと中3とかそこらだと思ってた…」


「あたし高校2年かと…」


「ちみたちはあたしらが知る前から密接な関係なのに無知だったのか…。これだから若者わかもんはダメだなあ」


手を上げやれやれと言った感じにジェスチャーをする。


「これがバカップルってやつですね」


「うぉう!?」


関根の横にいつの間にか遊佐が立っていた。手にはビニール袋を持ち、更にはバニラアイスを食べて様子を観ている。

夏服ではなく私服を着ていた。


「おー、遊佐じゃん。どうした?」


「アイスをお裾分けしようと思いましてね、その必要はなさそ」


「ある!!」


「くりぇぇぇええええぇ!もう暑くてさ、死にそうなのだああああ!!ゆさゆささんお一つください!!」


手に持っていたビニール袋を二人に差し出し、好きなアイスを取らせる。底には大量のドライアイスが敷き詰められており、アイスを溶けないようにしていた。日向は二つで一つになっているソーダ味のアイスを取り、片方をユイに手渡した。関根はパイナップルジュースをパイナップル型に凍らせたものを取った。

包装から直ぐ様抜き、シャクシャクと音を立て食べる。