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高等部男主

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詩の目下に広がるのは先ほどよりもずっと広い田畑と家々。

さすがアリス村というだけあって、セントラルタウンに近いものを感じたが、そこは昔情緒のあふれる、落ち着いた場所だった。

と、そのとき、視線を感じた。

はっとして見た木の陰にいたのは...子ども?

キツネの面をかぶっていて、顔はみえないが確かに華奢な女の子のようだった。

しかしその子は詩と目が合ったかと思うと、すぐに姿を消してしまった。

なんだか、夢かと思うくらいの不思議な感覚だった。

気を取り直して詩は村へと足を踏み入れる。






おっさっそく第一村人発見♪

いや、さっきの子も合わせたら第二か...

そんなことを思いながら、農作業をする男性へ声をかけた。

「すいませーーん!

あの山への近道教えてくれませんかーーー?」

声をかけられた男性はその声に振り向くや否や、顔をひきつらせる。






「お、お前!!

この村の者じゃないな?!」

そう言った途端、詩にどこからともなく向かってきたのは鳥の大群。

え...?

「待って俺は敵じゃな...っ」

言ってる暇もなく、詩は逃げることを余儀なくされた。

今のって...鳥使い...?

必死に逃げるもさっきの鳥の一部が伝達をしたのか、次々と村人の総攻撃にあう詩。

「くそっ...なんだこれ...」

詩は志貴の言葉を思い出し、アリスを使うにも使えなかった。

ー村の主に会うまで、その式神のアリスは絶対に使ってはいけない....

水使いや念力のアリスを身のこなしだけでなんとか交わし、闇雲に走る。

なんで志貴さんあんなこと...

しかし、ここでアリスを使ってすべてを台無しにすることだけは避けなければならない。

ここまで来たからには....






と、路地に逃げ込んだ先、道のど真ん中に老婆が佇んでいた。

「ばあちゃん!

そこ危ないからどいてっ」

詩がいうも、老婆は動かなかった。

詩は一瞬考えるも、次の行動に迷いはなかった。

このままでは、追手の攻撃を避けるとこの老婆にあたってしまう。

詩はきゅっと踵を返すと老婆の前に立ちはだかった。

志貴さんごめん...っ

俺は誰かが傷つくのは見てられないっ

追手たちは、ふっと一瞬、気配が変わるのを感じた。

何だ...今のは...

皆が思ったときには、すべての攻撃が跳ね返されていた。

四方八方、あらゆる種類の攻撃を一気にはねのけた力。

はらりと、誰かの足元に式神が落ちた。

これは、この青年が...?

村人は口をぽかんとあける。

しかし当の詩は、すでに村人たちは眼中になく、老婆に手を貸していた。

「ばあちゃん、ケガはないか?」

フードを深くかぶった老婆は少し頷いたようにみえた。

「ごめんな、俺のせいで。

家どこだ?

送ってくよ」

「お主...」

老婆のしわがれた声。

「え?」

詩が聞き返すも、またも村人たちの声があがる。

「お、お前もしかして....

式神使いか....?!」

びしっと詩を指さし、怯える村人。

「そうだけど、なんでこのアリスを知ってるんだ...?」

詩の肯定に、その場はどよめく。

「そ、そんな...

これが南雲さまに知られれば...」

「ああなんということ...」

「追い出すだけでは済まないぞこれは...」

途端に、村人たちの目が変わったのは、詩にでもわかった。

これは、あの目だ。

恐れる人の目。

何度も向けられた、軽蔑の視線。

そしてこの、殺気。

先ほどとは話が違う。

ここで死ぬわけにはいかない...

たとえそれが、志貴との約束を破ることになっても...

詩は覚悟を決めた。

「ばあちゃん、ちょっと下がってて...

一気にいくから...」

そう詩は言って、村人たちを見据えた。

同時に向かってくる、先ほどとは比にならない村人たちのアリスによる総攻撃。

詩もまたその力を出そうとさらに気を張った時だった。







「鎮まれえええええええ」






ぴたり。

そこら中に響いた地を揺るがすような声。

村人たちの攻撃は一瞬にして止んだ。

え...

と詩はその声の主を見つめる。

それは、詩の後ろにいた、あの老婆だった。

老婆とも思えないような迫力、凄み。







誰かが叫んだ。

「ア、アサ婆!!」

「なんでここに...?!」

村人たちはざわつき始めるが、詩は状況を呑み込めないでいた。

「それよりアサ婆、なんでそいつを庇うんだよ」

「そいつはここに来てはいけない...っ」






「黙れぇえええ」





また、この老婆が発したとは思えないような地の底から響くような声がして、村人たちは黙った。

そして、アサ婆と呼ばれた老婆は、詩と目を合わせる。

その瞳は歳を感じさせないほどするどく、ビー玉のように光っていた。

まるで、すべて見透かしたような瞳。

「...東雲 詩、ついてきな。

皆も戻れ。

こやつは正式な客人じゃ」

どうやら、この村でこの老婆の言うことは効力があるらしい。

村人はぶつぶつ言うも、「アサ婆がいうなら...」と散っていく。

「アサ婆、ついていこうか?」

若い男が寄ってくるが、「いらぬ」とアサ婆は一蹴する。

そして皆がいなくなると、老婆は歩き出す。

はっとして、詩はそのあとをついていく。

「あ、あのっ

さっきはありがとう、ございます」

なんだかすごい人だとわかったので、自然と敬語が出てくる。

「なんのことだ...」

「いや、あのさっき助けてくれたから...」

「わしが言わんでもお前はやる気じゃった。

その覚悟、嫌いじゃない...」

「なんで俺の名前知ってるんですか?」

アサ婆はその問いに立ち止まり、ゆっくりと振り返る。

「その目、思い出すの...」

アサ婆は問いには答えず、ただそれだけ言った。




作品名:高等部男主 作家名:asuka