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久々に、林殊に会う。



 靖王は、明日から、軍の訓練の為に、東海へ向かう。
 暫く、金陵を離れる事になる。皇宮へ行き、諸々の手続きと、生母静嬪へ挨拶をしてきた。

 靖王府へ戻ると、家職が『林殊が待っている』と。
 靖王が皇宮へ向かうと、間もなく、林殊はいつものように、ふらっと靖王府を訪れ、そして、ずっと靖王を待っていたらしい。
 林殊の訪問は、かつては、珍しい事でも何でもなかったが、林殊も今では、赤焔軍の部隊を任され忙しい。靖王府へ顔を出す事も、ままならなくなった。
 この前に会ったのは、いつだったか。
 靖王府がここに定まった頃には、毎日のように来て、当然の事のように、王府に入り浸っていた。
 林府に、父親から連れ戻されるまで、靖王府で暮らした事もあったのだ。
 林燮から、寝泊まりを禁じられても、靖王府に日参していた。すっかり王府の主よろしく、不自然さの無い態度に、訪れた林殊を、案内する王府の従者はいない。
 靖王か在るのが分かっていれば、塀を越えて最短距離で来たり、、、。


 林殊は書房にいる。

 靖王が外から戻れば、まず書房に行く。
 書房で待てば、靖王に会えるのだ。
 林殊自身、靖王府の書房は好きで、来れば必ず、書房に向かう。
 靖王も、この頃では中々会えない林殊が、ひょっこり書房に居る事があり、希少な刻を、少しも逃したくはなかった。
 そのせいか、靖王は、外務から戻れば、真っ先に書房に向かう。
 靖王自身、元々、書房で庶務を行っていたが、林殊を待つかの如く、庶務以外でも、書房に身を置くことが増えていた。


 
 明日から向かう、東海の軍務の内容は、とても数日で帰れるような内容ではない。半年という、長い任務だった。靖王が、これだけ長い期間、金陵を離れるのは初めてだった。

 靖王が東海へ出発すると、程なく林殊は梅嶺へ向かう。
 大渝に、不穏な動きがあるという。また大渝が、北の梅嶺の国境を、侵そうとしているのだろう。梅嶺は、大渝が欲しくてたまらない要所なのだ。梅嶺さえ領土にしてしまえば、粱との国境が閉鎖さされても、梅嶺の領内での商いができ、食料や日用品を扱う商人の、往来が可能になり、有事の際も、迂回せずに済む。何よりも梁への侵攻は容易になる。
 大渝は、北方の不毛な土地ゆえ、梁の豊かさを欲している。十数年置きに、決まったように侵攻してくるのだ。皇族の不和や、梁国内の乱れなどのきっかけを、利用して侵攻してくるが、今回、大渝に、どんな隙を見せてしまったのか。
 既に、大渝軍が、徐々に集まりつつあるという。
 だが、どれ程集まろうと、精鋭の揃う、北の精鋭、赤焔軍が蹴散らすのみ、なのだ。
 赤焔軍主帥 林燮としては、厳冬期になる前に、収束させたい。戦が長引く事は、林燮とて、望んではいない。いくら勝ち戦でも、長引くだけ、粱と赤焔軍の損失は大きくなる。





━小殊はまだ居るだろうか、、、、。━━
 以前、林殊が来た時、だいぶ、待たせてしまった様で、林殊は不貞腐れて、靖王に会わず、帰ってしまった事もあった。
━━まさか、今日、来るとはな。もっと時間のある時に、来てくれれば良いのに、、。━━
 そしたらゆっくりと話せるのだ。いつもそう思うのだが、林殊とて、自分の役割があるのだ。容易に時間が作れぬ立場になったのも、分からなくは無い。
 ただ、折角の時間を、慌ただしくしてしまうのが、靖王は惜しくてならない。
 息を弾ませて、書房へと向かう。
 書房の扉は閉じているが、林殊の気が漂って来るようだ。
「小殊?。」
 戸を開けて、靖王が書房に入る。
 林殊は立ちながら読んでいた書から、目を外し、『景琰が来た』とでも言うように、一瞬、目がほころび、そして直ぐに、少し怒ったような表情に変わる。
「やっと来た───。もう帰ろうかと思ってたんだぞ。」
「これでも、雑務を、さっさと終わらせて、急いで来たんだよ。」
「ん?、、。」
 林殊がくんくんと鼻を利かす。
「静嬪娘娘の天心!。」
「何が娘娘だ。こんな時だけ。」
━━普段、誰にも遜らぬくせに。━━
 だが靖王は、林殊の、誰にも不遜な所も、好きなのだ。靖王の母、静嬪の天心が食べたさに『娘娘』など、言った事も無い言葉が出る所も、可愛らしいと思う。
「点心は小殊が好きから、林府に届けろと、母は私にいつもの倍も、持たせたのだ。好きなだけ食べて、残りは持って帰ったら良い。」
「あ、、でも、今日は林府には帰らないし、、、持って帰るのはやめるよ。」
「?、ならば、赤羽営の者にでも、持って行けばいいだろう?。え、やめる?。」
「ん、、いいや。」
 靖王は、改めて林殊を見て、様子がおかしいのを感じた。荷物になるのを『面倒臭い』と言って、持ち帰らなかった事は、今まで何度かあったのたが、今日はそれとは少し違う。
 林殊の様子が、はっきりと何がおかしいのか、説明するのは難しいが、幾分寂しげな、、儚げな目をしている。
「、、何かあったのか?。赤羽営の誰かと喧嘩でもしたのか?。」
「いや、、違うよ。」
 林殊は、少し笑って言葉を返す。林殊は、自分に心を配るその言葉に、靖王らしさを感じたのだ。
「なら、、主帥と何か揉めたのか?。」
「違うったら!。」
 あまり靖王の心配が過ぎれば、仇となり、林殊の苛立ちも増す。
 だが林殊は、自分を心配しての事だと、よく分かってはいるのだ。
 いつもならば、大喜びで食べる静嬪の天心も、何故か今日の林殊は、喉を通る気がしない。
 いつもとは違う、心の沈みを靖王に察されまいと、林殊は天心に喜んで見せたものの、この状態で食べたいとは思わなかった。
「、、小殊?。」
━━何かあったのだ。━━
 他の者は騙せても、旧知の靖王を欺けるほど、林殊は芸達者では無い。忽ち、何かあったのを知られてしまう。
「、、、。」
 何も言えなくて、林殊は、つい黙ってしまう。
━━私にも言えぬ事なのか、、、。━━
 『親友の自分にも話せない余程の事』なのだと、靖王は思う。林殊は靖王に、隠し事などは無い。心が近過ぎて、手に取るように分かる心の動きを、隠す事など、とても出来ぬのだ。
「、、、、。」
 何とも言えないような、空気が流れ、言葉を出すのも憚(はばか)ってしまう。
━━小殊も忙しい。そう長くは、ここに、居られぬのだろう。━━
 林殊が心配でならなかったが、無言で過ごす刻が惜しかった。
━━別の話に気が紛れれば、心配事を打ち明けるかも知れぬ。━━
 以前この靖王府に、泊まり込んで遊んたりしたのが、大昔の事ようだった。
 それはほんの、四年ほど前の事なのだ。

「ああ、、そうだ、小殊。霓凰が会いたがっていたと、母から、言伝を頼まれていたのだ。霓凰が母の所に来たらしくて、母のに小殊の事を聞いていた様だ。」
「、、、霓凰が?。何で静嬪に?。」
「私が芷蘿宮を訪れた折の、会話のどこかで、小殊の話がかったとでも、思ったのかも知れぬ。
 霓凰とは、それ程まで、会っておらぬのか?。それこそ霓凰と喧嘩でもし、、、、。」
「違う!、、、違うから、、、。」
 林殊はじぃっと、呆れたような視線を、靖王に向けた。
作品名:再見 作家名:古槍ノ標