鬼滅の刃 外伝(非公式) 〜永遠につづくきせき〜
宏「また一緒にキャッチボールしようね!!」
仁「おう!」
宏は手を振り、友人の康(7)とともに去っていった。
〇路上
宏「アニキは凄いんだぜ!!」
宏「番長よりも強いんだ!!」
宏「康もアニキの“しゃてい”にしてもらいなよ!!」
康「“しゃてい”ってなーに?」
宏「えっと…」
宏「わっかんねえ!!」
〇宿海家・居間(夜)
芽衣子は小学校の宿題をしている。
芽「──それでね、お婆ちゃん入院したの」
鉄「そっかー」
鉄「みーこの姉ちゃんは今、実家にいないんだっけ?」
芽「おねいちゃんはね、埼玉にいるの」
鉄「なるほどなー」
鉄(もし、ばっちゃんに万が一があったら、姉ちゃんの所に引っ越さなきゃならなくなるかもしれねえな)
鉄(ここには、みーこの仲の良い同級生もいるのにな)
台所で夕飯の準備をしていた仁太郎が来る。
仁「隈川、わからないところはもういいのか?」
鉄「ああ、ありがとな!」
鉄男はノートの続きを書き始める。
芽「仁太くんは教え方がうまいからね!」
鉄「うん」
鉄(仁太郎は凄い男だ)
鉄(すでに大学受験の範囲まで勉強し終わってるからな)
鉄(なるべく父親や兄貴の負担にならないように国公立コースで計画してるんだな)
鉄「仁太郎と同じ公立高校(進学校)に行きてーんだよなー」
鉄「俺の頭じゃ、バスケ部やめないと間に合わねーかな?」
仁「今のペースで計画的にやっていけば大丈夫だろう」
芽「ねえ、仁太くん」
仁「うん?」
芽「仁太くんと くまちゃんの背が高いのはバスケ部だからなの?」
仁「どうだろうな…。でも、なんとなく、成長期にバスケや縄跳びのような骨に負荷をかける運動をするのは背を伸ばす効果がありそうな気はする」
芽「くまちゃん、なわとびでがまんすれば」
鉄「いや、俺べつに背を伸ばしたくてバスケやってんじゃねえぞ」
鉄「しっかし頭も使って腹減ったな。飯まだ?」
仁「もうちょい」
鉄「今日はカレーかな?」
仁「肉じゃが」
鉄「肉じゃがも美味いよな。仁太郎のは特に」
芽「そうだよねー」
芽「……くまちゃん 手伝うんじゃなかったの」
鉄「手伝うとも。俺は配膳と皿洗いの担当なんだ」
芽「芽衣子も手伝うよ?」
仁「ありがとう。でも、今日はあらかた準備ができたからまた今度な」
黒電話が鳴る。仁太郎は受話器をとる。
鉄「この家にちょうど使ってない部屋があって良かったよな」
鉄「なんなら、みーこのばっちゃんが退院した後もずっと住めば」
鉄「仁太郎とおじさんなら歓迎するはずだぜ」
芽「…………」
〇路上
3人の女子が歩いている。芽衣子、芽衣子の友達の女児A、その姉の女子高校生Bだ。
A「──芽衣子ちゃん!」
はっ
芽「え?」
A「どうしたのー、ぼーっとして」
女子高校生Bは芽衣子の視線の先を確認していた。
B「仁太郎じゃん」
A「あっ、ほんとだ」
B「一緒にいるのは恋人かしら」
B「仁太郎は髪の長い子が好きなのかしらね」
芽衣子はおかっぱ頭だ。
B「仁太郎 背伸びたよねぇ。高校までにもう5cmくらいは伸びるだろうから、その頃には180cmになってんじゃない?」
B「男前だし、モテるんだろうねぇ」
A「運動神経もいいよね」
B「あー、うちの(高校の)番長 仁太郎にあっさり負けたらしいよ。その番長ってのは空手の有段者で全国一位の実力なんだけどね」
A「仁太君は白帯なのに」
B「仁太郎は剣道の実力者にも勝ってるのよね」
〇宿海家・居間(夜)
仁「──いいから いいから。持ってくよ」
仁太郎は受話器を置く。
仁「悪い」
仁「ちょっくら親父んとこ行ってくる」
仁「すぐ戻るよ」
仁「もし、待ち切れないようなら──」
芽「大丈夫だよ」
鉄「ああ、そんなに慌てなくていいぜ!」
鉄(でも、仁太郎の移動速度なら、どっちにしろ、あっという間だろうな)
芽「仁太くん、気をつけて行ってきてね」
仁「ああ」
〇路上(夜)
てくてく 赤ん坊を抱えた女性が歩いている。
仁(あいつら(芽衣子と鉄男)に早く飯を食わしてやらねーといけねーからな!)
ビュン 仁太郎は屋根の上を(音もなく)一瞬で走り抜ける。その様子を
ばぁぶ 赤ん坊が不思議そうに見ている。
うふふ
女「どうしたの、みどりちゃん。ご機嫌ねえ」
〇会社・受付(夜)
父「助かったよ。ありがとう!!」
父は手に大きな封筒を持っている。仁太郎が届けた物だ。
ひらひら 涼しい顔した仁太郎は顔も向けずに片手をふりながら帰って行く。全く息切れしていない。
仁(親父が取りに来てたんじゃ、いつになっても仕事が終わんねーよ)
〇会社(夜)
仁太郎の様子を見ていた女子社員が話しかけてくる。
女「息子さん 美形ですね!!」(たしか次男の方よね)
父「あの子は母親似かな」
父「長男の方は僕似かもしれないけど」
女「でも、ご長男は東大出でしたね!!」
〇宿海家・居間(夜)
鉄男は右腕を切り落とされている。壁にもたれかかりながら座っている。
近くの卓袱台の陰には芽衣子が倒れている。
鉄(みーこを医者に診せねえと…)
鉄(俺は連れて行けそうにねえ。俺はもうすぐに死ぬ)
鉄(もうじき仁太郎が帰ってくる)
鉄(せめて、みーこだけは助けたい)
〇宿海家・外観(夜)
仁(妙だな。玄関の戸が少し開いている)
仁(きちんと閉めていったはずなのに)
〇宿海家・玄関(夜)
仁「!?」
仁(土足で踏み入った跡がある)
仁太郎は玄関の戸を開け放ったまま、居間へ急ぐ。
〇宿海家・居間(夜)
仁「どうしたっ、どっ、どうしたんだ、その腕!!」
鉄「落ち着け」
鉄「仁太郎」
鉄「鬼がまだ近くにいるかもしれねえから油断するな」
仁(鬼?)
鉄「俺のケガは致命傷じゃねえ」
鉄「みーこを医者に診せろ」
仁(芽衣子…?)
卓袱台の陰に芽衣子が倒れている。
仁「芽衣子!!」
仁太郎は芽衣子の容態を確認する。
背後で物音がする。
仁太郎がふり向くと、少し離れた廊下に見知らぬ若い男が立っている。男は襟を直している。土足のままだ。
仁(誰だ? 鬼? 人にしか見えねえが…)
男「そこから動くな」
男「たった今、そこの部屋で着替えたばかりでな。お前の返り血で服を汚したくない」
仁太郎はあっけにとられる。
鬼の手には血の付着した服がある。鉄男の血だ。
鬼は鉄男を見る。
男(服を汚しおって)
ヒュガッ 男の腕が触手のように変化して伸びる。その先端には刃が形成され、仁太郎を襲う。
仁「!?」
仁太郎は芽衣子を抱えて回避する。
仁太郎は男のいた廊下を見る。男はいなくなっている。
仁(今はそれよりも医者だ…!!)
〇海家・外観(夜)
芽衣子をおんぶした仁太郎が裸足のまま飛び出す。
〇路上(夜)
仁「芽衣子」
仁「死ぬなよ」
仁「死ぬな」
仁「絶対助けてやるからな」
疾走する仁太郎の背で次第に芽衣子が冷たくなっていく。
仁「死なせてたまるか」
仁「俺が絶対助けてやるからな!!」
〇診療所(夜)
医者は首を横に振る。
仁「な、なんだよ…」
医「手の施しようがない」
医「この子の体からは かなりの量の血液が失われている」
仁「俺の血を全部使ってくれたって構わないんだ」
作品名:鬼滅の刃 外伝(非公式) 〜永遠につづくきせき〜 作家名:鈴木蓮一郎