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鈴木蓮一郎
鈴木蓮一郎
novelistID. 68389
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鬼滅の刃 外伝(非公式) 〜永遠につづくきせき〜

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仁「芽衣子を」
仁「芽衣子を助けてくれ!!」
仁「先生!!」
仁「頼む!!」
 医者は困りはてる。

〇空き地(夕方)
 ドサッ 仁太郎が地面に倒れる。
 番長は拳を強く握り締める。
番「何だ、そのざまは!!」
番「今のお前なんざ、殴る価値もねえ!!」
 番長は去って行った。
仁(こんなんじゃ足りねえ)
仁(芽衣子や隈川が受けた痛みや苦しみは)
仁(こんなんじゃ全然足りねえんだ)
 仰向けになった仁太郎は無気力に夕焼けの空を見ている。
 しばらくして、宏が現れる。なぜかお面を着けている。
宏「仁太郎さん」
仁「その声は…宏か」
 仁太郎は起き上がる。背伸びをする。
仁「いい天気だったもんだから寝ちまったぜ…」
宏「ごめんなさい」
仁「?」
宏「俺も鬼を倒したかったから」
仁「!?」
宏「『鍵』を開発したんですが」
仁「おまえ本当に宏か?」
宏「俺の名前は小鉄です」
小(宏)「どうか俺の話を聞いてください──」

〇路上(夜)
 仁太郎が歩いている。
 突然、
女「キャーッ!!」
 女性の悲鳴が聞こえる。
 仁太郎は悲鳴の聞こえた路地裏へ走る。

〇空き地(夕方)
小「──という訳なので、宏君の肉体を借りているだけなんです」
仁「にわかには信じられないな。お前が別の世界の未来の人間だなんて」
小「仁太郎さんなら信じられるはずですよ。だって仁太郎さんには説明のつかない特別な力があるでしょう?」
小「やっと見つけたんです。あなたを」

〇路地裏(夜)
 鬼(雑魚鬼)は気を失っている女性を食べようと近付く。鬼は明らかに人間とは異なる姿をしている。
 仁太郎は2つの鉄塊(500gx2)を取り出す。2つの鉄塊を合わせる。
 バチッ パリ… 『錬成』により、2つの鉄塊は融合する。一振りの日本刀に変化する。刃は漆黒。
鬼「なんだ、お前、それ。血鬼術みたいだな。人間なのに」

〇空き地(夕方)
小「仁太郎さんが武器を『錬成』できるのは生まれつき『鍵』を継承しているからなんです」
仁「継承? 親父かおふくろからか?」
小「いいえ。どこかの世界のいつかの時代に生きていた人からです」
小「そこで役割を終えて解放された『鍵』を仁太郎さんは継承しました」
仁「鍵なんて持ってないぞ」
小「ええと、この時代の方には分かりにくいと思いますが、仁太郎さんの固有記憶にですね、データとして付帯していて目に見えるものではないんです」
仁(固有記憶が何か分からないが後で訊こう)
仁「(未来の専門用語は)よく分からんが、どうして俺が継承したんだ?」
小「仁太郎さんが適性のある固有記憶、肉体、頭脳の持ち主であることが理由の一つです」
小「俺の『鍵』は ちゃんとした人にしか渡したくないですから」

〇路地裏(夜)
仁「お前は何人喰った?」
鬼「そうさなぁ。この女を食えば、80人になるか」
鬼「あの方のために、もっともっと喰って、もっともっと強くならねば」
仁「余所見をするな」
鬼「ああん?」
仁「俺を見ろ」
 鬼は仁太郎を先に仕留めるために向き直る。
 ゴトン 鬼の頭が地面に落ちる。
鬼「!??」
 ボロォ… 鬼の体が崩れていく。
鬼「く、頸を斬られた!?」
鬼(速すぎる!!)

〇空き地(夕方)
小「“鬼”は特殊な器官を体内に持ち、その器官によって固有記憶などを管理する『システム』と繋がった人間です」
小「俺は公式の『システム』と繋がっていますけど、鬼は非公式の『システム』と繋がっていると考えられます」
仁「鬼が繋がっている非公式の『システム』は誰が作ったんだ?」
小「わかりません。公式の『システム』は俺達、未来人が非公式の『システム』を観測して得られたデータをもとにして構築されたものですけど」
小「鬼である限り弱点の器官は例外なく脳に隣接しています。通常は専用の武器で頸を切断されるとその鬼は『システム』と正常な繋がりを保てなくなり消滅します」
小「ただ、1つだけ念頭に置いておいていただきたいことは、頸を切断しても油断してはいけないということ」
小「鬼によっては、弱点の器官を分散したり分体に紛れて本体を隠したりしている場合があります」

〇路地裏(夜)
 仁太郎はまるで殺虫剤をかけたゴキブリがきちんと死ぬのを確認するかのように、冷たい目で頸の切断された鬼を観察する。
鬼「あ、兄ちゃん……」
仁(走馬灯を見ているのだろうか)
鬼「ごめんよ。おいらが悪かったよ……」
鬼「待って……」
 鬼は手を伸ばす。

〇路上
 芽衣子(7)が仁太郎(11)の後を追いかける。
芽「仁太くん!」
芽「待ってー」
 仁太郎は芽衣子と手を繋ぐ。

〇路地裏(夜)
 仁太郎は鬼の手を握っている。
 鬼は安堵した表情で消滅する。
仁「…………」

〇空き地(夕方)
小「仁太郎さんの扱う武器は日本刀ですか?」
仁「ああ」
小「刀の使用感はいかがでしょうか?」
仁「凄くいいと思うぞ」
小「どこか改善してほしい所はありませんか?」
仁「何も問題ないぞ。扱いやすい」
仁「鬼を倒そうと思って刀を作り出すと、あの形に落ち着くんだよな」
仁「俺 べつに刀に詳しくねえんだけどよ。見事な刀になるんだ」
小「昨日の夕方の話の続きをしたいんですが、その前に何かご質問はありますか?」
仁「固有記憶って何だ?」
小「その個体をその個体たらしめる必要最小限の記憶データと遺伝子データです」
仁「完全なデータではないんだな」
小「はい。一部の個人情報を削除するためでもあります」
小「例えば、公衆浴場に行った際の視覚記憶からは自分や他人の性器などの記憶が削除されます(女性の場合は乳房やボディラインなどの記憶も削除される)」
小「俺の担当教授は“記憶を全世界の人達に見てもらったと仮定したとき、照れるだけなら良いが恥ずかしいのは駄目だ”とおっしゃっていました」
小「原則として固有記憶にアクセスできるのは本人だけですが、大昔に発生した個人情報流出事故の名残で防護策がとられた状態になっています」
小「固有記憶は『システム』の記憶領域に保存されます。各個体ごとに専用のスロットが割り当てられています」
小「鬼が脳を破壊されたとき、必要な記憶を保ったまま脳が復元されるのも固有記憶のためです」
仁(一体、どれほど巨大なコンピュータを使っているんだ。いや、未来の話なら、真空管よりも小さな部品で構成されているのか)
仁「そんじゃ、固有記憶を複製すると同じ人間がたくさんできるのか?」
小「それは大昔の実験で不可能であることが確認されています。(必要最小限でなく)完全なデータからなる固有記憶でさえも複製すると2人目以降では廃人になることが実証されています」
小「もちろん、当時もそんなキモい実験は法律で禁止されていたので、その実験をした科学者は裁きを受けましたけどね」
仁「機能している固有記憶には魂が付帯しているのか」
小「その仮説を支持する哲学者もいますね。仮説というか、“不滅の魂は存在するか”という問いは紀元前から考え続けられていることですよね」
仁(ああ、そうか。小鉄は科学者だから魂みたいなものは研究対象にしにくいんだな)
小「他にご質問はありますか?」
仁「ない。大丈夫だ」