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鈴木蓮一郎
鈴木蓮一郎
novelistID. 68389
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鬼滅の刃 外伝(非公式) 〜永遠につづくきせき〜

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仁(奴の居所がわかってんなら俺のやることは一つだけだ)
仁(必ず奴に落とし前をつけさせる)
 仁太郎は見覚えのある男性が前方を歩いていることに気づく。
仁(鬼の始祖!!)
 鬼(鬼の始祖)は人混みの中を歩いている。
 ジャリッ 仁太郎が走り出そうとする。しかし、
A「お母ちゃん!」
 はっ
仁「!」
 仁太郎のすぐ近くを女児Aとその両親が通りかかる。
 スー フーッ 仁太郎は怒りを抑え込むために深呼吸する。
仁(この人混みでは巻き添えが出る)
 近くには巡回中の警察官の姿も見える。
仁(警察じゃ手に負えない)
《「返り血で服を汚したくない」》
仁(ここで奴を引き止めても、会話が通じないだろう)
 通行人で隠れていた鬼の全身が見える。
 鬼は1人の女児を抱いて1人の成人女性と一緒に歩いている。
仁(最初に見た あいつの姿から何となく想像していたが、あの野郎 やはり人間のふりをして暮らしていやがる)
 鬼は家族とともに車に乗り込む。運転手がドアを閉める。

〇鬼の始祖の屋敷・正門前(夜)
 車が敷地内へ入って行く。
仁(でかい屋敷だな)
 仁太郎は電柱の町名を確認する。
仁(小鉄から聞き出した住所とも一致している)
《「可能な限り日中に!」》
仁(せめて夜が明けるのを待つべきか)
仁(鬼の始祖が抱いていた あの女の子も鬼なんだろうか。そうは見えなかった)
仁(最悪、鬼の始祖以外の全員が鬼でなかった場合、人質にとられるおそれがある)
仁(鬼の始祖は日中は屋敷から出られないはず)
仁(一方で、家族は(鬼でない場合)外出する可能性がある。そうなれば人質を減らせる)

〇鬼の始祖の屋敷・正門前
 仁太郎は通行人Aに挨拶する。
仁「おはようございます。いい天気ですね」
A「おはようございます。ええ、今日は一日中 晴れるでしょうね」
仁(絶好の鬼退治日和ってわけだ)
A「こちらのお屋敷にご用ですか?」
仁「ええ。使用人として雇っていただけないかと」
A「ああ、それでしたら、ちょうど今1人募集していますよ」
A「1週間程前になるでしょうか。1人故郷に帰ったとかで」
仁(あるいは喰われたか…)
A「今、女中1人と運転手1人の合計2人しかいないので、きっと雇っていただけると思いますよ」
 屋敷から車が出て来る。運転手、女児、成人女性の合計3人が乗車している。
仁「こちらの旦那様はお子様がいらっしゃるんですね。ご子息はいらっしゃらないのでしょうかね?」
A「そうなんです。跡取りがまだなんです」
仁「ご息女がお一人いらっしゃるだけなんですねー」
A「ええ、今、奥様と一緒に乗ってらっしゃった」
仁「旦那様は一緒じゃなかったですねェ」
A「旦那様は皮膚が弱くて日中は外出を控えていらっしゃるんですよ」
A「雇っていただけるといいですね。ごきげんよう」
 ペコリ 通行人Aは会釈し、去って行った。

〇鬼の始祖の屋敷・正門前
B「ごきげんよう」
仁「ごきげんよう」
 通行人Bは去って行った。
仁(今、屋敷にいるのは鬼の始祖以外は女中1人だけってことで間違いなさそうだ)
仁(そんじゃ…)
仁(いっちょ行ってみっか!)
 タンッ 仁太郎は正門を飛び越える。

〇鬼の始祖の屋敷・前庭
 仁太郎は『錬成』で2つの鉄塊を1本の日本刀に作り変えながら走り抜ける。
仁(奴と対峙してからじゃ間に合わねえからな)
仁(廃刀令のない時代だったら、普通に鞘に収められるんだが)

〇鬼の始祖の屋敷
 玄関は広々とした吹き抜けになっている。
 カチャッ 両開きの大きな扉を開け、仁太郎が屋内に入ってくる。
 ちょうど仁太郎の正面の階段に鬼(鬼の始祖)がいる。
鬼「おや、どちら様でしょうか」
仁(この野郎)
 ミシ ミシ 仁太郎の握る柄が軋む。
鬼「お前は、あのときの小僧か」
 ミシッ 仁太郎が鬼に斬りかかろうとする。しかし、
と「お客様でございますか、旦那様」
 はっ
仁「!」
 女中の山田とめ(50)が来る。
 スッ 仁太郎は日本刀を背後に隠す。
仁(この女中も鬼でない可能性がある)
鬼(この剣士(仁太郎)は今すぐにでも私に斬りかかりそうだ)
鬼(一方で私は山田とめがいるので容易には手出しできぬ)
鬼(この屋敷に住み続けるならば、山田とめを喰わないでおいた方があとあと面倒が少ないだろう)
鬼「ああ、とめさん、丁度いいところに来た」
鬼「会社に荷物を受け取りに行ってもらえないだろうか」
鬼「会社に行けば分かるようにしてあるからね」
 しげしげ とめは仁太郎の様子に違和感を覚え、観察している。
鬼「こちらの御仁(仁太郎)のことは私に任せなさい」
仁「…………」
と「かしこまりました」
 とめは玄関の外へ出た。
鬼「それで? お前は何をしに来たんだ?」
 とめは陽光の下を歩いている。
仁(女中も鬼ではなかったな。人質にとられなくて良かった)
仁「……俺は宿海 仁太郎」
仁「友の仇討ちのために来た」
鬼「くだらぬ」
鬼「そんな切れ味の悪そうな黒色の刃で」
仁「ああ、それと…」
鬼「?」
仁「ここに猿山の大将がいるって聞いたもんだから」
仁「格の違いってやつを見せてやりに来た」
鬼「…………」
 仁太郎は刀を構える。
仁「いくぞ」
 仁太郎はいとも簡単に鬼の頸を斬る。しかし、
仁「!?」
 鬼の頸は斬った直後から再生する。何事もなかったかのように。
 ヒュ 鬼は仁太郎に攻撃する。
 ガキン ズルッ 仁太郎はとっさに刀で防御する。しかし、防ぎきれない。
 ドス 鳩尾を突き刺される。
鬼「どうした。格の違いを見せてくれるのではなかったか」
 ボタ ボタ 床に仁太郎の血が落ちる。仁太郎は出血を何とか止めようと傷口を手で押さえる。しかし、
 ジワ… 仁太郎の手の隙間から血が漏れて衣服に拡がっていく。
鬼「しかし、たしかに今のお前の動きは素晴しかったと認めざるをえぬな」
鬼「お前のような優れた肉体をもつ者には今まで会ったことがない」
鬼「強い鬼を造ろうとしているのだが」
鬼「子供から大人まで様々な人間で実験してみたが、どいつもこいつも私の理想からは程遠かった」
《「あ、兄ちゃん……」》
仁「…………」
鬼「お前ならば上弦の壱に相応しい」
鬼「いや、お前だけでいい。お前さえいれば他の塵芥なぞいらぬ」
鬼「どうだ、仁太郎?」
鬼「お前は選ぶことができるのだ」
鬼「他の者とは違う」
鬼「鬼になれば、その致命傷ですら治る」
鬼「鬼になるがいい」
仁「ならない」
鬼「!」
鬼(ぬかった。あの致命傷では、もうすぐ死んでしまう(夜になるずっと前に死ぬ))
鬼(今すぐに無理に鬼にして暴走状態になった仁太郎に屋敷を破壊されては(陽光が入り)こちらの身が危うくなる)
鬼(私の身が危うくなっては本末転倒だ)
鬼「よもや、お前は死んだ後に私が手にかけたお前の友(芽衣子と鉄男)と再会できるだなぞと考えておらぬであろうな?」
鬼「天国も生まれ変わりもありはしない」
仁「たとえ、そうであったとしても、俺が鬼になることはない」
鬼「……やむをえぬな」
鬼「さらばだ、仁太郎」
 ヒュボッ 鬼は触手のように腕を伸ばし、腕の先端に形成した醜悪な口で仁太郎を捕食しようとする。
仁(死ぬ)
仁(負ける)