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「――え？」

　バリツは眼を見開いた。

　妖しくきらめく、桃色の相貌。
　蠱惑的な微笑み。
　目の前にあの幼女が、ふわりと浮かんでいた。

　自分の頭に、その小さな手が乗せられているようだ。

　ドキリとしたバリツから、幼女はふわりと浮かび上がり遠のく。
　見遣れば、その姿はきっちり着こなした、メンズ風スーツ。ベレー帽。
一昔前の――典型的な映画監督のファッション？

　その手に何かが握られていた。
　古風な映画撮影の始めと終わりに用いられた、カチンコだ。

「……は？」

　バリツが瞬きした途端、幼女はカチンコを鳴らした。
　刹那、視界が暗転する。


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