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炬善(ごぜん)
炬善(ごぜん)
novelistID. 41661
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CoC:バートンライト奇譚 『毒スープ』後編(下)

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 だが、どうしたことか――アシュラフもまた、固まっていた。
普段とは異なる反応を前に、面食らったとでも言うのだろうか?


 二人はそのまま、固まっていた。
 奇妙な沈黙が流れた。
 フランスでいう天使が通った――のレベルではない。
今この場は、天使ですら引き返すだろう。


 どれともわからぬ虫たち。どことも知らぬ先へと急ぐ車。誰とも知らぬ人々を乗せる電車。窓の外からしんしんと流れ続ける、穏やかな夜の音色。
 
 はじめに動いたのは――アシュラフだった。

 少女は手にしたグロックの構えをとき、その手をそのままバリツの胸に押し当ててきた。ずっしりとした銃身の重みと、優しくか細い五指の感触が、パジャマを伝った。首根っこをひっつかんでいた手は、襟元から内側へ入り込み、バリツの肩の肌に直接触れていた。ひんやりしていた。くすぐったかった。

 着崩れた黒衣の、小さな肩に乗せた自身の両手は、やたらと大きく感じた。首まわりの柔肌に、指を僅かにうずめてしまっていたのに、その両手を離せなかった。離した途端に、何かが崩れてしまいそうな気がして。
ただ少女の暖かみが、その儚げな――しかしはっきりと脈打つ心臓の鼓動が、掌に広がっていた。その小さな体を駆け巡る命の脈動を、血流を感じた。

「詳しく……話しなさい……」

アシュラフと目が合った。
 その金の瞳は、トロンとしていた。
頬の赤みは若干引いたが、桃色を帯びていた。
いつしか背中を反らしている小さな肢体の重みを、より確かに感じた。下腹部に、細く柔らかなその内股の熱が広がっていた。
 
バリツ自身の心臓が高鳴る。
息が――苦しくなる。

 この高鳴りは……なんだ?