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アバランチinわたし

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それに犯行声明を出したとしても、末端で働く職員はどうなるのか? 家族の為、仕事の為という理由をつけて、セキュリティシステムを強化するだけで、実際は魔光炉に常駐しているのではないのか?
ゲームの中では脱出ぎりぎりまで、神羅兵は襲ってきた。神羅が兵士を道具として扱うなら、爆発のリスクを承知で働かせるだろう。神羅がクソであれば尚の事そうなる。
 
「神羅の職員の家族が人質にされ、無理やり働かされる可能性…」
 
ティファは憎しみ囚われて視野が狭くなっていた。アバランチの計画に綻(ほころ)びがある事に今になって気付いた。
 
ティファは魔光炉爆破プランを変更するようにバレットに相談に向かった。
 
破壊行為を完全に諦めた訳ではないが、少しだけ未来が修正されたかもしれない。
 
「今更計画を変更するだと!?」
バレットは頑固だった。
神羅で働く兵士は星に寄生する害虫だとし、爆発に巻かれて死んでもそれが罪であり罰だと主張した。
 
バレットの故郷のコレル村は神羅に焼き払われていた。魔光炉建設中に事故が起きて、神羅はそれをコレルの魔光炉建設反対派がやった事にし闘いが起きた。神羅は事故を隠蔽する為、住民を虐殺するという暴挙に出た。バレットはその混乱の最中に腕と親友のダインを失った。マリンはダインの子供であり、その子供の分も含めて神羅に強い復讐を誓っていた。
 
バレットはティファとは違い神羅兵達による直接的な暴力を目撃した。魔光炉に常駐している職員も兵士と一纏めにし、人間扱いしていなかった。
 
バレットだって、元々、魔光炉に賛成していた。コレル村が潤うからと魔光炉建設に積極的に賛成した。今、魔光に賛成していて魔光炉で働く職員と本質的には同じではないのか? 
 
コレルを攻撃した兵士と、魔光炉を運用していた職員達は同じではない。職員は事故のリスクがある中で働かされているだけで社会の底辺かもしれない。神羅に家族を人質に取られてイヤイヤ働かされているだけかもしれない。
バレットはそんな弱い立場な人々にも星の為に死ぬべきだと思うのか?
 
バレットの血管が浮く。
【魔光に賛成していたバレットは神羅と同じ】その文言に意識が取られて、会話の殆どを識別できず耳からスルーしていた。
弁解をしなければ今すぐに銃から火が拭き出しそうだった。
 
バレットの心を落ち着かせるには希望しかない。
バレットは今、親友を失った不甲斐ない自分を攻めている。魔光炉建設に賛成しなければダインを死なせる事もなかった。毎日、失った腕を見せられ、助けられなかった親友を思い出し、怒り狂う。破壊衝動に囚われているバレットを救う方法はあるのか?
 
 
 
ダインは生きている。
 
 
「ダインが生きているだと!?」
 
でも生きている。ゲームではそうだった。
 
「ふざけるな!」
 
ふざけてはいない。確かに生きていた。
 
「オレはあいつが底なしの谷に落ちていくのを見たんだ! オレの腕がちぎれ、その腕と共に落ちていくのを!」
 
いつもその光景を思い出しては、気を狂わせているのだろう。今すぐにここから出ていかなければ、私の身が危険に晒されるだろう。外はマテリア無しでは危険だ。魔物に殺されてしまう。
 
そういえばこの世界の人々はマテリアを装備するのが当たり前だったか…
 
もしかしたらダインはマテリアを使って生き残ったのではないか?
 
谷から落ちて助かる魔法は宙に受けるレビテトだろうが、そんなマテリアは確かゲーム内に存在しなかった。
 
このままではバレットに殺される。
逃げようとしたとき、クラウドが言った。
 
「オレなら剣を壁に突き刺しながら谷を登る事ができる」
 
【クラス1stだからできる】
という事でだけで終われない物理現象だった。
 
「そうよ! まだダインは生きているかもしれない!」
ティファがバレットを諌める様に言う。
 
「バレットはダインの死体を確認しなかった。もしダインが生きているなら、今頃マリンを探しているかもしれない…」
 
バレットから憎しみの感情が薄れる。
ダインの生存を信じる事でマリンを今よりももっと守らなくてはいけない存在だと思う様になったバレットは、神羅に睨まれるリスクを犯せなくなった。
 
 
ジェシーやウェッジ、ビックスはどうなのだろろうか。三人は原作において経歴が不明だった。なぜアバランチに入ったのだろうか?
 
本名ジェシーラズベリー、ビッグス、ウェッジとは幼馴染で、もともとは女優志望だったそう。神羅の社員だった父が魔光炉の整備中に魔光中毒の事故が起きて昏睡状態になったのがきっかけに夢を捨て、アバランチに参加した。
 
ジェシーはアバランチの活動にとって欠かせない存在で、資金源の多くを提供している。
 
父親の元同僚(反神羅派)とのコネクションがあるのか、爆弾から偽造IDの入手まで、魔光炉破壊の重要なキーパーソンであるといえる。逆にいえばジェシーさえいなければバレット達は魔光炉を破壊しよう等は思わなかったのかもしれない。
 
ジェシーはバレットから破壊の熱が覚めたのを見て、自身の熱も冷めている様だった。
ジェシーは犠牲者を出さない様にしたいという点で、メンバーと意見が一致している。
 
魔光炉の整備中に事故が起きても神羅は未だに魔光炉を運用し続けるという現実。爆弾予告をしても社員が逃げられない様にがんじがらめにするかもしれない。
 
 
爆弾はセフィロス破壊の為に取っておけ。
 
 
セフィロスという単語を出した途端、クラウドとティファが反応した。
魔光中毒で記憶が曖昧でもクラウドにとってセフィロスが敵である事は認識していた。
 
「なんで貴方がセフィロスを知っているの? 貴方もしかしてニブルヘイムの出身なの?」
 
ゲームの外の世界から来た。と言うよりも、ニブルヘイム出身者とした方から話を進めやすいかもしれない。
ニブルヘイムにはセフィロスが到達する場所で、目指すなら正解だとは思う。
 
ニブルヘイムといえば、燃やされたはずの村なのに、元通りの形に正確に復元されていた。
その理由について、ティファの部屋にある机に神羅社員による報告書が書いてあったはず。
しかし、思い出せない。リユニオンとか約束の地とか書いてあった様な気がするが、その説明をしても今のクラウド達に伝わる気がしない。
 
神羅が過去の罪を隠蔽する為にニブルヘイムとそっくりな村を作っている。ニブルヘイムを知る者が尋ねて来たら誘拐し、口封じをしている。私は故郷に里帰りして、誘拐と口封じの現場を見てしまい、ショックで記憶を失った。そういう事にしよう。
 
 
「つまり神羅は私達の故郷で未だに悪さをしているのね…」
 
ティファの一言でメンバーの怒りに火が着いた。星の命や魔光炉云々の問題ではない。神羅による直接的な蛮行が今まさに行われている。それを見逃す事ができる主人公達ではなかった。
 
ティファとクラウドが準備を始めると、バレットは準備をしていなかった。
 
マリンを置いていけないのだ。
 
エアリスのお母さんがマリンを預かるのがストーリーの本筋であった。
またエアリスを連れていかないと、メテオを防ぐ為のホーリーが発動されない。
作品名:アバランチinわたし 作家名:西中