アバランチinわたし
「はあ? この世界はゲームの世界だって?」
バレットは笑ってみせた。
その反応は正しい。でもだからこそ、この先に辿るバレットの運命を知っているともいえる。
ダインが生きているのを知っているし、そのダインは正気を失っていることも。
ダインはコレル村の事件を機に心を病み、、人間、世界、自分さえもなにもかも壊したい衝動に駆られている。
実際に何人もの罪のない人を殺したダインについて。バレットは今更何もできない。。ダインの娘であるマリンは生きている。そう伝える事はできるがダインは、死んでしまった母の元にマリンを送ろうと言い出す。バレットは正気ではなくなっていた親友と戦わざる負えない状況になってしまう。
ダインからは、マリンを抱くにはこの手は汚れすぎたと言われ、妻の形見であるペンダント渡される。ダインは、マリンを泣かせるなよと言葉を残し、底なしの崖に身投げをする。
アバランチが魔光炉を破壊していたら起こっただろう未来においてバレットは、「魔晄炉を爆破して罪なき人の命を奪った自分の方こそ汚れている」そう言って絶望しながらダインの死を二度も受け入れないといけなくなる。
バレットはこの話を真剣に聞いていた。
ゲームの世界にしては不幸過ぎる話。
子供向けの話ではない。
だがバレットが歩むシナリオである。
だがゲームの世界だとしても同じ事が起こるとは限らない。ダインが人を殺してるとしても、ダインは人を殺した事を苦しんでいる。だからこそ自死を選んだ。
ダインに罪を重ねさせない様にできるのは、バレットしかいない。今度は生きる様に説得する事ができるかもしれない。
シナリオ通りならジェシーやウェッジ、ビックスは死ぬ事になるし、ティファとクラウドは戦いの果てにセフィロスを倒せるが、セフィロスの残したメテオかあるいはライフストリームがメテオと戦ったことへの後遺症でミッドガルの子供達は病気になる。
これらの話を信じて貰うにはクラウド達しか知らない事を聞かせるしかない。
たとえばティファは子供の頃、友達と一緒にニブル山に登り橋から落ちたこと。クラウドがティファを助けて下山するも大人達から攻められた事。
ダンカンという人から武術の指導を受けたこと。
たとえばティファとクラウドが将来を語り合った給水塔での話。
クラウドは英雄と呼ばれたセフィロス、ジェネシス、アンジールの様なソルジャーに憧れていたこと。
クラウドが魔光中毒にあり、ザックスの記憶とごちゃまぜになっている等の話も、まずは私が外の世界から来たというのを信じて貰う必要があるだろう。
第2話
飛空艇の存在。飛空艇がレビテトの様な作用で浮いているなら、レビテトの様な宙に浮くマテリアは作ろうと思えば作れるかもしれない。
神羅がその技術を非公開とし独占しているとすれば、制空権を支配したいからで、この技術が他国(ウータイ)等に渡るのを恐れてるのかもしれない。
水系のマテリアも作れるものの作らないだけなのかもしれない。神羅は不祥事を起こしたとき、火を使って街を焼き、諸々を隠蔽しようとする。効率の良い火消し魔法が普及していると証拠隠滅の弊害になる。
『もういい。』
バレットの一言で空気が変わる。
『お前の話、全てを信じる訳にはいかない。だが、ダインが生きている事は信じたい』
バレットはマリンを連れて行く決断をしていた。
『ダインが生きてるならマリンの顔を見せてやりたい。』
マリンを目の前すればきっとダインは死なない。マリンを死んだ母親の元に連れ行こうとか心にも無い事は言わないはず。
『ダインは親に戻る資格が無いと思って身投げしたんだろ。だったら資格なんていらない事を証明してやる。俺は親になる資格なんてないけど、マリンの親だ。オレはまともな親じゃないけど資格なんて関係なくやってきた。ダインにだって、きっとできる。』
ダインは親友であるから信じる。きっと絶望を乗り越え、前を向いて生きてくれる。それがバレットの考え方だった。
『お前の話が本当ならレッド13はアバランチと同じ目的を持つ者。放ってはおけない。ジェシー! 神羅に乗り込む為にはどうすればいい?』
「既ににいくつか偽造した社員証があるわ。それを使えば正面玄関から堂々と入れるはずよ。」
そういえば神羅にはセキュリティが施された階層があった。ゲームではセキュリティを突破するギミックが都合良く散らばっていたが…
『レッド13を救出したらオレはそのままミッドガルを出る。古代種とか、エアリスについてはよく分からんから、そこはお前がなんとかしろ』
『もし俺達が戻らなかったら、マリンの事はお前達に任せた。』
神羅に行く俺達というのは、クラウド、バレット、私。
クラウドは戦力的に必要。バレットはリーダー兼見届け人として、私が選ばれたのは当然レッド13の顔を知るのは私だけだから…
クラウドの言葉が思い出される。『神羅に捕まったら実験体にされる。』
北条博士が頭に過る。レッド13とエアリスを交配させて古代種の遺伝子を残そうとか考えるマッドサイエンティスト。異常な人だ。
レッド13の奪還に失敗してもし私が捕まるなら…
ステータス画面を開き私の強さを確認してみる。ついでにクラウド達のレベルを見る。
神羅攻略にはクラウドとバレットのレベルが20くらい欲しいところだが、二人共まだ一桁である。
修行してから神羅に潜入する方がいいだろうが、それにしても私のステータス…
クラウド達と比べてステータスが半分もいかない。にも関わらずレベルが37になってる…
伸びしろがない!
ミッドガルの敵をいくら倒してもレベルは上がらないどころか、ボス戦等で一撃でもダメージを受けたら終わる。フェニックスの尾で助かるとはいえ、痛みに対する対策ができないと、この先やっていけそうにない。
マテリアの組み合わせで何とかならないのか?
私の場合、マテリアが近接しててもチカラを発動できるという特異体質。ステータスUPのマテリアを大量に身体に貼り付ければ、低いステータスを補えるかもしれない。
同時魔法についても特典があるはず。冷気、炎、雷を3つ持てば、水ボールで敵を包んだまま電気を浴びせされるかもしれない。無駄なく電気を浴びせられ、普通にサンダーを使うより、威力が増すかもしれない。
外に出て色々練習試してみる。
バレット「お前何やってんだ? 神羅にこれから突入しようって時に、まさか今からレベルを上げるつもりか?」
え? でも神羅ビルには機械的なボスが出ますし、今のクラウドさん達のレベルでは勝てないのでは?
「お前のいうゲーム世界がどんなものか知らんが、実際に戦ってみないと判らないだろう? 神羅にいるセキュリティマシンのレベルが実際に俺達より高いかどうか決まった訳ではないだろう」
確かにそうだが、少しばかり命知らずの様な…
作品名:アバランチinわたし 作家名:西中