ハリウッド、クロノトリガー
勇者バッジを着ければ「グランドリオンはどうした?」と人々から言われる。
魔族に奪われて折られた事。情けなくて決して言えない。先代の勇者達の名を汚す様で、どうしても勇者バッジを着けられなかった。
だが今回勇者バッジをタータが取り、そのタータはデナドロ山に向かった。これが単なる偶然といえるか?
「サイラス…」
カエルはサイラスに導かれている気がした。亡き勇者の魂が、もう一度この地に向き合えと言っている気がした。
カエルは山頂でタータを見つけた。
だがタータは夢か幻かふっと消えた。
タータの消えた場所にグランドリオンの片割れが落ちていた。
折れて滝に落ちた筈のものが、なぜ山頂に…
カエルはグランドリオン手に取ると、グランドリオンが喋っている事に気付いた。
「オレはグランだ。弟のリオンを探しているんだが、お前だろ? 弟を持っているのは。」
「お前を、探すの大変だったんだよ。子供に取り憑いて噂を流したり、幽霊やってみたり。」
グランは、タータ少年が持つ勇者バッジからリオンの匂いを感じたという。勇者バッジの持ち主がリオンの持ち主と思い探しまわったそう。
グランは子供達に憑依して、バッジを持つタータがデナドロに登ったという噂話を振りまいて、バッジの持ち主が来るのを待っていた。
「わかった? 分かったら早く僕を弟のとこへ連れて行きなさい。」
カエル「すまんが、まだ砂漠での仕事が…
クロノ達は言った。意味不明だけど、仕事は代わりにやっておくよと。
カエルはグランを弟に合わせに向かった。
グランとリオンが再会すると、大喜びし、互いに一つに合体し、元のグランドリオンに戻った。折れたキズがないどころか、新品の様な輝きを放つ。
夢か幻か、カエルはこの後グランドリオンから声が聞こえる事はなくなった。
カエルはクロノ達の元へ戻った。グランドリオンを携えて…
ボッシュとグランドリオン
荷車を押して遺体を運ぶクロノとカエル
砂漠には一万体の骸骨兵の亡骸がある。
放置しておけばまたビネガーに利用されかねない。
タバンはブルドーザー風の車で骨を集め、海に捨ていた。
マール「ねえ、カエル。あのタータは幻だったんだよね? 勇者バッジは本物のタータがまだ持っているとして、取り返さなくていいの?」
カエル「いいんだ。バッジは元々重荷でしかなかったから。勇者バッジ、貰ってくれて助かってる。
ルッカ「もしかして、勇者バッジ、取られたののではなく、あげたとか?」
カエル「あげたら皆にオレは怒られるだろうな(笑) でも取られたとなれば不可抗力だ。皆が欲しがるから取られるのは仕方がない。」
ルッカ「にしてもグランドリオン…。折れたものが生き物みたいにくっついたの。まるで魔法ね…」
マール「魔法…。最果てのお爺さんなら、グランドリオンの正体知っているかも。」
カエル「最果て?」
クロノ達は歴史に影響を与えない程度にカエルに教えた。ハッシュという魔法に詳しい人物がいて、その人ならグランドリオンについて知っているかもしれないと。
カエル「ハッシュ…。ボッシュという似た名前なら知っているが…」
グランドリオンの鞘にボッシュの名前が掘られている。
マール「ボッシュ、ハッシュ…。なんだか共通点がありそうな…」
荷車を引いていると…
ルッカ「ちょっと、何あれ? 当面の戦争は終わった筈では…」
ガルディア本土から兵士が魔界に向けて出発していた。
現代の歴史の記録に無い出来事。クロノ達の介入で結果的に多くの人命を救えたこと。それをキッカケにして3000の兵士が特攻隊に志願していた。
ルッカ「どうして!? ガルディアは防戦一方だったはず。死ぬ為に行く様なものよ!」
兵士の列が連なる。カエルが事情を聞きに行く。
兵士「我々には心強い味方な現れたのだ!」
兵士の行列の上、空を浮き歩いている人間がいた。
兵士「彼の名はボッシュ。彼の奇跡のチカラで死んだ筈の兵士が皆、生き返ったのだ。怪我人も皆、傷が無かった様に癒やされた。」
原作のボッシュは現代の千年祭にいた。この物語では千年祭にはおらず、ボッシュはテレビを見ていた。
クロノ達が千年祭のタイムゲートに消える光景をニュースで見て、魔法でゲートをこじ開け、中世へとやってきていた。
戦争を目の当たりにしたボッシュは命の賢者としてそのチカラを存分に活かしていた。
ボッシュはこの時、魔界からジャキの魔力を感じていた。ジャキが魔界に捕われている思い込み、助けようと行動していた。
ボッシュはクロノ達の元へ舞い降りると、次々と死んだ兵士達を生き返えらせた。そしてカエルは特攻隊と共に魔界へと旅立っていく。
ボッシュはカエルの持つ剣から、グランとリオンに気配に気付いた。
グランとリオンは古代に生きていた精霊で、暴走する魔神機を止める為に合体し、赤き剣に憑依した。
赤き剣はボッシュが作り出した剣であり、ボッシュの魔力が込められている。
魔神機はラヴォスからエネルギーを抽出する装置であり、赤い剣はその作用を打ち消す為に作られた。
赤き剣にはラヴォスからエネルギーを奪う作用を打ち消す力が付与されており、赤き剣(グランドリオン)が魔族に効くというのは、実質的に魔族はラヴォスからエネルギーを得て力としているということ。
つまりグランドリオンの攻撃で魔族の防御力が低下するのは、魔族に供給されるラヴォスエネルギーを『断ち切る』という意味合いが含まれる。
原作では魔王に対して威力を発揮した。
その設定に無理やり整合性を合わせるとするなら、魔王は戦闘中にその場から一歩も動かなかった事が注目点になる。
たとえば魔王は魔法陣等をどこかに描いていてラヴォスからエネルギーを抽出して自らをパワーアップしていた。魔法陣から出るとパワーダウンするから魔王は戦闘中その場から動かなかった。
その証拠に仲間に加わった魔王にグランドリオンで攻撃しても防御力は下がらない。
「おお、グランとリオンか! お前さん達があの後(ラヴォスが目覚めた後)どうなっておったのか心配しておったが…」
「しかし、今もこうして剣に憑依しておるというのはどういう事じゃ?」
「そうか…。身を犠牲にしてしまい、そこから出られなくなっておったのか…」
「あいわかった。ワシがなんとかしてみせよう。」
ボッシュはカエルから剣を取り上げると複雑な術式、魔法陣を描いた。
グランドリオンは短い赤剣に戻り、グランとリオンが飛びだしてきた。
「なあに、心配するでない。グランドリオンより強い武器を後で作ってやるから。」
作品名:ハリウッド、クロノトリガー 作家名:西中