ギャグ クロノトリガー
敵はレベル的に勝ち目がないと最初から判っていたのかもしれない。せめて見せかけだけでもアジトを見張る仕事をしないと人事査定に影響があったのかもしれない。
一方、マノリア教会のボス、大臣に成りすましていたヤクラとの戦いは逃げられなかった。
ヤクラは、デロデロと無意味な語尾をセリフに加える。心に余裕がある様子。まさか自身が負けるとは思ってないのだろう。身の程をわきまえない相手にクロノ達は容赦しなかった。
【ベロロン切り+回転斬り=エックス斬り】
個別の技で出しても威力に大差はないが、個別にやるより5秒程時短になる。
時間節約はリーネ救出任務の査定に大きく響くはず。クロノ達はヤクラにエックス斬りを浴びせまくる。
ヤクラを倒す事に成功したが、ヤクラは死んでも自己主張が激しかった。光って効果音を派手にしながら消えるヤクラ。
今は動くな!と空気を読めと言わんばかりの態度でクロノ達に目配せするヤクラ。クロノ達は勝ったにも関わらず動きを封じられ、勝利のガッツポーズをしたくてもできなかった。だがリーネの視点から見ればその様な演出の方が助け出された感があるはず。クロノ達は査定を考慮するとともに、ヤクラにとって最後の人間への愛情(演出)表現を温かい目で見守る事にした。
「リーネ様、ご無事でなによりです。」
カエルはリーネを救出して王宮へと戻っていく…
本物の大臣は宝箱の中に入れられた様だが、あんな狭いところに詰められていた割にはピンピンしている。エコノミークラス症候群になっていてもおかしくないのに。
恐らく大臣に成りすましたモンスターなのだろうが、その目的が判るまでは泳がせた方が得策だとクロノ達は判断した。
「事件を未然に防ぐより、事件が起きてから解決した方が感謝されるのよ。覚えておきなさいクロノ」
クロノ達は王宮に戻った。だがカエル達はまだ戻っていなかった。クロノ達より先に戻った筈なのに。
「あの二人、どこかでデートしているのかもね…」
ルッカには思うところがあった。数多くの護衛兵、騎士がいる中でリーネはなぜカエルなんかの護衛を受け入れるのか。よりによって、なぜ、カエルなのか。
カエルもそう。兵士の中で誰よりも早く敵のアジトに辿りついた。
「カエルはリーネを愛し、そしてリーネもまたカエルを愛しているよ。失楽園ね…。覚えておきなさいクロノ! これが大人の世界よ!」
クロノ達は急ぎ、マールの元へ戻った。600年代の王宮の情愛は乱れている。マールがリーネと間違われてガルディア21世に今すぐ襲われる可能性がある。
王宮の兵士はリーネ捜索に出払っていた。王室の守衛もおらず、マールの消えた座標まで邪魔されずに戻る事ができた。
マールのいた部屋は光輝いていた。見下ろし視点だから入る前から中が見える。。その事に気付かないで部屋の外にいる侍女二人と衛兵は一体何をしているのか。部屋の異常に気付かない程、夢中で何をしているのか。
「まさかの3人で!? やっぱりこの王宮は情愛に乱れているのね…」
クロノ達はマールを救出し、元の時代へ帰った。
「危険すぎるわ中世は…。もう二度と行かない方がいいわね。
「クロノ、マールをしっかりエスコートするのよ。しっかり…」
王宮は情愛に乱れている。その事をすっかり忘れていたルッカ。
「ダメよクロノ! 大人の階段を登るの、早すぎるわー!」
ルッカは引き止めようとしたが、既にクロノはマールのエスコートを始めていた。
ルッカは後を追いかけた。
○
クロノは王女誘拐の罪で投獄された。3日後に死刑が執行される。
人権侵害もここまでくると悪魔の仕業としか言えない、恐らく、中世で大臣に扮したモンスターの子孫らが政権を牛耳っているのだろう。
人間を殺したいだけの鬼畜達が国の権力を握っているのだろう。ルッカはクロノ脱獄を決心する。
クロノを脱獄させようとしたのはルッカだけではなかった。たとえば檻を見張る兵士。彼は見下ろし視点にあるにも関わらず、背後にいるクロノに気付かず倒された。鎧に身を纏いながら素手での攻撃で倒れた。恐らく、死刑判決に不信感を持ち、クロノを脱獄させようとしたのだろう。しかも檻のそばに武器まで用意してくれていた。
王宮刑務所にいる兵士の殆どがクロノに協力的だった。【逃げる】行動も成功するし、【見下ろし視点】でクロノが丸見えなのに襲ってこない。
城から出た後の追っ手もそう。追いかけてくるが決してクロノ達を捕まえはしなかった。
大臣は悪に染まっているが、兵士達は正義を貫いていた。
だがクロノ達は脱獄に必死でその事に一ミリも気付かなかった。
三人は森の奥に追い詰められた。
マール「私を人質に!」
ルッカ「だめよ。武器を貴方向けた瞬間、あいつらは私達を殺しても許される立場になってしまう。。それなら完全降伏した方がまだまマシよ。処刑されるけど」
クロノは処刑の言葉にビビって尻もちをついた。日本刀を振り回したところで軍隊に勝てる訳がない。
かといって何もしなければ殺される。
クロノの視界がぼやけた。
涙で霞んだ目を擦るクロノ。
しかし、目を擦っても目の霞は取れない。
ルッカ「泣かないでよクロノ! 泣きたいのはこっちなんだから!」
クロノは首をぶんぶんと横に降った。
ルッカ「え? 泣いてない? 目の前の空間がぼやけてる?」
調べるとタイムゲートに良く似た空間の揺らぎが見えた。
マール「これって、もしかして」
ルッカ「ええ! きっとそれよ! でもどうしてこんなところに…」
マール「考えてる時間ない!」
ルッカはゲートホルダーを取り出した
「マールありがとう。」
「え?」
ルッカ「マールは王女だからこの時代にいても大丈夫よ。
マール「嫌だよ。私も行く」
ルッカ「どうしてマールがそこまでするの? ゲートの先はどうなってるか判らない。今度こそ、本物に死ぬかもしれない。
マール「二人が大変な目にあってるの、この国のせい。私にも責任ある
ルッカ「だとしても貴方はこの国の…
マール「言わないで! 私は自分の事を価値ある人間だなんて思ってない! お城から自由に出られない。友達ひとり作れない、友達ひとり助けられない。そんなの、私は望んでない!
ルッカ「でも…
マール「でもも、へったくれもない! 私はクロノと一緒にいる。ルッカと一緒にいる。
ルッカ「お姫様の考える事は良くわからないわね…クロノはいいの? お姫様を危険な目に合わせても? 最後までエスコートできるの?
作品名:ギャグ クロノトリガー 作家名:西中