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その両手をポケットにしまいたい。

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 乃木坂46の『やさしさとは』の演奏中に、中田花奈の注文したきつねうどんと、樋口日奈の注文したカクテルが届いた。
「それじゃ、乾杯」身を乗り出して、夕はグラスを持った手を二人の方へと伸ばした。「お疲れ様ぁ!」
「かんぱぁーい」日奈は楽しそうにグラスを当てる。
「かんぱーい」花奈はそっとジョッキをそれぞれのグラスに当てた。「お疲れ~」
 風秋夕は、振動しながら着信音を鳴らすポケットの携帯電話に気が付いた。
 画面を見ると、ダーリン、と表示されていた。
「もしもし? どした?」
 「何処にいるでござるか? 音楽が聞こえるでござる」
「あー、BARノギーでかなりんとひなちまと呑んでるよ」夕は携帯電話から瞬時に耳を放した。
 「でござるかー! 乃木坂の予感が当たったでござるよ! なぜ呼ばない!」
「ダーリン何処にいんの?」
 「映写室で一人ホラーを観てたでござるよ。怖いでござる!ザンビ!」
「じゃあ……、来る?」
 「行くに決まってるでござる大草原!」
「じゃ、何呑む? 頼んでおく」
 「かなりんいるでござるな? よし、ではアサヒスーパードライを」
「はーいじゃあねー」
 風秋夕は携帯電話をオフにして、短く溜息を吐いた。
「誰?」日奈が夕にきいた。
「忍者ハットリくんみたいな喋り方する人」
「ダーリン?」日奈は軽く小首を傾げる。
「当たり。今から来るって」
「私ダーリンと会うの久しぶりかも」花奈は夕を見て言う。「卒業発表の前だから……いつだ?あれ」
「イーサン、アサヒスーパードライ!」
『畏まりました』
「今日さ、特別なんだちょっと」夕は日奈と花奈を交互に見て微笑みを浮かべた。「飛鳥ちゃんがさ、なんか王女様の夢見てさ。俺、側近なの」
「側近なんだ」花奈は鼻で笑う。「王様じゃないんだ」
「しかもさ、それで終わりじゃないんだよ。次の夢でさ、なぁちゃんが主役みたいな夢見てさ。なぁちゃん、夢の中でも芸能人なんだけど、なんかなぁちゃん発信の何かのキャンペーンに俺当たっちゃってさあ」
「何か……、何か幸薄くない?夕君」花奈はにやけて夕に言った。「夢のスケール小さいんですけど……」
「夢かあ」日奈は印象的な瞼を細めて呟く。「わああ! っくりしたぁ~……」
 三人の背後に、息を切らした姫野あたるの姿があった。はるやまのスーツを着用しているが、暑いのかジャケットを右手に抱えていた。
「電話の時、もうエレベーターにいたでござるよ。ハァ」
「座れ、ハアハア言ってないで」夕は座視であたるに言った。
「何処に、座ればいいのか……ハァ」あたるは夕の左側の席と、花奈の右側の席を眼で確認する。「かなりん、ひまちま、ごきげんようでござる!」
「ごきげんよう」日奈ははにかんであたるに言葉を返した。
「こんばんは」花奈も久しぶりに見るあたるに視線を向けて言った。「ここ、座りなよ」
「では、失礼して」
 姫野あたるは中田花奈の右隣りの席に腰を下ろした。スーツのジャケットは空いている右隣りの椅子にかけた。
 電脳執事のイーサンが姫野あたるのファースト・ドリンクが到着した事を告げる。
 改めて、四人は乾杯を済ませた。
 店内に響くR&Bが絶妙なムードを醸し上げ、酒の価値を上げていく……。
「ひなちまって、どんなタイプに弱いの?」夕は和美人の日奈に見とれながら、なんとか会話をキープする。「どんな奴なら、ひなちまをゲットできる?」
「えー……、藤丸翔くん」日奈は顕在的に柔らかな表情と口調で夕に言った。「が、タイプかな」
「藤丸翔って、あの……ハイティーン・ブギの?」夕はそう言ってから、大きく頷いた。「ああいうタイプかぁー……。じゃあ、昔からまだタイプは変わってないんだね。お母さんとおんなじタイプが好みなんだ。お父さんじゃん、ひなちまの」
「んーお父さんは、ちょっと違う」日奈は考えながら言う。「あ! あ~この曲ぅ~!」
「好きなんだ?」夕は口元を笑わせて言う。「俺も好きなんだー、この曲……」
 店内のムードを一瞬にしてものにしてみせたのは、デズリーの『ユー・ガッタ・ビー』であった。
「夕君は、モテるでしょう」日奈はまったりとした眼差しで夕に言った。「何回、告白された事あるう?」
「そんな事、気になる?」夕は日奈を真っ直ぐに見つめて言った。「好きになってくれる人なんて、いてくれたら貴重すぎるな」
「普通にいるでしょう?」日奈は首を傾げて夕を見つめ返す。「告白した事はある?」
「乃木坂には毎日好き好き思ってるけど……」夕は少しだけ、眼元を柔らかくして日奈に言った。「本気で好きになったらダメだよね。でも、本気で好きになってるのも事実っていうか……。矛盾こそ、真理だな。はは」
「彼女って、いた事ないの?」日奈の瞳が物語る。「いっぱいいたんじゃない?」
「別に彼女はいらないんだよなぁ……。乃木坂は恋愛対象っていうより、神格化に近い感覚なんだけど……、夢中になってる事に変わりはないから、そういう時に彼女って、いらなくない?」
「夕君、付き合った事ないの?」日奈はふと浮かんだ言葉をそのまま口にする。
「どう見える?」夕はにこり、と微笑む。
「経験豊富そうだけど」日奈はそう言って、ゆっくりと瞬きをした。
「内緒にしようっかな。どう?」夕ははしゃぐように眼を輝かせて日奈に言う。「少しは、興味持ってくれた?」
「ダーリンって乃木坂の歌が一番好きなの?」花奈はあたるの顔をまじまじと見つめながら言った。あたるは赤面している。
「しょ、小生は乃木坂の曲しか聴かないでござる」
「へー。一番好きな曲は?」
「そうでござる!」
「わっ!」花奈は突然興奮したあたるに驚いた顔を向ける。「何、急に……。どうした?」
「かなりんは、どの乃木坂が好きでござるか?」あたるはちらり、と花奈の眼を一瞥して言った。「じゃ、じゃあ、好きな歌は、あの…乃木坂ででござるよ。好きな歌は、何でござる?」
「他の星から?」花奈は落ち着いて答える。「振り付けはぁ、自由の彼方が好き」
「ああ~……、ほ、他の星から…、自由の彼方…、んん名曲!」あたるは天井を仰いで言った。「ラスボスとして白米様とかはどうでござるか? 小生は大好物でござるけど」
「白米様はMVが好きー」花奈は続けて、思い出しながら言う。「気づいたら片想いとか、せっかちなかたつむりもMVめっちゃ好きだけど」
「他にもござろう」あたるは花奈の綺麗な表情にやられながら、横目で言った。「乃木坂はいい曲揃いでござるからな……」
「うーん、みんな好きなんだけどぉ、あえて言うなら、別れ際、もっと好きになる、好き」
「しょ、小生は、思うでござる……」あたるは赤面しながら、俯いて言う。「かなりんに、好きと言われる曲達は、幸せ者でござる……。もっと聞かせて欲しいでござる、かなりんの好きな曲達を」
「うー……ええ?ああ、クリーピー・ナッツいいよ」花奈は思いついたように微笑んだ。「ZORNもいいし、唾奇、ちゃんみな。ラップいいね。おかわり頼もかな……。何にしよ……。ダーリン何呑む?」
「そうでござるな、では小生は、ビールをおかわりするとしよう。ヒップホップ好きなかなりんも、スパイシーで病みつきでござるな」