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その両手をポケットにしまいたい。

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「何かそれやだー」花奈はメニュー表を開きながら苦笑する。「何スパイシーって。私刺激物なの?」
「そうではござらんが、し、刺激的でござる……」
「え?」
「嫌あ、何もっ!」あたるは天井を見上げる。「イーサン、アサヒスーパードライの大ジョッキと、かなりんの為のノギザカ46をロックで、二杯貰うでござる」
『畏まりました』
「乃木坂46? ここにそんなお酒あったんだ?」花奈はメニュー表を閉じた。「しかも、ロックって。二杯頼んでるし」
「ノギザカ46はめちゃくちゃ強いお酒でござる。ロックと、カクテルがあるんでござるが、今回はロックで二杯、いってもらうでござる」
「なんの罰ゲーム?」花奈は苦笑する。
「小生を、こんなにも魅了したでござろう。罰というよりは、裏アイテムをプレゼントしたでござるよ」
「お願い、教えて?」日奈はセクシーに小首を傾げて夕にアピールする。「お願ーい」
「じゃあ、ひなちまにだけ……」夕は小さく苦笑して、日奈を改めて見つめた。「俺、本気で人を好きになったの、乃木坂が初めてなんだ。付き合ってた人はいたけど、好きっていう感情は、正直よくわかってなかった。ただ、綺麗な人だから、とか、可愛い子だから、とかさ。何となく。カップルっぽい事した事ないな……」
「やっぱモテるじゃーん」日奈はにこりとそう言ってから、メニュー表を開いた。「何人いたのー?遊び人だねー」
「そんなんじゃないけど」夕は、溜息をついた。「ビジュ強めの人ばかりで、心まで見ようとしてなかったんだと思う。理解し合えた人達もいるにはいたんだけど、親友と思ってたその人達は、だんだん恋愛の方に行きたがって……、全部切れちゃったし。だから、俺は乃木坂にガチの恋はしないように用心してるんだよ。終わっちゃうからね、ぜーんぶ」
「初恋は?」日奈はメニュー表を閉じて、夕を一瞥した。「何歳の時?」
「中学の時、かな」夕はまた、苦笑した。「乃木坂にね。届かない恋っていうのも、燃えるよ、結構」
「恋しちゃダメなんじゃないの?」日奈はまた夕を見て言った。「ガチ恋?」
「蟻が月に恋する事を、ガチ恋とは言わないでしょう?」
「あー、憧れ?」日奈はとろんとした座視で夕に言った。「憧れだ」
「そう。正直、俺の中では恋愛の好きより、ワンランク上の好きなんだ」夕は嬉しそうに、にこりと笑った。「ヲタクでしょ?」
「ねえ、聞いたよ」日奈が眼を細めて、夕に言う。「背中のタトゥー、好きな人の名前入ってるんでしょう? 誰なの?」
「それはー、内緒だ」
「乃木坂なんだって?」日奈は更に眼を細めて言った。
「うーん……、イナッチあいつ……」
「ガチ恋じゃない? それって」
「だから秘密なんだよ」
「箱推しって言ってた癖にー」日奈はつん、とむくれる。
「箱推しだよ。決してDDではない、箱推し」夕は困った顔で弁解する。「背中の事は、忘れて。誰に見せるものでもないから。ね」
「一期生?二期生?」日奈は矢継ぎ早に夕に質問する。「十五歳の時なんでしょう? じゃあ、一期か二期の誰かだよね……」
「わかったわかった」夕は根負けして、日奈に微笑んだ。「ひなちまには、いずれ見せるよ。約束する。その代わり、他言無用だよ。守れる?」
「守れる」日奈は天井に顔を向けた。「イーサン、リリィ・アース。ちょーだい」
『畏まりました』
「おお、そんな声で届くのか……」夕は眼を見開いて、驚いた。「イーサン、ラムコーク」
『畏まりました』
「おおっほ!」
「今夜は楽しい一夜でござるなあ!森!」
「ビール二杯で酔っ払っちゃったよこの人……。こっちの方が強いの呑んでるからね?」
「あれ? 夕君、イナッチって今日一緒じゃないの?」

       7

 同時刻、<リリィ・アース>地下六階にある<エクササイズ・ルーム>には、和田まあやと稲見瓶、そして岩本蓮加、梅澤美波、大園桃子、中村麗乃、吉田綾乃クリスティーの七人が集まっていた。
 一汗をかき終わった中村麗乃と吉田綾乃クリスティーはテーブル付きのソファ・スペースへと移動した。室内では乃木坂46の楽曲が絶えず流れている。
「疲れた~……」麗乃はソファへと腰深く座る。「何かさ、今思ったんだけどさ、今普通に喋ってるけど、いつ頃だろうね、打ち解けたのって」
「私麗乃ちゃんって呼んでたっけえ?」綾乃は微笑みながら、スペースを空けて麗乃の隣に腰かけた。「そうなんだろうね……」
「え、わかんない、でも、確か……」麗乃は腕組みをして綾乃に言う。「みんなちゃん付けだったような気がする」
「最初はね」綾乃は頷いた。「えー打ち解けたきっかけって何……」
「なんだろう」
「何で話すようになったんだろうな……」綾乃は考え耽る。「え……」
「ふっ気付いたらって感じだよね」麗乃が吹き出しながら言った。
「あれじゃない?でもあのさぁ……何だっけ、……単独ライブ、最初の…時ぃぐらいさあ、ずっと一緒にいた時なかった? 一緒に帰ってたし」
「あったっけ?」
「なんか、えーなんかあった気がする……」
「うっそ」麗乃は笑みを浮かべた。「それかなあ?」
「やわかんない。何がきかっけなんだろう……」綾乃はタオルで汗を拭きながら、また考え込んだ。
「ふああ……」蓮加は溜息をついた。
「いけないんだ~」桃子はそれを茶化す。「溜息ついたらいけないんだよ」
 二人は空いているテーブル付きのソファ・スペースに座る。
「あ~汗かいたー……」美波はタオルで額の汗を拭う。
 梅澤美波も岩本蓮加と大園桃子の座る大型のソファに腰を下ろした。ソファ・スペースには間隔を遮るアクリル・パネルが設置されている。
「桃子痩せたかなあ?」桃子はけけっと笑いながら言った。
「桃子もともと痩せてるよん~」蓮加が言った。桃子は、ん?と返している。「もともと痩せてるよん~」
「痩せてないよ」桃子はタオルで汗を拭きながら言う。「赤ちゃんに言われても嬉しくない」
「れんたんは赤ちゃんじゃなーいよー」蓮加はふざけ口調で言った。
「赤ちゃんだよ」美波は口元をにやけさせて蓮加に言う。
「赤ちゃんじゃないよー」
「桃子ギター全然やってない」桃子は宙を見ながら言った。「なんか、いつも二分ぐらいでやめちゃう。すぐ諦めちゃうんだよね」
「できないとイライラするよね」蓮加が言った。
「え、何で急にギターの話になったの?」汗を拭いていた美波が眼を見開いて驚いた。
「え、独り言」桃子は美波を一瞥して、またけけっと笑った。「さっき蓮加の事赤ちゃんって言ったけど、本当はしっかりしてる」
「そうだよー」
「三期のしっかり者はみなみんだけど、蓮加は考え方がしっかりしてるから」桃子は室内の正面にある巨大な鏡を遠目に見つめ、前髪を気にしながら言う。「前は元気なとこしか見えてなかったっていうか」
「ああ~」蓮加は納得する。「なるほどね」
「麗乃~!何頼んだの?」美波が大声で音楽を遮るように叫んだ。
 ちょうど、中村麗乃は電脳執事に注文を終えたところだった。
「カットパイン!」麗乃は美波に答える。「最近ハマってるの!」
「私も何か頼もうかな……」美波は隣の蓮加と桃子を見る。「二人とも何か頼む?」
「桃子は、ピーチジュースにしようかな。この前美味しかったから」
「蓮加は?」美波は蓮加を見る。