原作アレンジ、クロノトリガー
留置内で見回りをしている警官に走り寄り、刀で脅し、ピストルと鍵を要求した。
警察官は胸に差している無線機に異変を知らせようと手を伸ばしていた。
ルッカ
「いい? ひと言でも声を発したら殺す。」
ルッカが脅している間にクロノを探すマール。
警官が要求に渋っているとルッカは首に押し付けた刀にヌルい水をかけた。
暗闇の中、生々しい血を流したと錯覚して、言いなりになる。
はずだった。
警官は暗闇の中で動き出し、刀に自ら向かっていった。流れる自身の首筋の血をペロリと舐めた。
長さにして30センチの舌。
人間に化けた魔族だった。
普通の人間の顔にしか見えないその魔族はルッカの背後に回った。マールは反応ができなかった。ボウガンの照準を合わせて放つも的外れの方向へ飛んだ。
警官は床にルッカを押し付けながら首を絞めている。
マールが再度矢を放つも、当たっても効き目がない。
マールは催涙スプレーを取り出しルッカの元へ走った。
ルッカに辿り着くも、ルッカは既に倒された。警官はマールの身体に飛び掛かると、マールと揉み合いになった。
マールも直ぐに首を絞められた。
首ごと持ち上げられ檻に押し付けれマールはバタツいた。
その瞬間、マールが催涙スプレーを噴射した。
その魔族は暗闇なのに動けた。目が良いから催涙スプレーは効果的面だったのかもしれない。
だが、最初からマール達の姿が見えていたとするなら、既に無線で助けを求めているかもしれない。見えていたなら脅迫できる殆に距離を詰められないはず。
魔族特有の身体的な特徴、視覚以外の五感、聴覚、味覚、触覚、嗅覚のどれかが特異に発達しているのか。
この魔族はそういった五感に秀でているのではない。人の10倍を超える力と肉体の傷を再生する力、回復させるスピードが1000倍あった。
いずれにせよ、暗闇の中でルッカを倒した。魔族が人間に化けた存在だとマールは確信した。
倒れたルッカから剣を取ると、思い切り斬りつけた。
人間の声ではない、低い唸り。
深く刺せばダメージはある。そう判断したマールは股間をぶっ刺した。もう一回ぶっ刺した。
警察官の苦悶した表情が人ではないカタチに変化した。斑点模様がいくつもありトカゲの様な顔立ちで目には縦筋がある。
その場で倒れてピクピクと悶絶する魔族
「今すぐ鍵とピストル、無線機を渡さないと、目玉をくり抜くよ。その次はどの内臓を取り出そうか。」
魔族はカギとピストル、無線機をマールに渡した。
クロノのいる檻を開けた。
クロノに暗視ゴーグルを被せると
クロノも目の前の惨劇を理解した。
二人でルッカを抱えて署内を進む。
今、普通に外に出た場合、怪しまれて包囲網が出来上がるだろう。
ルッカは昼間にも署内にハッキングしていた。当直ではない警察官の制服と帽子を三人分盗んでいた。
ルッカは気絶しているが、ちょうど怪我人を運ぶ姿であり、犯人とは思わないだろう。
刀はポスターに包み筒状にしてリュックに入れ、ボウガンや暗視ゴーグルもリュックにいれた。
外では停電等の緊急時、脱獄対策マニュアルに沿って施設の出入りの身分証のチェックがされている。
警察官6名が入り口にて懐中電動を持ち待機していた。
警察官
「な、中でなにがあったのですか!」
マール
「中で何者かに攻撃を受けました! 怪我人が他にもいます!」
警察官
「では救急車を呼びます! 彼女はとりあえず、この辺りに寝かせて…」
マール
「救急車を呼ぶより病院に連れていく方が早いです。」
警察官
「確かにそうですね。では車までお手伝いします」
クロノ達が外へでようとすると。
警察官B
「待ちなさい。身分証のチェックを忘れているぞ。こんな時だからうっかりするのも判るが…」
クロノ達はこれから顔と身分証をデータベースで照会される。
ルッカのハッキングでどうにかする事もできたが、クロノが顔を見せれば脱獄がバレてしまう。
そういう時はマールがルッカ特性エアガンを発射することになる。
至近距離から狙われ、6人の警察官はあっという間に倒れる予定だった。
警察官C
「ちょとまって! この娘全然息してないじゃない!」
クロノ達は急いでいて気付かなかったが、頸動脈を圧迫されて倒れたルッカは心臓が止まり脳に酸素が行かなくなっていた。直ぐに蘇生させないと死んでしまう。
警察官C
「何をしているのあなた達! 早くAEDを持ってきて! それから救急車も早く!」
警察官Cに促され、他の警察官はデータベース照会を後回しにして人命救助を続けた。
クロノはルッカを置き去りにして逃げられなかった。
マールはクロノの気持ちが痛い程分かった。けれど、このままここに居てはクロノは捕まり死刑になるだけ。ルッカがここまで頑張ってきたのも無駄になる。
「ルッカは大丈夫だから! きっと、大丈夫だから!」
マールはそう言って、心肺蘇生に関わっていないC警察官以外をエアガンで気絶させた。
クロノの手を引いて車に乗り込み、発進させた。
程なくして警察官Cのおかげでルッカは息を吹き返した。
息を吹き返したとはいえ、意識が朦朧とし、直ぐには動ける状態ではなかった。
ルッカは細い声でクロノに逃げる様に促していた…
○
マールがクロノを連れて街中を逃亡する。この一連の流れは警察署の敷地や街中の防犯カメラに記録されている。ルッカの技術をもってしても、その全てに細工を施す事は無理であった。
ルッカによると、犯行がバレて追いかけれても構わない計画だった。いつまでも逃亡し続けるつもりはなく、千年祭会場のゲートから中世へ逃げる計画だった。とにかく時間稼ぎさえできれば良かった。
○
サイレン音が街に響き渡っていた。
クロノ達は千年祭会場からは、まだ遠くにいた。
都市部特有の渋滞に巻き込まれていた。
今後、どの道も警察に封鎖されて、その影響で更に渋滞して会場までいけないだろう。
ルッカの計算ミスだった。
逃げるならバイクの方が渋滞に巻き込まれない。またパトカーのサイレン灯を盗んで車に取り付けておけば、渋滞は避けられたはずだった。
2人はどうしていいか分からなかった。
このままでは、捕まるのは時間の問題。
神にも祈る様な気持ちで、空を見上げるとヘリが上空を旋回していた。
車は既にマークされていた。
「降りなさいそこの車!」
警告と共に旋回している。
程なくして渋滞をかき分ける様にパトカーがやってきた。
前後からサイレン音がゆっくり近づいてくる。
数分後、警察車両に挟まれ、2人の車は止まった。
「こちらは発泡許可を得ている。速やかに降りなければ強行制圧する!」
マール
「私の事を人質とって逃げよう!」
クロノには判断できなかった。人質をとること、ぞれで上手く行くのか、周りは包囲されている。どこからでも狙えるとすればマールを人質にした瞬間、射殺される可能性もある。
マール
「じゃあ、どうするの?」
止まれば確保してくださいと言っているようなの。
こういうとき、ルッカなら何をどう判断するだろうか…
作品名:原作アレンジ、クロノトリガー 作家名:西中