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原作アレンジ、クロノトリガー

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「クロノの見聞きした事から推測すると、その消えた娘はマールディア王女ね。この時代、つまりマールディア王女の祖先リーネが誘拐されて何者かに殺された。だからマールディアが生まれてくる歴史そのものがなくなり、存在が消えた。」


「存在が消えたなら、どうして私達の記憶にマールがいるのかって?」

「うーん。もしかしたら時と共に記憶も消えるかもよ?」


「記憶がある内はまだ先祖のリーネは生きているかもしれないわ」

「どうする? 試しに、マールほっといて元の時代に帰る?」

「未来はマールがそもそもいない世界。誰もとがめたりしない。」

ルッカの言葉はあたかもクロノに正義感がないものとする様な前提で展開された。
クロノは意味もなくプライドが傷付いた。

「よし、助けるのね! わかったわ!」

「じゃあ、まずは聞き込みしましょう」

クロノ達は人さらいの様な怪しい人の目撃情報を聞いて回った。

得られた情報は

*リーネが誘拐されたのを誰も信じないこと。もし誘拐されたら王宮から兵士がわんさか飛び出してくるはず。

*南にある大橋は南の大陸とを繋ぐものであるが先の戦争で倒壊しているそう。断崖に囲まれていて船での誘拐は困難。

*お忍びでガルティアの大臣一人が妓楼に予約を入れているのに来てない。

*教会に誰もいないのにピアノの音が鳴り響くというのが本日何度もあった。


「教会怪しいわね…。」

クロノ達は教会に向かった。

教会ではシスター達が席に座り、祈りを捧げている最中だった。
噂の誰もいないのに鳴るピアノを見ると、赤色が少し付いている。
「まさか、血」
ルッカは思わず声に出しそうだった。
注意深く見ると微かに薄い赤色が、いくつかの鍵盤部分に見えている。

と、み、そ、鍵盤と
れ、ふぁ らの鍵盤が染まってる。

クロノはおもむろに鍵盤を弾いた。

一分程演奏し、赤い鍵盤を眺めていると、シスター達がこちらを見ているものの話しかけてこない。祈りの邪魔をしているというのに。
「ねえ? 食べちゃおうよ。」

「ねえ? 食べちゃおうよ」

「どっちが、好み?」
「私は赤色の髪の子が好み」

シスター達はおもむろに服を脱ぎ始め、下半身を露出させた。
しかし、スラリと伸びる足は一本しかなく、それはシスター4人ともがそうで…
足が一つなのは怪我をした等ではなく元々一つしかない。
下半身が蛇の女だった。


蛇女は足元から這いずりながら顔まで上がってきた。
鳥肌が飛び上がりそうになる。
息遣いが耳に掛かる。
思わずダッシュして逃げたクロノ達。

ルッカ
「明らかにおかしい。なにあれ?」
ルッカ
「コスプレ? にしてはリアル過ぎた。」
ルッカ
「でもあの鍵盤が血だとしたら
 絶対何か隠している。」


教会に戻ると入るのを躊躇くらいシスター達がこちらを見ていた。蛇女がシスター衣装に身をつつみ先程と同じ場所に座っている。

顔は人間の女だが口元と下半身が蛇の形をしてる。ペロッと舌を出してこちらを見つめている。

余りの異様さに、ここに誘拐されたリーネ王妃がいると確信を得た二人。
とはいえ、やはり化物は見間違いに違いない。クロノもルッカもテレポート装置の調整で連日睡眠不足が続いていた。幻覚に決まっていると思い込もうとした。
もしも今、幻覚に恐れをなして助けを呼びに行こうとしてリーネが殺されたらマールは救えない。

訳の分からない恐怖を堪えながら二人は教会の裏口がないか探した。


裏口は見つからなかったもののクロノは違和感に気付いた。
教会の外観の作りに比べて、中の広さに奥行きが足らなかった。
教会の中には奥に繋がる戸口はなく全て壁だった。

ルッカ
「教会の奥には隠し部屋があるということね?」

ルッカは外壁を叩き始めた。
壁が薄ければ反響が良くなる。そこをドリルを使ったりハンマーで叩き割ればいいと思っていた。

いざというときの為に工具箱を携帯していたルッカは慎重に聞き耳をたてる。
すると壁を叩き返す反応があった。

何度が叩くと、その都度叩き返す反応がある。

この場所なら削れる。そう判断した瞬間、壁からの叩き返す音が聞こえなくなった。

ルッカ
「まさかもう殺されてしまった?」
「あるいは縛られて動けなくなっている?」

部屋の様子が解らないルッカ。

ルッカ
(犯人なら目撃者が近くにいると思って犯行を辞めるかもしれない。いや、後が無くなったと思ってヤケクソになって犯行に至るかもしれない。)

正しい判断を選べないルッカ。
ルッカが悩んでいるとピアノの音が大きく響いた。


-



――――――――――――――――――――――――――――

■2話



-

クロノは化物が本物だと信じていた。
夢や現実だとかコスプレだとかどうでも良く、ただだリアルに化物にしか見えなくて怖くて、死ぬんじゃないかと震えながら、ない知恵を絞って考えた。

クロノは鍵盤を叩いた。
めちゃくちゃに叩いた。

ルッカは悟った。音に紛れて壁を破壊しろと。そう受け取った。

クロノの周りには妖怪蛇女が寄ってくる。
蛇女達はクロノにまとわりつく。

蛇女達はシスターの衣装を纏っている。
外からみれば色仕掛けされてる男子にしか見えないだろうが、クロノは死を恐怖していた。

「あと少し」
「あと少し」
「あと少しで…」

何があと少しなのか、クロノは次の言葉を聞いてぞっとした。

「あとすこしで食べていい」

ベビ女の涎でベトベトになりながら、恐怖を堪えて考える。
あと少しで食べていいを文字通り解釈すると、
あと少しでクロノは食べられてしまう。恐怖に支配され、それ以外の可能性が見えなくなるクロノ。

今すぐ逃げたしたいクロノ。でも逃げたらリーネが食べられて先祖のマールも消える。
殺される恐怖と人を見捨てる罪悪感を天秤にかける余裕すら無かった。剣道から武士道精神を学んでいたクロノだが、そんなことどうでも良いくらい頭の中は目の前の蛇の牙一色になる。

本能が逃げろと言っているが、ほんの少しだけ理性が働いた。

あと少しって何だ?

その疑問一点に余裕のない思考を注いだ。

蛇は何かを待っている? 
何を待つ?
時間のことか?

クロノは壁に掛かっている時計を見た。
レトロな時計、その針は間もなく3時を指そうとしていた。

3時ちょうどにクロノを食べていいルールなのか。
もしやオヤツの時間になるのか。
訳の分からない思考にはまり、思わず目を瞑ったクロノ。

「おいしそう」
蛇の吐息と目蓋を舐める仕草、ビビリ、思わず目が開く。

10センチはあるだろう目玉がしっかりとクロノの目を見据えていた。

4匹全てがクロノを食べたそうに見つめていた。

【4匹は時計は見ていない。】

蛇達は時間を気にしている訳でない。
だが何かを気にしているようだった。

蛇達の目は時計を見ないのに、何故か、壁の隅ばかりみていた。
大きな白い目玉がクロノと壁端を行ったり来たりする。
その光景を見た瞬間、クロノの脳に電流が走った。

壁の隅に奥へと続く隠し扉があるのではないか。