原作アレンジ、クロノトリガー
蛇達はそこから出てくる雇い主の合図で、シスターに成りすます仕事が終わり、本当に化け物としてクロノを食べても許される時が来る。
だとしてもどうする?
その隠し扉をとう開ける?
扉の前まで行ったら、その行動が怪しまれて自分は今にも食べられるのではないか。
そもそも、いつ蛇の主が出てくるか分からない。今この瞬間にも出てくるのではないか。
その瞬間というのは既にリーネは殺された後かもしれない。
なら今直ぐにも自身も食べられる可能性があるのではないか。
もし運良く扉を見つけてその先でリーネを見つけたとして、そこからどうやって帰ればいい? ルッカが壁を開けて道を開いてくれていなければ逃げ場なんかない。
この計画性の全てはルッカ頼みでしかない。
しかしルッカが壁を開け終わってもルッカにリーネが助けられるのか?
失敗してルッカが犯人に殺されてしまう可能性だってある。
もしかしたら、今この瞬間にも殺されているかもしれない。
今にこの場から逃げてもルッカの死体が外に転がっているだけなら?
ルッカが今既に痛い思いをしているとしたら?
クロノは蛇達を払い除け、壁の隅に突撃した。
扉がそこにあって、もし破れないなら直ぐに走って逃げよう。そう考えての判断だった。
しかし、壁に激突した瞬間の衝撃を感じなかった。クロノは、チカラが抜けるように転げた。
そこに壁は最初から無かった。壁柄をした幕が敷いているだけだった。
「コロス!
コロス!
タベル コロス!
コロス!タベル!
コロス!
コロス!
タベル!
タベル!
タベル!
蛇女達の様子が急変して襲ってきた。
バレたら直ぐに殺していい。そして食べていい。そう主(あるじ)から命令されているのだろうか。
とにかくクロノは走った。ここまで来てしまうと引き返す方が怖い。後ろを見るのが怖い。
奥へと走った。武器も何もない丸腰ではどうしょうもない事は分かっていたが、もう引き返せない。
パニックしながらルッカが壁を開けていてくれることを信じてクロノは猛ダッシュした。
奥の部屋にはリーネ王妃。まだ、壁に穴が空いてない。
リーネの傍らには口の大きな緑色をした、ぬめした化け物が凶器を持っていてクロノを見た。大きな剣をチラつかせて…
化け物はクロノに向けて剣を振りかぶった。
眼前に飛び散る血しぶき。
クロノは思った。
剣道習っていたのに何の意味もなかった。
ここに来る前に武器を探したり、準備する時間はあったかもしれない。
後悔したってもう遅い。
自分はもう死んだのだ。
諦めろ。
諦めるしかない。
ルッカを信じたのが浅はかだったけど
お父さん
お母さん
浅はかな息子でごめんなさい
勉強疎かにしてごめんなさい。
そして、ありがとう。
痛くなくて、ありがとう。
あれ? 痛くない?
「おい、何してるガキンチョ」
目の前の緑の化け物(カエル)が、喋っている。
クロノは頭の整理が追いつかない。
「切られたのは後ろの蛇たちですよ。」と優しい声が囁かれてる。
後ろを見ると
クロノの背中に折り重なる様に4体のヘビが倒れ込んでいた。
重くて抜け出られない。
「おまえ、世話が焼ける奴だな…」
「まあ、でもお前が鍵盤に夢中だったのと蛇達がお前に気を取られてるお陰でリーネ様を助けられたんだがな…。」
リーネ
「この者は、こんななりをしていますが立派な騎士。ガルティア1番の武人なのですよ。」
カエル
「リーネ様、勿体無いお言葉です。」
クロノは未だ理解が追いつかず、立ち尽くしていた。
カエル
「おまえ! リーネ様の前で頭が高いぞ。私よりも頭を高くしやがって!」
カエルが頭の上に乗って、クロノを跪かせた。
カエル
「よし、では帰りましょう。リーネ様」
リーネの前を護衛する様にカエルが先導していった。
ふと足元をみたクロノ、蛇以外の亡骸が一体転がっていた。
色は茶色だが形はゴキブリ。全長3mくらいだろう。カエルに切断されたのだろうか、黒い粘液を床一面にぶちまけている。
やはりこれは夢か幻か、クロノが考え込んでいると。
タンスが動いた。
中からドンドンと叩く音がする。
クロノは怖くなってカエルを呼び戻そうとしたが、怖気付いたと馬鹿にされるのと、ルッカにカッコ悪く見られそうなので止めた。
「たすけて〜」
か細い声がタンスの一番下から聞こえた。
隙間から白い毛の様なものが見えた。
「大臣です。私はこの国大臣です」
本当に?
思えば今日は目を疑うようことばかりだったクロノ。疑うことしかできなくなっていた。
「大臣です」
証拠は?
クロノはタンスから大臣を助けた後、その奥から日本刀を見つけた。
身を守るものが必要だと感じたクロノ。頂いて良いかと聞いた。
大臣
「別によかろうて。教会に武器を隠しとるなんて似つかわしくないからのう。それにこの教会は魔族が運営しとったんじゃ、盗むでも罰はあたるまいて。」
クロノは日本刀を手に入れた。
「クロノ!」
ルッカの存在をすっかり忘れていたクロノ。
「忘れてない? 私達の目的はマールを取り戻すことよ」
クロノは頷いた。
「マールが消えた場所に案内して頂戴。」
クロノは駆け足でガルティアに戻った。
マールが消えた場所はリーネ王妃の部屋。
王宮は王妃が行方不明だと気付いていて騒がしくなっていた。
クロノ達は王妃の部屋まで障害なく進んだが、部屋の前で衛兵に取り押さえられた。
「王室を荒らすとは言語道断!」
何から説明していいか、あたふたしていると室内が光に包まれた。
兵士が異常に気付いて、いそいで扉を開けると光の中からマールが現れた。
「リーネ様! 一体部屋で何が!?」
放心状態の兵士は、はっとして我に返り、部屋に入ったクロノ達をつまみ出そうとする。
「無礼者、頭が高い! 二人は私が招待したのだぞ。部屋に通せ!」
兵士
「は!」
「どうクロノ? 本物の王女みたいだったでしょ?」
マール
「間違われて閉じ込められたんだから、罰として、ちょっとくらいイタズラしてもいいよね。
え? もう本物の王女だってバレてる?
えー、残念…もうチョットくらい羽目をはずしたかったのに…」
ルッカ
(あんまり王女という程の貫禄さはないわね…)
マール
「あれ? そっちの人はルッカさん?」
ルッカ
「おや、私の事をご存知ですか? そうです。私が天才ルッカ…てこんな言ってる場合じゃないわ!」
「クロノ! 直ぐにゲートから帰らないと!」
「ゲートの開閉の理論はある程度分かったけど、もしかしたら今日明日、あるいは今直ぐにでも空間の揺らぎが消えるかもしれない。もし消えたら二度と帰れなくなるわよ!」
クロノ達は駆け足で向かった。
一階広間でリーネとマールが鉢合わせる。
リーネ、大臣、王、兵たちたちは驚いた。
大臣
「どういうことじゃ!? リーネ様が2人も!」
ルッカ
「ダメよ、よそ見してちゃ。いそいで二人とも!」
マールはドレスを脱ぎ捨てた。
三人は城を出て山道をひた走った。
〜山奥〜
作品名:原作アレンジ、クロノトリガー 作家名:西中