原作アレンジ、クロノトリガー
「王宮を民にとっての共通の敵とする事で、民同士の争いを防ぎたかったんじゃ。ほら、敵の敵は仲間というじゃろ。王宮が民にとっての共通の敵となる事での争い抑止を狙ったんじゃのう。」
ルッカ
「馬鹿よね。そんなことしても、争いは無くならない。
ボッシュ
「その通りじゃ。結局、民族史上主義である事には変わらない。魔力のない者を差別する文化が生まれ、差別する事が当たり前の中で育った人々は人格が崩れおった。特に一番酷いのが王宮じゃったかもしれん。民を差別することが当たり前の様に育ったジール王は徹底した権威史上主義に走った。
マール
「権威史上じゅぎ?
ボッシュ
「簡単にいえば暴君じゃな。権力に溺れてしまい、全ての人や物を自分の支配物の様に解釈しておった。家族であれ、息子であれ娘であれ…
王宮はとにかく殺伐としていた。皆が哀れでならんかった。
特にワシは王子様が哀れでなぁ。
王宮はそそうをするだけで命を落としかねない場所だったから、王子様に近づく者は誰もおらんかった。
幼いながら友達一人いない。いても形だけ。ワシはなんとかして、王子様に心の通う同年代の友達を作ってやりたかった。」
ルッカ
「ボッシュってやけに王宮に詳しいわね…
マール
「まるで王子様の教育係みたいな視点だね
ボッシュ
「あれ? 言わなかったっけ? ワシは王宮で王子様の教育(教科目、命の魔学)をやってましたけど。
ルッカ.マール
「「聞いてないわ」」
ボッシュ
「それでな。ワシは王宮に内緒で王子様を見すぼらしい姿に変えての、一緒に地の民にボランティアをしにいったのよ。
身分を隠してやれば、わんぱくな子供達は気を使うことなく友達になってくれるかなと。
実際、それでうまく行った。
ジャキ様は笑顔になり、友達ができた事を喜んでおった。」
ルッカ
「へー、良かったじゃないの
ボッシュ
「じゃが、ワシは馬鹿だった。年齢のせいもあるのう。頭がもうろくしとった。
ワシも王宮も知らない内に、ジャキ様は地に降りて子供達と遊んでおった。
ジャキ様はある日、何の悪びれもなく、王宮の衣を纏ったまま遊びに行き、王子だと名乗られた。
『王宮は悪いところ、そこに住む者は悪』地の民に住む子供達は親からその様に教えられとった。
ジャキ様は虐められ、ボロボロの衣服で戻られた。
母上のジール様はひどく怒りになり、ジャキ様を責めなすった。
【下界の者と遊ぶとは何事だ】【下賤な者に触れた下賤者】と
ジール様の一声でジャキ様に手を上げた者への
死刑が決まり、王子様の出入りをを監視していなかった者達への死刑が決まった。
マール
「そんなことで…
ボッシュ
「勿論、それがおかしい事は多くの識者は理解しておる。だから死刑の手続きも実際はふりだけ。魔学で生み出したその人そっくりな人形を作り遺体偽装することで、ジール様の目を欺いたのじゃ。」
ルッカ
「やるわね、識者の人達」
ボッシュ
「とはいえ、そういった王宮の仕組みの中で育ったジャキ様の心は、正常に成長する筈もなく、ジール様の様に心が捻れていきおった。
マール
「なんか可哀想…
ボッシュ
「それでもジャキ様には心の拠り所になる者が存在した。
ルッカ
「まさが自分って言う訳じゃないわよね…
ボッシュ
「自分って言えないのがツライのう…ワシはワシで頑張っておったんじゃがなぁ…
マール
「で、誰なの?
ボッシュ
「姉のサラ様じゃ。サラ様はジール様の夫であるクト様がまだ健在であった頃にお生まれになられた方で、クト様の精神を濃くお継がれになられた。
マール
「クトさま?
ボッシュ
「サラ様を語るにはクト様抜きでは語れません。クト様は私の魔学の教え子でもあり、地の民へのボランティア仲間でもありました。クト様は名家の血筋でありながら、民族史上主義にも染まらない…、要するに愛される人じゃった。そのカリスマ性がジール様の心を射止めたといえるが、少々浮気症なところがあり、それが原因で地に追いやられる事になり…
ルッカ
「ボッシュ、話がずれてる。
ボッシュ
「とにかく、弟のジャキ様と違い、姉のサラ様は、クト様という、とてもまともな人に愛された事で心が真っ直ぐに育てられました。サラ様はジャキ様を我が子の様に愛し、ジャキ様はサラ様を本当の母上の様に慕いました。」
マール
「なんかほっとする…
ルッカ
「ジャキはジール、本当の母親の事はどう思っていたのかしら?
ボッシュ
「言葉にはしませんが、おそらくは憎んでいたでしょう。もしかしたら、殺したいくらいに…
ルッカ
「流石にそれは言い過ぎなんじゃ…
ボッシュ
「ジール様は浮気したクト様にどことなく似ているサラ様を嫌っておったのかもしれんと、今は思うが、ジール様はサラ様を魔神機の制御をするアイテムの様に扱っていたのじゃ。
ルッカ
「魔神機? ラヴォスのエネルギーを抽出するという?
ボッシュ
「当時はラヴォスエネルギー需要が高まっておった時期で、都市はより多くのエネルギーを必要としておった。魔神機の出力を上げていってラヴォスが目覚めたらどんなリスクがあるか分からぬから、サラ様はラヴォスを目覚めさせない様に抑える役どころを担っておった。
ルッカ
「それってサラ様にしかできなかったの?
ボッシュ
「そうなんじゃ。ラヴォスをコントロールできる魔術師はサラ様だけじゃった。
マール
「なんでよ!
ボッシュ
「なんでと言われてもワシにもわからん。
とにかく、サラ様は都市を支える為、ジール様の不老不死を叶える為に奴隷の様に扱われとった。魔力が枯れるまで働きずめで、そんなサラ様を見ておられたジャキ様は母上をどう見ておられたかは、こころ察するところで…
ルッカ
「たしかに、親であろうと殺したくなるわね。
7人は天空都市へのワープポイントに到着した。
「ここからが本当の入り口じゃ」
「恐らく入国審査で魔力が足りない言われて拒否されるだろうが、ワシがいるから大丈夫だと思う)
ルッカ
「ねえ? もし、もう一人の自分と会ったらどうするの?
ボッシュ
「構わんじゃろう。魔学研究で時を操る論文も書いておったし、ワシが現われても、すんなり受け入れるじゃろうて
ルッカ
「そうじゃなくて、過去の貴方にラヴォスのタイムゲートに飛ばされない様にアドバイスなんかして、現代に貴方が存在しなかった事になったらどうするの? 貴方と出会う私達の運命も無かった事になって、今の私達の存在は…
ボッシュ
「お前さん、細かい事を気にするんだのう。もしワシがいなかったとして、どんな悪い方向に運命が変わるというんじゃ? ワシがハッシュを助けて時の最果てが存在しなくなったとして問題あるのか? 未来が大きく変化したとして、そなたの今の現代それほど守る価値があるものなのか?
この国を今救い、サラ様を救えれば、ラヴォスが1999年に目覚めないかもしれないのじゃぞ」
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■12話
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6人とロボは入国審査を受けた。
担当者
作品名:原作アレンジ、クロノトリガー 作家名:西中