原作アレンジ、クロノトリガー
私達が現代に生きる者として、現代へと飛ばされててもおかしくなかったのに…
「つまりね、ラヴォスゲートで飛ばされても、貴方も私達も本来この時代に生きる者ではないから、
『別の時代に生きている存在』として正しくあるべき時代へと導いてくれるのではないかしら。行き先が時の最果てか、別の時代へかは分からないけど、きっと安全性が担保されているのではないかしら」
ボッシュ
「…そうか…記憶なきハッシュにはその様に陰ながら人々を導く役割があったのか…」
クロノ達の進路は決まった。
ラヴォス暴走のタイムリミットが迫るまでは、ボッシュ、ガルディア軍を主軸にして避難誘導をする。ラヴォス暴走の直前、ボッシュと共に海底神殿の底、ラヴォスが眠る間へ行き、魔導兵器を起動する。
クロノ達が王宮の外で話合っているその頃、魔王はビネガー達と共に王の間でダルトンと戦っていた。
魔王達はラヴォスのタイムゲートに飲み込まれ、古代へと来ていた。
相当なダメージを受けているダルトン
「き、貴様らは一体…
ビネガー
「この国は我々の王、魔王様が支配する事となった。」
マヨネー
「やっぱり人間って脆いや。魔法が使えても心操ちゃえば簡単なんだもの。
ソイソー
「我が主に仕えられる事を誇りに思うがいい。
魔王は王座の前にいる母、ジールに語りかけた。ジールはマヨネーに動き封じられている。
王の間にいる全ての従者はマヨネーに心を一瞬奪われた隙にソイソーの攻撃で気絶させられていた。
「お久しぶりです。母上様…」
ジール
(母上? お前、何を言っているのだ?)
「私の顔をお忘れですか? 私ですよ。ジャキですよ。
ジール
「な、何を言っている…ジャキは私の息子…
「そうです! 貴方の息子です。
私は貴方のせいで失った。姉上も私自身の心も!」
魔王はこの時代で姉サラと再会し、近くない未来にラヴォスが暴走してタイムゲートが発生し、ジャキと生き別れになる事を告げようとした。けれど光に包まれ、存在が消えそうな事態となった。
目前にいる最愛の姉に近ずこうとすると自身が消える。ボッシュの様に時の矛盾点に妨害された魔王は、ラヴォスが暴走する運命が変えられないのなら、せめて自身の手でラヴォスを暴走させようと思い、ジールをその手にかけようとした。
しかし、上手くはいかなかった。ジールを殺そうとした瞬間、魔王達は光に包まれ消えはじめた。
魔王
「クソっ!」
マヨネー
「なによ、また私達薄くなっちゃった。
ソイソー
「…
ビネガー
(魔王様の話と全然違う。魔王様がこの国の王となって、領土をくれるというからついた来たのに!)
魔王がジール殺害を諦め、王の間を出ると、次第に元と姿へと戻った。
後を追うようにビネガー達がついていく、彼らもまた同じように消えかけた身体が元に戻った。
魔王は王宮の窓から飛び立ち去っていく。続くようにビネガー達も去っていった。
ジール
「い、今のは何だったのじゃ…幽霊か、幻か…
ダルトン
「…違います。あれは紛れもなく実体があった。きっと、どこかの組織が開発した魔同兵器の類かもしれません。
ジール
「し、しかし、あの様なこと、王宮の魔学技術部では一度も聞いた事がない。ほんとうにあれは、兵器なのか?? それにあの者、自身をジャキと名乗ったのだぞ…
ダルトン
「ジャキ様?(まさかジャキ様が謀反を? そんな馬鹿な。まだ彼は子供だぞ…)
ダルトンは魔法で部下に信号を送った。
王族を警護監視している隊員と連絡をとった。
ダルトン
「ジャキ様の様子どうだ? 何か異変はないか?」
警護
「特に異常ありません。ジャキ様が喋るペットや魔具と遊んでいる以外は特に。あ、しかし、ただそのペットと魔具、一度光って消える様な現象がありましたが…。ジャキ様が遊びで魔法を使われたと思って気にも止めませんでしたが、ジャキ様もそのペットも魔法を使った様子はなく…」
ダルトンは以前からジャキの秘められた才能を捜していた。サラの様なラヴォスを制御する様な特異な力があるのでは思い、護衛にチェックさせていた。もしあれば、政権を自身に有利に動かせる材料になるかもしれないと思っていた。もしジャキがジールに謀反を起こす意図があって先程の様な現象を起こしたなら、それも利用できと考えていた。
ダルトン
「ペットと魔具が消えかけただと? その時間は?
警護
「……てすが…
ダルトン
「さっきの現象とほぼ同時刻か…
ダルトン
「喋る魔具とペットは今どうしてる?
警護
「喋る魔具は王宮の外に。今はペットだけです。
ダルトンは警護への通信を切ると、別の場所に信号を送った。
「ジャキ様の部屋にいるペットを見張れ。そのペットの行動を記録し、私に報告しろ。これは極秘事項だ。決してペットとそれに関連する者達には気付かれるなよ。」
カエル
「ふう、王子様の気まぐれにまいるぜ。こんなにももぐられたのはいつ以来だっけ、げろろ」
カエルがジャキから開放され、クロノ達の元に戻った。途中、背筋がぴりっとしたが気にしなかった。
カエル
「あの王子様やばいぞ。オレにロボパンチを避ける遊びさせるんだからな。内蔵が飛び出たらオレの負けとか、んなこと言われても内蔵飛び出たら死んじまうぞ俺。」
ルッカ
「大丈夫よ。その時はきっとボッシュが治してくれるから。
ボッシュ
「いや、流石に内蔵飛び立ったら、ワシでも自信ないわ。
ルッカ
「ところで、カエル、貴方が王子の相手をしている間に当面の方針が決まったわ。私達は…
この時、カエルはダルトンに頭の中を覗かれた。小型の思考監視魔具をつけられていた。
魔具は言葉等の言語の違いを超えて思考そのものを読み取れる。
ダルトン
「まさか未来人がこの世界に来ていたとは…しかも歴史を変えようとする者が光に包まれて消えるような事が…だとすればジャキ様がジール様の命を狙おうと未来からやって来た事も、ある意味で納得できるが…」
ダルトン
「しかし、この天空都市が崩壊するだと…
そんな事になったら王の権威なんぞ、塵の様に吹き飛ぶぞ。私も今の官職を失うかもしれん。
我々が海底神殿の建設にどれだけ国庫を注ぎ込んだと思っている。奴らには死んでもラヴォスのコントロールに成功して貰わないとな…
でなければ今まで積み上げたコネクションが…」
ダルトンはこれまで国務を裏で牛耳ってきた。
王族や官職達をいつでも殺して成り代われる程の力をダルトンが属する組織は持っていた。
そのダルトン派の関係者がどれほど王宮内に潜むかジールやボッシュも知らない。
ただ、ジールは薄々と知っていた。
王宮ではいつ王族に謀反が起こってもおかしくなかった。
ラヴォスから大量の魔力を抽出する行為、魔神機によるラヴォスの利用は、そんな王宮の危機の中で生まれた。計画に大きな夢を抱いたダルトンとその勢力は計画を続行し続ける間だけは謀反を起こさない。ラヴォスのコントロールに必要なサラは国の要であり殺せない。サラを思い通りに動かすにもその血族は人質にする事はできても殺す事はできない。
作品名:原作アレンジ、クロノトリガー 作家名:西中