原作アレンジ、クロノトリガー
ダルトン「皆さん、ラヴォスは覚醒し、ジール王陛下は海底神殿と共に異形な存在になられました。こうなったのも全ては私が不甲斐ないからです。危険性をもっと王陛下に進言していればこんな事には…
ダルトンは目を濡らして同情を得ようとした。
ダルトン「ラヴォス神により、天空都市は破壊されてしまいましたが、我々にはまだ太陽石があります。」
クロノは疑問した。太陽石とは何だろうか。
ガッシュ「太陽石というのは天空大陸が空に浮かぶ為のエネルギー装置のことじゃ。」
ガッシュ「元々は天空大陸は太陽石というものを使っておった。効率の良いラヴォスエネルギーを使う様になって非常時用のエネルギーとして神殿に祀られとった。」
太陽石のエネルギーを使えば以前の様な暮らしができるのだとダルトンは言った。
ガッシュ「確かに可能じゃろうな…。今の少ない人口を支えるのなら…
ダルトンの指揮の元、小さな天空都市の建設が始まった。
ガッシュは考えていた。脳内を書き換えるインプラント魔具をダルトンがクロノ達に取り付けることの目的を。
実用性のないアイテムを無意もなく取り付けるはずはないだろうが、脳内を都合良く操る技術はない。
そもそも、なぜダルトンはクロノ達にその様な事をしたのか。ダルトンの過去の行動を調べた。
調査の結果、ダルトン自身にもクロノ達と同様に脳内にインプラントが埋め込まれていた。
ダルトンだけではない。古代人の約半数、ガッシュの脳内にさえ、インプラントが埋め込まれていた。
人々にインプラントが埋め込まれた時期はインプラントの研究が始まった直後からだった。
動物実験にてインプラントが埋め込まれたタイミングから始まる。その動物は人間の様な知性を持つと同時に人目を避ける様に人間にインプラントを埋め込んだ。埋め込まれた人間は同様に誰かにインプラントを埋め込む様に行動した。
ガッシュは推論を述べた。
最終的に何者かがダルトンを操り、クロノ達にインプラントを埋め込んだ。そして未来2300年からクロノのインプラントに電波を飛ばして歴史を書き換え変えさせた。
クロノは落胆した。原因はどうでもいいから平和な時代に戻りたかった…
ーー
クロノは自暴自棄になり、逮捕覚悟で現代に戻った。
親はどうしているだろうか。テロリストの罪で逮捕された息子を憂いて早まった行動をしているかもしれない。
世間からのかぜあたりを考えると親も一緒に中世へと連れて逃げた方が良かったかもしれない。魔族が蔓延る世界とはいえ、現代にも魔族はいて人間に成りすまし人を食料としている。現代が安全とはいえない。
クロノは家へと帰った。
ジナは涙を流して出迎えた。
脱獄してから凡そ一ヶ月。千年祭も終盤に差し掛かっていた。
全てはテレポート装置から始まった。
ルッカもマールも死んでしまった。あんな装置さえなければこんな目に合わなかった。
ジナは塞ぎ込んでいるクロノから話を聞いた。
「あまり自分を攻めないで。きっと何か良い方法がある筈よ」
「私をタイムマシンに乗せて頂戴!」
ジナには思う所があった。過去を変える事ができないなら、過去を変える事ができる技術が生み出された未来へと行けばいい。
2300年の平和な世界にはラヴォスが時の卵で死んだ人間を生き返えらせた。地球の未来に、そんなラヴォスがいないとしても、宇宙のどこかにはいるはず。
「過去を変えられないという話、どうも嘘くさいわ。現に魔族は400年前の時代へ行き、未来を都合良く変えたのでしょう? きっと歴史を変える方法があるはずよ」
クロノとジナは未来1万年へと向かった。
地球歴1万年。人間は存在しないが緑豊かな世界になっていた。動植物が繁栄し、その手入れをするロボ達。
ロボに組み込まれたAIは一万年の間に進化を遂げていた。
ロボはクロノ達に教えた
この世界を真の意味で支配しているのは、目に見えないもの。魂、精霊の様な存在だと。
クロノはデナドロ山で出会ったカラス剣士の事を思い出した。次男のカラス魔族は山に精霊がいると言っていた。死ぬかもしれないので近付くなと。
クロノはデナドロ山に向かった。
山頂にいる精霊は顔や目がなく、ただ黒いシルエットをしている。クロノが近付くと、その黒は声を荒げた。
黒いシルエットはクロノの心の弱さに攻撃を加える。
クロノは憑依され、苦悶し、喉を掻きむしり始めた。
精霊がクロノに見せたものは未来でこれから無念の死を遂げる者と過去に無念の死を遂げた者達の気持ち、絶望だった。
ある種の衝動的な自殺思念に囚われたクロノは刀を抜き、自らに突き刺そうとする。
間一髪、カラス魔族がクロノの顔面に蹴りを入れ、正気に返る。
次男「な、なんでここにいるんだよ! 行くなと言ったのに!」
カラスの声は届いていなかった。
歴史を変えるヒントを精霊に触れた事で気付いたクロノ。
精霊がクロノに送ったメッセージは
エイラを殺すことだった。
エイラを殺せば未来に繋がる子孫は存在しない。自身を含めて子孫の絶望は無かった事にできる。
エイラが死ねばクロノは存在せずエイラを殺せない。通常、光の抵抗を受けて、エイラを殺す事はできない。
だが今のクロノはエイラを殺すことができる。
黒い精霊に触れた事で闇の力を得たクロノは、光の力を相殺してエイラを殺すことができる。
闇に囚われたクロノを元に戻す方法はない。
次男「山頂上にいる精霊の所には行くなと言ったのに…
長男「惜しい人間を失ったな…。もう以前の様に刀を相まみえる事もないのか…
次男「殺してあげた方がいいよね…
長男「…。ここで死なせるのが武士の情け…。
ジナ「まって。
ガッシュ「待つんじゃ」
クロノが死ぬ事で不利益を被る魂。クロノがエイラを殺せない場合に生まれる6500万年分の救われない魂。その魂がクロノに味方をした。クロノに闇のエネルギーが貯まり、カラス達の攻撃が全く効かなくなる。
クロノを邪魔する者はいない。クロノはエイラを殺そうとする。
だがエイラが存在しないと、クロノは生まれて来れない。クロノが存在しない世界になれば、この先クロノがタイムトラベルしてラヴォスから古代人を守れる可能性は完全に0になる。
ラヴォスに滅ぼされた古代人の無念の魂がクロノから闇のエネルギーを取り除こうとしていた。
古代人の魂2000万による未来への希望と、エイラから始まる原始6500万年分の無念なる魂がせめぎ合う。
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■中世602年
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古代人の魂2000万による未来への希望と、
エイラから始まる原始6500万年分の無念の魂がせめぎ合う。
無念の魂による絶望の闇はどこまでも深く、光の力は太刀打ちできなかった。
ルッカとマールの魂が現れてクロノを止めようとするも、クロノは闇に飲み込まれた。
空を飛んだクロノ。テナドロ山から高速で飛び立つとタイムゲートを越えて、エイラの元へ向かった。
クロノがエイラを殺そうとしたとき、光がエイラを包み込んだ。
光が盾となりエイラを守った。
作品名:原作アレンジ、クロノトリガー 作家名:西中